パス・コミュニケーションズ
営業本部
デジタルビジネス開発室
マネージャー
猪俣瑠美子氏
2008年に屋外広告業界に入り、2016年パス・コミュニケーションズに入社。大手広告会社担当を経て、2021年より現職であるデジタルビジネス開発室マネージャーに着任。屋外広告士として、デジタル連携、効果測定推進、新規媒体開発等を担当し、海外の媒体社との連携にも着手。
Q:コロナ禍を経て、改めて感じるOOHの価値とは?
A:「エリアの持つイメージ」を活用できることもOOHならではの価値。
最近、特に顕著になってきているのが「エリアの価値」です。同じ広告を展開するとしても、エリア・ロケーションによって生活者側の受けとめ方・感じ方は大きく変わってきます。その意味において、実際のターゲット属性はもちろんのこと、「エリアそのもののイメージ」も大きくOOHの広告効果に関係してくるように思います。
またコロナ禍を経た今、屋内で個人的に接触するテレビやスマートフォンと異なり、大型ビジョンなどのOOHはインパクトのある映像に大勢で同時に接触するので、より共感しやすいメディアということも言えると思います。友人・知人と共に目にした広告をすぐにその場で話題にしたり、写真を撮ったり、さらにその感動をSNSで拡散させるというシーンも増えてきました。3Dでの映像表現など媒体自体がユニークで特徴を持ったメディアも増えてきており、そのエリアのランドマークとしての役割も担うようになってきていますので、表現自由度の高いOOHがさらに活性化してくれると期待しています。
Q:デジタル技術の進展、データ活用によりOOHは進化を遂げつつあります。その中で特に注目している領域について教えてください。
A:「接触者情報」や「気候の情報」など、リアルタイムでデータを活用できる媒体が増えてきた。
プランニングやクリエイティブ、効果測定など、テクノロジーの発展がOOHに与えている可能性は広範囲にわたっており、私自身も広く注目しています。媒体側のインフラとサーキュレーションや接触者データが少しずつ充実してきており、例えば、ある特定のターゲット属性を持った人にピンポイントでの訴求を狙った「デモグラ配信」等や、広告配信技術の向上によって天気等のリアルタイムの外部環境をコンテンツに反映させる「ダイナミックDOOH」の展開も可能です。当社では特にこの半年間、クリエイティブ領域における「3D表現」に着目し、3Dクリエイティブの再現性が高いメディアの開発に注力してきました。社内の制作チームの技術の向上や制作環境の整備に取り組み、さらに様々なチャレンジをしていきたいと考えています。
Q:企業のマーケティングにおいてOOHがプランニングに組み込まれやすくなるために、業界として必要な取り組みとは?
A:広告主の実現したいブランド体験をつくるための環境づくりや仕組みづくりが必要。
業界各社が協力して広告効果を可視化させ、統一指標等を整備していくことは、OOHを統合プランニングに組み込みやすくするためにもちろん大切なことだと思います。その上で、広告表現の自由度(規制を緩めるという意味ではなく、3Dの再現性を高められる等の媒体側の努力)や、プランニングの自由度が求められているのを感じます。例えばある一定の時間帯を占有できる買い切り放映などの要望が増えてきており、それに応えられる環境をつくることも重要だと考えています。また、メディアとしての信頼性の向上も媒体社としては努力するべき取り組みとして認識しています。総務省と取り組んでいるJアラートや環境省と取り組んでいる熱中症警戒アラートなど、災害時の情報端末として市民の安心安全に寄与するメディアを今後も目指していきたいです。