※本稿は『広報会議』2023年6月号の「サステナビリティこれからの伝え方」特集より抜粋しています。
SUMMARY
①サステナブルなカカオを使用した商品をきっかけに消費者にも生産地の課題について考えてもらう
② メディアや投資家に向けてリアルな声、現状を伝える
③ 全社員にとって「当たり前」になるまで、サステナビリティに関する情報発信を継続する
植物性油脂や業務用チョコレートを手がける不二製油グループは、2018年8月策定の「責任あるカカオ豆調達方針」のなかで「サプライチェーンのカカオ農園での児童労働ゼロ」を掲げている。
また、2024年度までの中期経営計画「Reborn 2024」では、大豆ミートなどの植物性食品を主とした挑戦領域を新たな事業の柱にすることを発表。事業の中心に置かれたサステナビリティ活動として日本経済新聞などでも取り上げられた。
「私たちの事業継続には安定的な原料の調達が不可欠。そのためには自社だけでなくサプライチェーンと協力したサステナブルな取り組みが当然必要になっていきます」と語るのは同社の広報部長 岡本祥治氏だ。
「本気」度を分かりやすく
2022年には不二製油独自の「カカオ豆購入による資金援助」を行う活動「サステナブル・オリジン」プログラムをスタート。独自の基準に適合した農園(児童労働の撤廃と森林・環境破壊をなくすための改善活動を行っている農園)のカカオ豆にプレミアム(支援金)をつけて購入。その支援金を農園へ直接還元し、生産農家の課題を改善する活動を支援している。
そうして購入したカカオ豆を使用したチョコレート「カカオクオリ―」を、2022年5月に資本提携を結んだcottaの製菓・製パン材料専門のECサイトで消費者向けにも販売。「カカオ産地が抱える課題に本気で向き合ったチョコレート」と銘打ち、消費者にもサステナブルなカカオについて考えるきっかけをつくった。
「当社では、農園における適正なカカオ生産工程管理のトレーニングや、工程導入の支援を現地パートナーと共に行っています。また、現地のサステナブル調達担当者や協業しているNPO担当者が、現地農園の取り組みや考え方を直接ヒアリング。そこで見つかった課題に対応する方針や活動を、事業計画に取り込んでいます」。
2020年、2021年にはメディアや投資家などを対象とした、原料調達に関するオンラインセミナーを実施。経営陣からサステナブル調達の状況や今後の方針を説明するだけでなく、現地のサステナブル担当者からのメッセージ動画を公開するなどリアルな声を届けた。そのようにして、実態を伴ったサステナブル活動が伝わるよう工夫しているそう。
「発信の機会が多くなると、原料やサステナビリティに関する専門用語が多くなったり、+αの情報を話しすぎたりと、相手が本当に欲しい情報を理解したコミュニケーションができていない場面もでてきます……
※この記事の続きは『広報会議』年6月号にてお読みいただけます。
広報会議2023年6月号
【特集】
企業のサステナビリティ
これからの伝え方
GUIDE
一貫性ある開示が企業価値高める
保田隆明(慶應義塾大学総合政策学部教授)
OPINION1
長期視点で評価される企業のESG情報とは
伊井哲朗(コモンズ投信 代表取締役社長 兼 最高運用責任者)
COLUMN
ポイントをしぼったサステナビリティ発信
関 美和(MPower parters ゼネラル・パートナー)
共感の輪を広げる「人的資本」の戦略的な伝え方
双日/KDDI/SOMPOホールディングス
OPINION2
人的資本の情報開示、広報の役割とは
経済産業省
OPINION3
メディアから見た
「ESG」発信の蓄積が上手い企業とは
会社四季報オンライン
【第2部】
ESG発信ケーススタディ
CASE1
世界初のCO2排出量実質ゼロフライトでメディア露出
日本航空(JAL)
CASE2
社会での自社の存在意義打ち出しパブリシティ獲得
アセンド
CASE3
未来を創造するための統合報告書
アバントグループ
CASE4
サイトでビジョンから商品を一気に紹介
オムロン
CASE5
ステークホルダーを巻き込み「本気感」伝える
不二製油グループ
CASE6
方針の明文化で従業員の当事者意識を醸成
ポーラ
CASE7
明確な目的掲げたインプットと議論の場づくり
TBM
CASE8
エアコン業界全体の脱炭素と発展に向けて
ダイキン工業
【第3部】
納得感を高めるサステナビリティ発信 実践編
OPINION1
ストーリー性のある開示・改善のサイクル
野村総合研究所
OPINION2
学生から見た「統合報告書」
一橋大学
COLUMN1
評価される「統合報告書」のポイントとは
イチロクザン二
COLUMN2
従業員が誇りを持てる取り組みにするには
揚羽
ほか