学校にも「ヒーローアイテム」がある キラーコンテンツを磨こう!
民間から茨城県の下妻一高の副校長に赴任して、2カ月が経ちました。学校は行事が多いのですが、先日は「常総の早慶戦」とも称される茨城県立水海道一高との「第86回定期戦」がありました。定期戦は1947(昭和22)年から続く伝統行事。運動部対抗で勝利数を競います。各部活動の選手はもちろん、応援団の活躍が最大の見どころになっていて、まさに本校を代表する伝統行事であり、“キラーコンテンツ化”する可能性を秘めている行事です。
また、対戦相手である姉妹校の水海道一高の校長は昨年度、採用された私と同じ民間出身の校長です。仕事のバックグラウンドも私がマーケティング、水海道一高の校長はクリエーティブと同じ業界で、なんとも心強い同志です。今後は学校同士で連携を図り、茨城県の名物行事として定期戦は県外に発信していきたいと考えています。
来年の定期戦はマーケターとしての腕の見せどころ。キラーコンテンツとして磨き上げて、ECマーケティングで言うところの「ヒーローアイテム」に育て上げられたら学校のPRになりますよね。来年の新たな目標がひとつできました。茨城の県西地区から全国に発信していけたらと思います。
学校図書館経営にマーケティングを活用しよう
さて赴任以来、なるべく多くの先生と話をしようと努めてきたのですが、その成果があったのか、なんとなく私のバックグラウンドを学校の先生方も少しずつ理解してくれはじめたようです。というのも、私の力を必要とする先生がまた現れてくれたからです。私は“ご注文をいただく”セールスマンのように喜んで協力させてもらいました。
こうした事例ができると、私の特技が学校内に口コミで広がり、「自分を必要としてくれる」人がまた出てくるかもしれない。そんな地道な「お友達キャンペーンみたいない口コミ活動」を行ってきたので、嬉しい出来事でした。
今回、相談に来てくれたのは図書室の先生です。図書室の先生は、私と同じこの4月に他校から転勤で本校に赴任してきました。そういう意味では同志ですね。
司書としての経験が長くベテランの先生。私も学校全体のことを含め、学ぶことがたくさんあるぞと思っていろいろ話を聞いていました。そんな先生は、図書室を“経営”するにあたり、生徒に足を運んでもらうにはどうしたらいいか、図書室の経営やPRを行っていきたいけど、どうしたらよいか、と悩んでいたとのこと。相談を持ちかけられました。
もともと下妻一高の図書室は、OBからの寄付などで本の数も豊富ですし、図書室も広く恵まれた環境にあります。ただ、生徒も日々の勉強で忙しく、なかなか図書室に足を運んでもらえない。図書室が単なる本の置き場になってしまっている。そんな課題を抱えていました。
悩みを聞いた私は「情報発信型の図書室にしよう!」と提案しました。本校では探求授業に力を入れています。この探求活動につながるよう、図書室自らがある特定のテーマを選び、情報発信をしていこうと考えたのです。
探求学習のテーマの案は多岐にわたりますが、まずは私が得意とするマーケティング分野から始めてみることにしました。私が学校に着任したお祝いも兼ねて、ある出版社の副編集長がマーケティングの本を寄贈してもよいと言ってくれたことも企画を実行できた理由です。
図書室の先生は、自ら本を探して業者さんに発注しているため、どうしても図書室には最新の本が揃いづらい。ですので、先生にとっては出版社から最新の本が直接、手に入るのは嬉しいことです。また出版社としても若い世代に協力したい、との想いがありました。お互いの想いが一致し、コラボレーションが生まれました。
図書室の先生が、自ら“売り場”レイアウトを考え、エンドスペースを確保し、既存の本(行動経済学等)と組み合わせた「マーケティングコーナー」を作ってくれました。POPも先生の手作り。私が掲載された過去のマーケティングにかかわる記事なども使って、作ってくれたのですが、その出来がまた素晴らしい。図書室の先生の想いが伝わる情報発信型のコーナーができました。こんなにスピーディーにアイデアを形にしてもらえて、嬉しい限りです。
図書室は、本校舎とは離れた別棟にあるのですが、生徒の動線に沿った紹介POPを廊下に掲示し、また図書室の入口から目立つように工夫されたPOPも設置してもらいました。私も情報収集のために、図書室にはよく足を運びますが、今度はマーケティングコーナーの定点観測という新しい目的ができて、ほぼ毎日足を運ぶようになりました。
日々、図書室に行くとPOPの位置や、紹介文、コピーなどが日々アップデートされていることに気づきました。先生が図書室に来る生徒の声を聞いて、日々改善しているとのこと。私がメーカー営業で学んだ消費者起点での売り場作りと同じですね。花王の営業時代、ドラッグストアやホームセンターでの売り場作りのお話を、先生にさせていただいたのですが、それも図書室の“マーチャンダイジング”に活きてくると話してくれました。
私のような外部の経験と先生の経験を活かして、生徒に有意義な情報を発信していきたい。そして生徒自ら情報収集をして、学校で学んでいる勉強とマーケティングの知識がリンクして、将来の職業の選択肢になれば、またこれはやりがいのある素晴らしいことです。
この先生との取り組みがあったおかげで、茨城県県西地区の図書館の実務担当者向けの先生に、この事例をお話をさせていただくことにつながりました。下妻一高がモデルケースとなる、学校同士の横連携の第一歩です。お話させていただく内容は、「学校図書館経営にマーケティングを活用しよう!」といテーマ。マーチャンダインジングの内容も盛り込み、実務にも活かせる内容にしようと思います。私のマーケティング経験が、学校の先生のために、そしてそれがエンドユーザーである生徒のためになってくれたら嬉しいです。