「TBS NEWS DIG」の新・代表はカメラマン出身の39歳 放送局が手掛けるWebメディアと人材開発

JNN系列各局の若手記者が、自らの感性・判断で取材した記事を投稿

TBSテレビをキー局とする全国の28のテレビ局で構成されるJNN。そのJNNが2022年4月、28局の取材力を結集させた、ニュースメディア「TBS NEWS DIG Powered by JNN(以下、TBS NEWS DIG)」を開始した。2022年9月には月間で1億6000万PVを突破、2023年3月時点では月間1億7000万PVを記録するなど、後発メディアながら堅調な成長を維持している。

もともとTBSテレビでは、「TBS NEWS」というWEBサイトを運営。「TBS NEWS」ではTBSテレビがカバーする関東圏のニュースに加え、全国のJNN系列局発で、全国ニュースになったいわゆる“のぼり“を配信していたが、コンテンツ量が十分ではないという課題を抱えていた。
デジタルメディアに求められる速報性とコンテンツ量を担保した、新しいメディアの形を考えるなかで、全国のJNN系列局の取材力をより活かすことができないか、というアイデアに至ったのだという。


新メディアのローンチに向け、TBSテレビ内で専門のチームが立ち上がったのが2021年7月。そこから2022年4月のローンチを目指し、6人のメンバーが中心になり、アイデアを形にしていった。

同メディアの特長はJNN28局に担当を置き、各局が独自に取材したニュースを自分たちの判断で投稿できる点にある。今年4月からTBS・JNN NEWS DIG合同会社の代表を務める南部諒生氏は、各局を巻き込んだメディア運営プロセスを通じて、放送局の力を再認識したという。
「地上波は放送の尺も限られるため、魅力的なコンテンツがあったとしても、埋もれていたものがあったのではないかと感じる。『TBS NEWS DIG』がスタートし、JNN各局の取材力の高さを実感した。また各局の担当者に各種の数値をフィードバックしているので、思いもよらない記事が高いPV数を獲得するなど、各局の担当者にも気づきを提供することができたのではないか」(南部氏)。

従来、地上波の報道番組で流されるニュースは、デスクの判断、キャップの指示のもと、各局の記者が取材を行っている。一方で「TBS NEWS DIG」では、こうしたフローにとらわれず、各局の若い記者が自分自身の判断で取材をし、映像やテキストコンテンツの制作をし、公開する体制を試みている。

「『TBS NEWS DIG』では、30歳以下の若手記者が自身の視点で取材した記事を配信する『DIG U-30』というコーナーを設けています。試験的に始めたのですが、PV数も好調で従来の放送局の報道の枠にとどまらない若手の活躍の場になっています」(南部氏)。

各局の30歳以下の若手記者による企画「DIG U-30」。

デジタルメディアの経験がないメンバーが結集してプロジェクトを始動

4月1日から代表に就任した南部氏だが、これまでデジタル領域の業務に携わってきたわけではない。
「2007年に技術職としてTBSテレビに入社し、スポーツやバラエティのカメラマンをしていました。その後、報道局に異動。2013年から2017年まではカメラマンとしてロンドン支局に赴任していました。日本に戻ってきてからは、報道局のシステム開発関連の業務を行っていましたが、『TBS NEWS DIG』のプロジェクトが始まったときに声がかかり、プロジェクトに参画することになりました」(南部氏)。

デジタルメディアの経験がなく、39歳の若さで代表に就任。そんな南部氏の他、現在『TBS NEWS DIG』のプロジェクトには、ビジネス開発やマネジメントを担う社員が3名いる。

石橋氏は「『TBS NEWS DIG』の立ち上げメンバーは南部を含めて、ほぼデジタルメディアに携わった経験がない人たちばかり。逆に、固定概念がないメンバーだったからこそ、冷静に現在のJNN系列のデジタル施策を分析し、あるべきデジタルメディアの戦略を描くことができたのではないか」と語る。

同メディアの現在のマネタイズ手段は外部に対するコンテンツの配信と広告だ。広告については、現在はアドネットワーク経由で配信される運用型広告のみだが、今後は予約型広告やタイアップ広告などの商品開発も目指したいのだという。
この構想について「『TBS NEWS DIG』でビジネス開発を担当する石橋正人氏は「局内にある報道局とは別組織で、広告主向けのコンテンツを制作できる体制を整えることが目下の課題」と話す。

また南部氏は「今年の3月に過去最大の月間1.7億PVを達成したが、まだまだ伸びしろがあると考えている。また、『TBS NEWS DIG』という新しい視聴者との接点を地上波の事業に生かせるような方法も考えていきたい」と展望を語った。


 

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