印刷博物館P&Pギャラリーで4月22日から、ポスター展「グラフィックトライアル 2023 -Feel-」が開催されている。クリエイターと凸版印刷が持つ技術のコラボレーションによって、新しい印刷表現を生み出すというプロジェクトで、今回で17回目。会期は7月9日まで。
今回の制作テーマは「Feel」。先行き不透明な時代であっても、そこに生きる私たちはより健やかに前向きでありたい、「Well-being」であり続けたいと願い、ポスター制作を通じて、心に響き、想いをつなぎ、幸せの一片を届けられる「Feel」を探求した。
参加クリエイターは、木住野彰悟、村上雅士、TELYUKA、島田真帆。展覧会では、クリエイターの独創的なアイデアと印刷技術を組み合わせて完成させたポスターと、制作過程での数々のトライアルを紹介する。
木住野彰悟氏の作品は「再構築」。印刷現場の廃材などを資材にして5種類の紙をつくり、紙の原料となったそれぞれの“廃材”をキービジュアルとした作品。キービジュアルの撮影は写真家の瀧本幹也氏が行った。作成した紙はポスターにとどまらず、封筒やハコ、ショップバックに展開することでひとつのブランドとして結実させるプロジェクトとなった。
村上雅士氏の作品は、「透過と反射」。部分的に鏡面を有するポスター作品だ。鏡面には鑑賞者が映り込み、透明な用紙の向こう側には景色が映る。そして、その間に印刷されたグラフィックが浮かび上がるという仕組み。「ポスターの向こうと此方」というテーマのもと制作されたこのポスターは鑑賞者と環境と作品の3種類の像が融合することで成立する。
TELYUKAは、デジタルの中で生きる3DCG高校生のSayaが印刷の世界を体感しながら学んでいく物語のような作品「空間のはざま_写し世」を制作。現実に現れたSayaが空気や重力をまとい新しい表情を見せている。
凸版印刷のアートディレクター/デザイナーの島田真帆氏は、うつろいゆく季節の情景を、紙の個性とインキの重なり、精緻な製版技術によって描き出した。タイトルは「風光」。ポスターに描かれたグラフィックと緻密に設計された印刷技術が、儚く情感豊かな表情を織りなす。見る人に静かな感動とやさしい感情をもたらす作品となった。