イギリス・ロンドンを拠点とするデザインと広告のアワードD&ADは、5月24日・25日日の夜にアワードセレモニーを開催。受賞作品を発表した。
【参考】
・D&AD 賞2023年はロンドンで開催、審査部門長に石川俊祐・齋藤精一・鈴木元の三氏
・ロンドン・D&AD賞審査に、平林奈緒美、窪田新、田中良治、新村則人氏ら13名が参加
今年で61回目を迎えた本賞は、「広告」「デザイン」「クラフト」「カルチャー」「インパクト」「コラボラティブ」の6カテゴリー、全41部門で構成されている。
本年度のペンシル受賞総数は、639本。最高賞であるブラックペンシルは、ファレル・ウィリアムスのMV『Cash In Cash Out』(Visual Effects部門)とThe Swedish Heartchild Foundation「Heartbeat Drum Machine」(Product Design部門)の2つの作品に送られた。
日本の作品が獲得したペンシル(受賞本数)は11本、うちイエローペンシルは0本、グラファイトペンシルは1本、ウッドペンシル は8本、特別賞であるフューチャーインパクト1本、コラボラティブペンシルが1本。ショートリスト選出は20作品となった。昨年はペンシル受賞は16本、ショートリスト選出は35作品だった。
ブラックペンシルの受賞作品と、日本からのグラファイトペンシル及び特別賞の受賞作品は下記の通り。
ブラックペンシル(最高賞)
・Visual Effects部門
Columbia Records、Sony Music Entertainment/ファレル・ウィリアムス『Cash In Cash Out』
(Division+Electric Theatre Collective+I Am Other)
『Cash In Cash Out』は2022年6月にリリースされたファレル・ウィリアムスの楽曲。ミュージックビデオは、コロナ禍の2020年、実写映像の制作がストップした頃にアイデアが練られたという。監督のFrançois Rousselet氏は、クレイアニメーションのような質感・表現だが、全てCGで制作した映像を考案。視聴者を、質の高すぎるコマ撮りアニメなのかそれともCGかと混乱させることを狙った。
・Product Design部門
The Swedish Heartchild Foundation「Heartbeat Drum Machine」
(Abby.World)
先天性心疾患に苦しむ子どもたちとその家族を支援する非営利団体 スウェーデン・ハートチャイルド財団は、電子楽器「CHD-4」を制作し、「世界ハートの日」である2022年9月29日に公開した。「CHD-4」は、先天性心疾患から不整脈のある4人の子どもたちの心音でつくられたモジュラー式シンセサイザー。オーディオビジュアルアーティストのLove Hulténと、電子楽器メーカー「teenage engineering」とのコラボレーションで生まれたものだ。
これはWeb上でも公開されており、子どもたちの心音で新たな音楽をつくることが可能。取り組みを通じて、先天性心疾患の認知を高め募金を呼びかけたほか、「CHD-4」自体は23年2月14日にオークションに出品され、その落札額は財団に寄付された。
日本からの受賞作品
グラファイトペンシル(ブラック、イエローに次ぐ3番目の賞)
・Graphic Design部門
凸版印刷/グラフィックトライアル2022「MASQUERADER」
(凸版印刷)
凸版印刷による「グラフィックトライアル2022」(テーマ:CHANGE)で、デザインユニット GOO CHOKI PARが公開したポスターシリーズ(全5作品)。窓付き封筒などのために開発された技術「ワックスプラス」を用いて紙を半透明にし、表と裏で表情が異なる3Dのオブジェクトとして昇華させた。
・フューチャーインパクトペンシル
コワードローブ「キヤスク」
(博報堂ケトル+博報堂)
2022年3月にローンチされた、障害・病気・怪我などさまざまな理由で服の選択肢の少なさに困る人のために「既製服を着やすくするお直し」をオンラインを通じて提供するサービス「キヤスク」。腕が曲がりにくい人などのための「Tシャツの前開き」(1650円)、手先が不自由な人などのための「シャツのボタン留めをマジックテープ留めに変更」(1980円、共に税込)など、痒い所に手が届くメニューを用意している。
・コラボラティブペンシル
カモ井加工紙「マスキングテープブランド『mt』」
(イヤマデザイン)
マスキングテープブランド「mt」が2009年から2023年まで実施してきた一連のプロモーション及び展覧会が受賞。国内外の21都市で「mt」を活用したプロモーションイベントを実施してきたほか、2020年には世界中のテープアーティストに声をかけ、テープアートの展覧会を実施。JINSや資生堂などのブランドとのコラボレーションも多数発売されている。2016年には本社と工場のある岡山県とコラボし、自治体、観光関係者、JRなどと共に大規模なプロモーションも実施。地域の観光客増加にも貢献した。