※本稿は『広報会議』2023年6月号の「サステナビリティこれからの伝え方」特集より抜粋しています。
MPower Partners
ゼネラル・パートナー
関 美和氏
国や投資家からの要請によって、急速に注目が集まった企業の「ESG経営」。そもそも企業がESG経営を行う価値とはどのようなものなのか。ESG重視型グローバル・ベンチャー・キャピタル・ファンドのMPower Partnersでは、国内スタートアップのESGの現状をまとめたレポートを2022年9月に発表している。
そこでは、回答企業50社のうち45社がESGの取り組みを実践、42社がその効果を実感しているという結果に。また、「リソースがない」「ESG重要度の認識がばらばらで、実施までの合意形成が難しい」ことがボトルネックであると明らかにされている。
また、レポート内では国内外スタートアップへのインタビューをもとに、ESGに取り組む意義をまとめている。
① ベンチャーキャピタルの投資基準としてESGの重要性が増しており、今後の資金調達が有利になる
② 消費者の意識や企業への社会的要請の高まりを受け、売上が(短中期的に)増加する
③ ESGの取り組みによって成長を阻むリスクを回避できるため、成長が(中長期的に)持続するといったこと
が意義として挙げられている。
的をしぼった発信が重要
また、サステナビリティ発信については的をしぼることも大切。どこにでもあるような情報では投資家や消費者の目には留まらない。
「すべてのESG関連の情報を機械的に開示しているだけでは、企業としての『本気度』が伝わりにくいこともあります。ポイントをしぼることで、活動一つひとつを印象づけられるはずです。自社らしさを象徴する目玉のプロジェクトや、他社に先駆けた熱心な施策があるとより良いですね」。
関氏にMPowerの投資基準を聞いたところ、次のように答えてくれた。
「今、何ができているかよりも、ESGに対する経営陣のコミットメントを重視しています。打ち合わせを設け、あらかじめ送っておいたESGに関するいくつかの質問に答えてもらい、投資するかどうかを総合的に判断しています。実際に話してみるとその会社の人格やESG経営の浸透度が見えてきます。完璧な会社はありません。ですが、トップがESGに前向きでないと始まりません。また、企業文化としてESGマインドがあるほうが投資した後も長期的にボトムアップの施策が生まれやすい。ESGを自分事化できる社内コミュニケーションの機会を広報担当者の方にはつくってもらいたいですね」。
広報会議2023年6月号
【特集】
企業のサステナビリティ
これからの伝え方
GUIDE
一貫性ある開示が企業価値高める
保田隆明(慶應義塾大学総合政策学部教授)
OPINION1
投資家との「対話」創出が鍵
長期視点で評価される企業のESG情報とは
伊井哲朗(コモンズ投信 代表取締役社長 兼 最高運用責任者)
COLUMN
ポイントをしぼったサステナビリティ発信
自社のパーパスに沿った地道な活動を
関 美和(MPower parters ゼネラル・パートナー)
「人的資本」の戦略的な伝え方が
企業への共感の輪を広げる
双日/KDDI/SOMPOホールディングス
OPINION2
人的資本の情報開示、広報の役割とは
未来のステークホルダー意識した発信を
経済産業省
OPINION3
メディアから見たサステナビリティ
「ESG」情報の蓄積が上手い企業とは
会社四季報オンライン
【第2部】
ESG発信ケーススタディ
CASE1
世界初のCO2排出量実質ゼロフライトでメディア露出
サステナビリティ可視化で未来の旅イメージ醸成
日本航空(JAL)
CASE2
社会での自社の存在意義打ち出しパブリシティ獲得
物流業界を解決しニュース価値意識して発信
アセンド
CASE3
未来を創造するための統合報告書
企業課題の開示し“創造的対話”促す
アバントグループ
CASE4
ソリューションサイトでビジョンから商品を一気に紹介
社会課題を起点にアイデア創出が加速
オムロン
CASE5
カカオ産地のリアルな声を届ける
ステークホルダーを巻き込んで「本気感」伝える
不二製油グループ
CASE6
従業員へのサステナビリティ方針の浸透施策
方針明文化で社員の当事者意識を醸成
ポーラ
CASE7
重要課題への社内意識の醸成
明確な目的掲げたインプットと議論の場づくり
TBM
CASE8
エアコン業界全体の脱炭素と発展に向けて
特許開放の世界的反響がモチベーションへ
ダイキン工業
【第3部】
納得感を高めるサステナビリティ発信 実践編
OPINION1
ストーリー性のある開示・改善のサイクル
野村総合研究所
OPINION2
学生から見た「統合報告書」
一橋大学
COLUMN1
評価される「統合報告書」のポイントとは
イチロクザン二
COLUMN2
従業員が誇りを持てる取り組みにするには
揚羽
ほか