「下妻一高」の3C分析に挑戦! 民間企業から赴任して1カ月で見えてきたこと

民間企業の花王から公立の中高一貫校に転職して1 カ月が経ちました。正直に言って、ものすごく疲れた1カ月でした。まずは、目の前にある仕事を精一杯こなしているという感じです。でも、この挑戦している感じが、自分としてはとても充実していて、なんとも不思議な気持ちです。40代にしてこんな挑戦を自らするなんて、花王在職中の昨年、夏頃までは考えてもみませんでしたから。

やはり人生、運とご縁、なによりタイミングは重要ですね。これも自分らしい人生かなと思って日々、頑張っています。そして、悩みに悩んだ決断が、4年後よかったと思えるようにしたい。毎日が緊張の連続ですが、自分が少しでも成長できたらまずはよしとしよう!と自分に言い聞かせながら頑張っています。と、まるで子供のようですが、それぐらい初めての転職は私にとって未知な世界なのです。日々の小さな積み重ねをしていけば、いつか大きな花が咲くと信じて学校生活を送っています。

図書室、物理室、保健室は学校の先生と話ができる場

とはいえ、民間から学校教育の現場にやってきた私には、これまでの経験を活かすことが求められています。そこで着任してからまずは、本校下妻一高の強みと弱みを知ることから始めるました。

強みと弱みを知るためには、まずは現状分析が必要です。情報収集するために、先生方と雑談をする機会をつくりました。廊下であったら一言運動。「お疲れ様です!」「お元気ですか!」の一言をかけて対話することで、先生方々のバックグラウンドや考え方、今後の方針をお聞きするようにしています。
なんか営業マンみたいですよね。ですが、約80名在籍している全てのの先生とお話することを目標とし、対話した人は、名簿にその時のトピックスなどを書き込んで忘れないようにしています。
対話した先生の欄が埋まっていくにつれ、なんとなく学校全体のことがつかめてきました。これが最近のやりがいですかね。

また、図書室や物理室、保健室などの特別教室は時間がある時に先生たちが立ち寄るので、いろんな情報が集まる場所だと聞きました。これも新しい発見です。なるほどです。そこで私も空いた時間に、図書室などに立ち寄るようにしています。おかげで以前よりも、本を読むようになりました。

そして、こんな活動をしていると、私が花王時代に実践してきたマーケティングフレームワークが活きるのではないかと思えてきます。自社の3C分析ですね!

学内のインフルエンサーを発見!顧問の先生自らTikTokを使ってPR発信 

分析を進めるうちに、本校はたくさんのよいところ(コンテンツ)があるにも関わらず、あまり認知されてないことに気づきました。学校外はもちろん、学校内にも伝わってない。これはもったいないなと思ったわけです。

私が抱いた印象は、先生方は個人事業主として活動をされていますので、あまり他の先生との連携が取りづらい環境にあるのかなということです。ですから、よい活動をしていても学校内で広がりづらいのかもしれません。

そんな中で私が気づいたのは、公立学校ならではの下妻一高の武器になる活動がたくさんあるということです。その代表が「応援団部」です。本校には63代も続いている伝統と歴史がある「為櫻応援団」があるのです(本校は別称、為櫻学園と言います)。顧問の先生も下妻一高卒業生で応援団出身。会話をしていても、熱量が半端ないです。現役の応援団長も女性で凄くかっこいい。

下妻一高の63代続く、応援団。

実際に野球の試合の応援に参加してみると、団長の毅然とした態度と迫力ある応援は、まさに早慶戦を見ているようです。また応援団の顧問の先生自ら、PR活動や企業に営業を行っていたり、地域との連携活動を行っています。PRもツイッターやインスタグラム、TikTokなどのSNSを駆使して発信しています。企画力と行動力のある先生で驚きました。この先生が私に近寄ってきてくれて、一緒に学校を盛り上げていきたいと熱意ある言葉をもらいました。私と同じ気持ちの仲間を見つけたのです。学校に赴任して、仲間ができたことはすごく心強いし嬉しかったですね。

野球部の試合では応援団が活躍。

彼が言っていたのですが、教員は閉ざされた世界で生きていて、外の世界を知らないことに不安を感じているとのこと。でも彼は地域や企業を巻き込んでいて、かつ広報活動として、パンフレット作成やSNS発信などを自分自身で行っている。まさに学校PRのインフルエンサーとしての活動ですよね。

教員が部活動を通して、ビジネスパーソンと同じことをしていると思いましたし、すごく可能性を感じました。まさに学校と社会、企業などの外部と結びつけることで、教員や学校がさらに輝かせることができる。それが私の役割だと思ったのです。さらに私の今までのデジタルマーケティングの知識を加えることで、本校のPR=マーケティング活動に繋がるとよいなと思いました。

下妻一高のインフルエンサーとしてPR活動に積極的に取り組む、大久保敦彦先生。同志を見つけた気分です。

私は改革をするために赴任したのではない。いま学校に足りないものを加えることによって、これまでできなかったことを実現可能にしていく。そして、それが最終的には生徒のためになっていく。これこそが自分が目指す活動なのだと思ったわけです。まさにメーカーで学んだ「顧客第一主義」の徹底です。これは民間企業だろうと学校でも同じことですよね。私は今までの過去の経験に置き換えて考えるようにしているので、このあたりも役に立っていると実感しています。

民間からきた校長が赴任したことで少し身構えている雰囲気が漂っていたのですが、少しでもその雰囲気を和らげていきたいと思っています。そのためには自分の考えや方針を一人一人の先生と対話をして、理解しもらうことから始めていこうと考えています。


 

生井秀一(茨城県立下妻第一高等学校・附属中学校 校長)
生井秀一(茨城県立下妻第一高等学校・附属中学校 校長)

花王の販売子会社に入社し、営業部門で大手流通チェーンを担当。ヘアケアブランドのマーケティングを担当した後、2015年にECの営業マネジャーとなり、花王のECビジネスを推進。2018年に全社DX推進をするプロジェクト型組織の先端技術戦略室に異動。2021年にDX戦略推進センターを設立、全社DX戦略を担当した。過去3度、社長賞を獲得。花王グループのDXを推進し、ECビジネスの構築などの推進役を担う。

2023年に茨城県とエン・ジャパンが実施した「ソーシャルインパクト採用」において、茨城県内の中高一貫校・専門高校の「校長」を教員免許不問で公募するプロジェクトに応募。1645人の応募者のなかから選ばれ、花王を退職して2023年4月から民間出身者の校長として茨城県立下妻第一高等学校・附属中学校に着任。

生井秀一(茨城県立下妻第一高等学校・附属中学校 校長)

花王の販売子会社に入社し、営業部門で大手流通チェーンを担当。ヘアケアブランドのマーケティングを担当した後、2015年にECの営業マネジャーとなり、花王のECビジネスを推進。2018年に全社DX推進をするプロジェクト型組織の先端技術戦略室に異動。2021年にDX戦略推進センターを設立、全社DX戦略を担当した。過去3度、社長賞を獲得。花王グループのDXを推進し、ECビジネスの構築などの推進役を担う。

2023年に茨城県とエン・ジャパンが実施した「ソーシャルインパクト採用」において、茨城県内の中高一貫校・専門高校の「校長」を教員免許不問で公募するプロジェクトに応募。1645人の応募者のなかから選ばれ、花王を退職して2023年4月から民間出身者の校長として茨城県立下妻第一高等学校・附属中学校に着任。

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