2023年5月19日、G7広島サミット(主要国首脳会議)が始まった日、長崎新聞にこんな広告が出稿された。
30段の紙面いっぱいに描かれたのは、核兵器をイメージしたものと「核兵器を囲んで話し合おう」というコピー。そして新聞の下部には、地元長崎を中心とした27の企業・教育機関・団体などが名を連ねている。
「長崎新聞は8月9日の長崎に原爆が投下された日に広告を掲載する『平和企画』に2020年から取り組んでいます。今年のG7サミットが被爆地広島で開催されることになり、そのタイミングで長崎からもメッセージを発信したいと考えました」と、長崎新聞 メディアビジネス局 牟田雄一郎氏。
核兵器を思わせる形の中にはイラストで「核兵器が存在してはいけない」8つの理由が描かれている。さらに、それらを取り囲むように、日英併記でその理由も記されている。
「G7広島サミット開催に合わせて、長崎から『核兵器がもたらすリスク』について、被爆地ならではの視点を取り入れて発信したいと考えました。私は長崎大学の核兵器廃絶研究センターで特任研究員をつとめていることもあり、その知見やネットワークも活用しながらジェンダー、お金、医療、環境など様々な観点からリスクをリサーチしまとめあげました。G7に参加した世界のリーダーとそれぞれの市民にも手に取って欲しいと日英併記で作成しています」と、被爆3世である林田光弘氏。
今回のビジュアルについて、アートディレクター 江波戸李生氏は「説明的にしすぎず、デフォルメしすぎないバランスを探りました」と話す。
「目指したのは、部屋やお店の壁に貼りたくなるもの。核兵器は恐ろしくて、甚大な被害を及ぼすものですが、ただ恐怖を訴求するだけではなく、議論を促すツールとして使ってもらう新聞紙にしようと、イラストレーターのfancomiさんにもアイデアをいただき、話し合いながらかたちにしました。普段の暮らしの中に溶け込み、ふとした瞬間に議論のきっかけになるようなものになれば幸いです」
今回はG7サミットにあわせた内容の原稿になっているが、2020年から続けている8月9日の原稿を制作する際とコンセプトは一貫しているという。
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「核兵器は広島や長崎だけの問題ではない。また過去の問題でもない。私たち全員が当事者であり、いま直面している現在進行形の問題なのだということ感じてほしい。わたしたちの想像力が最大の抑止力になることを信じて、原稿を制作しています。この原稿が広島に、世界に届いてほしいと思います」と、クリエイティブディレクター 鳥巣智行氏。
当日、長崎新聞への掲載と併せて、特設サイトにもこの新聞を掲載。ここでは長崎以外の人もダウンロードして、この新聞をプリントすることができるようになっている。
この広告を出稿後、SNSではその日のうちに25万人以上にリーチし、「長崎らしいメッセージ」「新聞を広げて家族で話すと良いと思う」「壁に貼りたい」「会社の朝礼でこの広告のことをシェアした」といったリアクションがあったという。さらに、資料館や宿泊施設などで配布や掲出といった展開にもつながり、今後は平和学習の教材などとしても活用していくことを考えている。
クレジット
- 企画制作
- 長崎新聞社+電通+電通九州長崎支社+Better+プラグ
- スーパーバイザー
- 牟田雄一郎
- CD+C
- 鳥巣智行
- AD
- 江波戸李生
- C+ファクトチェック
- 林田光弘
- D
- 鑓田佳広、小島幸菊
- I
- fancomi
- 翻訳
- Andrew Garrison、牟田友佳
- WEB
- 木場皓紀、東村亮
- Pr
- 福岡一磨、江口博昭、高村正信
- 協力
- 山口響、川崎哲、田中美穂