デジタルメディア測定、データおよび分析向けソフトウェアプラットフォームを展開するDoubleVerifyは5月23日、「グローバルインサイトレポート(日本語)」の2023年度版を公開した。
「グローバルインサイトレポート」は同社が2017年から広告主のデジタル広告戦略に役立ててもらうために提供しているもの。北米、EMEA、APAC、LATAMの市場ごとに分析したレポートを掲載している。
今回は約100カ国、1,000以上のブランドで配信された約5.5兆件のメディアトランザクションに基づき、メディア品質とパフォーマンスの傾向を分析。ベリフィケーション(検証)を適用したキャンペーンとそうでないキャンペーンの結果を比較し、地域やデバイスを超えて広告品質に関するトレンドを調査している。
DoubleVerifyによる、本調査の主な結果は以下の通り。
1、前年同期比で入札後の広告品質の改善は安定化
グローバル全体で、2022年のビューアブル率は上昇(ディスプレイ広告:前年対比4%増で69%、ビデオ広告:前年対比2%増で74%)。フラウド違反率は減少を続け(前年対比25%減で1.1%)、ブランドスータビリティ(適合性)違反率は横ばい(変化なし、7.1%)となった。
APACでは、2022年にビデオビューアビリティが6%低下し、フラウド/SIVT違反が7%増加にもかかわらず、ビデオ広告におけるビューアビリティとフラウド/SIVTという2つの主要なクオリティ(品質)指標で依然として他地域を上回っている。また、APACは全地域の中で2番目にブランドスータビリティ(適合性)違反率が低くなった。
一方、日本のディスプレイ広告におけるビューアビリティ率は、APACで最も低い水準。フラウド/SIVT違反率は大きく上昇しましたが、変わらずAPAC地域内で最も低い水準を維持している。
2、アドベリフィケーションを管理しなかった場合の損失
広告主が検証に関する最適化管理を実施していないキャンペーンの場合、ブランドスータビリティ(適合性)の違反率は、広告主が設定するスータビリティの厳格さによって14%~30%の間で変動していることがわかった。
この数字は、10億インプレッションごとに、本違反率は19.9万USドルから68.5万USドル(2,670万円~9,190万円程度)と、損失の大幅な増加をもたらす可能性があることを表している。
また、何も対策をしていない非管理キャンペーンでのフラウド(不正)率は5.1%。対策をしている管理キャンペーンに比べて367%も高い数値となった。本違反率は、最終的に10億インプレッションごとに、約12.1万USドル(1,650万円程度)の広告費の損失をもたらすものだ。
さらに、対策をしていない非管理キャンペーンは、対策をしている管理キャンペーンに比べてビューアブル率が著しく低いことも明らかになっている。
非管理キャンペーンの場合、ディスプレイ広告のビューアブル率は57%、動画広告のビューアブル率は43%。それぞれ管理により保護されている場合の平均値である69%と74%を大幅に下回った。最終的な経済インパクトとして、対策をしていない非管理キャンペーンでは、10億インプレッションごとに、約45.8万USドル(6,245万円程度)のビューアビリティ損失をもたらすとしている。
3、CTVの消費量は急増も、フラウドのターゲットに
グローバルでは、CTVのコンテンツ消費量と品質検証は前年比で62%増。CTVにおける動画広告の視聴完了率は96%で、測定したすべての他の環境を凌駕する結果になった。
しかし、CTVでのボット詐欺は、2022年にCTV全体で69%増。同社が検知したCTV詐欺スキームと亜種の数は、2020年以降3倍に増加している。
また保護対策をとっていない広告主の場合、CTVのフラウド違反率は11.2%に上り、対して対策がある広告キャンペーンは0.6%にとどまっていることがわかった。
4、アテンションを重視する広告主にはチャンスがある
経済の先行き不透明感やブランドアイデンティティの陳腐化の中、広告主はキャンペーンのパフォーマンスを最適化し、ROIを向上させるために、アテンションベースの計測をより一層重視するようになっているという。
広告主が持つ主なインサイトとして、APACにおけるメディア投資は、アプリ内の広告在庫に重点を置く傾向に。APACは歴史的にビデオ広告のパフォーマンスが優れており、モバイルアプリに配信された広告は平均より総合的に高いアテンションを獲得している。
5、新興チャネルでのベリフィケーション(検証)を取り入れる
モバイルアプリゲームの9.8%は、DoubleVerifyによってブランドスータビリティ(適合性)のリスクが、High(高リスク)またはMedium(中リスク)に分類されている状況だという。
オーディエンスエクステンションは、リテールメディアネットワーク(RMN:Retail Media Network)において違反率が129%高い一方、ビューアブル率は91%高い(対O&O)。
サーバーサイド広告挿入技術(SSAI:Server-Side Ad Insertion)を悪用した初の大規模な詐欺行為である「BeatSting」は、2023年初頭に音声広告をターゲットにしたもの。アドベリフィケーションを実施していない広告主に毎月最大100万ドルの損害を与えていることがわかっている。