イケア・ジャパンは5月17日、職場やコミュニティにおけるインクルージョンギャップをなくすための行動を呼びかける「#facethegap」キャンペーンを一部の店舗で開始した。多様性を反映したルームセットの展開や、すべてのジェンダーを対象にしたトイレの導入などを全国の店舗へ拡大していく。
本企画は同社の親会社 Ingkaグループとの共同で実施されるもの。企業の姿勢と従業員の回答に生じたギャップを「インクルージョンギャップ」と定義づけ、改善に尽力するべくキャンペーンを開始した。
実際に、Ingkaグループが2022年に世界の従業員に行った調査では、LGBT+の従業員の約4割が「自分らしさを出すことにためらいを感じている」と回答。平等で多様性のある職場づくりを目指す一方で、「インクルージョンギャップ」が社内で存在していることが明らかになっていた。
今回開始した施策では、平等を意味する「Equality(イクオリティ)」と、多様な人材を受容し活用していく「Diversity and Inclusion(ダイバーシティ&インクルージョン)」を推進する企業活動を複数実施すると発表。中でも、多様性に配慮したルームセットの展開は、主な取り組みのひとつ。以前から行われていた施策だが、今回のキャンペーン開始に合わせて強化していくという。
具体的には、店舗に配置されているすべてのルームセットにおいて、年齢やジェンダー、家族構成や職業、ライフスタイルなど、多岐にわたるペルソナ(外的側面)を考慮。生活者の価値観が多様化する現代に合わせ、ルームセットを通じて多くの生活者に、より快適な暮らしを提案する。
同社のカントリーインテリアデザインマネジャー 安住佐知子氏によると、今回の展開を通じて「家に自分らしさを反映させることで、ポジティブな効果が期待できる」と話す。
「当社が昨年行った調査から、『家に自分の個性が表れている』と感じた際に、人は精神的な満足度が高い傾向にあることがわかりました。しかし、『家に“自分らしさ”が反映されている』と感じている日本人は37%と、世界の58%と比べて低い結果です。多様性のあるイケアのルームセットを通して、一人ひとりが快適に過ごせる理想の家を実現し、『この家が好き』と感じてほしいです」(安住氏)。
また、安住氏は国内で行っている住居への訪問調査がルームセットの多様化に活きると話す。
「各店舗でホームビジット(家への訪問)を実施していることがペルソナの多様化にもつながっていると考えています。今後も暮らしにおける課題などを把握し、これまでイケアが培った経験や知識を活かしながら、今の日本の暮らしにあったアイデアをお届けしたいと考えています」(安住氏)。
本施策では他にも、多様性を表すレインボーカラーアイテムの販売や、従業員向けのLGBT+インクルージョンに関する研修の実施を進めていくとしている。