NY ADC賞グランプリはデル+インテルのボイス・バンク、トヨタ・モビリティ基金がAI部門最高賞を受賞

「The One Club for Creativity」が主催する「ADC 102nd Annual Awards」の入賞作品が発表となった。

最高賞であるBEST OF SHOW BLACK CUBEを受賞したのは、デル・テクノロジーズとインテルが、VMLY&R 、Rolls-Royce、および英国のMND Associationと開発したボイス・バンク「I Will Always Be Me」。ボイス・バンクとは、ALS(筋萎縮性側索硬化症)に代表される運動ニューロン疾患(MND)の患者が声を失う前に自身の声を記録しておくことで、自身の声に近い音声を合成するシステム。VMLY&R は、ベストセラー作家のジル・ツイス氏とイラストレーターのニコラス・スティーブンソン氏と協力して、人が読む声を正確に記録するために必要なすべての音と音節を含むストーリーを作成。そのストーリーは、例え病気になっても自分のパーソナリティは変わることがないと語る内容になっている。この取り組みは、2022年度カンヌライオンズファーマ部門グランプリを受賞している。

また、本作はInteractive部門でBLACK CUBEとBest of Discipline、GOLD CUBE 3 個 (Interactive部門で 2 個、Advertising部門で 1 個)、さらにInteractive部門でSilver Cube 1 個、Advertising部門とInteractive部門でBronze Cube 2 個を獲得している。

日本からはトヨタ・モビリティ基金「Voice Watch」が、Artificial Intelligence部門で部門最高賞のBest of Disciplineを受賞。これは、モータースポーツ観戦のバリアフリー化を目的に、視覚障害のある人のための実況音声をリアルタイムで生成するAI。マグロの目利き職人の技をAIに学習させた「TUNA SCOPE」を開発したクリエイティブディレクター 志村和広氏を中心とするチームが開発した。

また、グローバルエージェンシーランキングでは、MullenLowe US、VMLY&R、FCBに続いて、電通が4位にランクインした。
各受賞作品は以下の通り。

※受賞作品
BEST OF SHOW BLACK CUBE/Interactive  Best of Discipline
Dell Technologies & Intel/I Will Always Be Me
(VMLY&R / New York 、Dell Technologies / Round Rock 、 Intel / Santa Clara)

 

Best of Discipline 受賞

※Advertising/Typography
Coors Light./Chillboards
(DDB Chicago with adam&eveDDB London、NORD DDB CPH Copenhagen、Molson Coors)

クアーズ ライトは環境メッセージを展開するべく、マイアミの集合住宅の 12 棟の高層屋上に「チルボード」を設置。太陽光を85%カットできる特殊な反射白色塗料で屋根を塗装し、建物の内部温度を下げながら太陽放射の吸収を減らした。また、表面積の 95% をカバーするダイナミックなタイポグラフィーをアーティストと協力して開発し、屋上に塗装。建物ごとに違うメッセージを描いており、ビルボードならぬ「チルボード」を実現。さらに、プログラム用のオープンソースのテンプレートとタイポグラフィーは、公式サイトから誰でもダウンロードできるようになっている。
 

Apparel / Accessory / Footwear Design
Adidas Originals/Ozworld
(Jam3 Amsterdam、Media.Monks Amsterdam)

Ozworld コレクションの登場を記念して、adidas Originals がReady Player Me と協力して立ち上げた世界初のパーソナリティベースの AI 生成アバター作成プラットフォーム。ユーザーがいくつかの質問に答えるとAIがその答えからアバターの色、形、ディテールなどを判断してアバターを作成。Ready Player Me のプラットフォームがサポートする 1,500 以上のアプリやゲームで、このアバターを使用できる。
 

Architecture / Interior/Environmental Design
Novartis/Novartis Pavillon — Zero — Energy Media Facade
(iart — studio for media architectures Basel、AMDL CIRCLE 、Michele De Lucchi Milano)

製薬会社ノヴァルティス本社オフィス敷地内に設けられた、一般向けのビジターセンター兼ミュージアム。「アートは革新的な思考を刺激する」というノヴァルティス社のモットーから、このパビリオン自体もひとつの芸術作品として考えられており、約3万個のLEDライトが埋め込まれたゼロエネルギー・ファサードは、幻想的な光の芸術を描き出すキャンバスのようになっている。
 

Artificial Intelligence
トヨタ・モビリティ基金/Voice Watch
(電通、Data Artist Inc.、Dentsuライブ、 Shindii)

「Voice Watch」はモータースポーツ観戦のバリアフリー化に向けて、視覚障害者のための実況音声をリアルタイムで生成するAI。物体認識AI、気配検知AI、音声フレームAIの3つのAIで構成され、カメラの映像と走行データの分析から、いつでもどこでも精度の高い実況を実現。ライブ解説を自動的に生成し、レースを「聞く」という新しいモータースポーツ観戦体験を生み出した。
 

Brand / Communication Design/Illustration
Brooklyn Film Festival/Something To Offend Everyone
(MullenLowe United States of America New York)

映画製作者を決して検閲しないことを誇りとし、映画製作者が適切と考える方法で自分自身を表現することができる、それがブルックリン映画祭。しかし、ここに参加する映画製作者たちと価値観の違う観客に、自分たちが制作した映画について話すことにはサポートが必要だった。そこで不快感を与えずに同僚と接する方法を教える典型的な人事関連の研修ビデオを参考に「Something to Offend Everyone」というメッセージで動画を制作。ポスターでは、予期せぬ形で気分を害されたことに怒りを表明する、非常にイライラした人たちを描いた。こうした試みで、本フェスティバルで上映される作品に対して、観客側にも受け入れる姿勢があることが望ましいとメッセージ、結果としてフェスティバル自体の認知も上がったという。
 

Brand-Side / In-House
Squarespace/The Singularity
(Squarespace New York、Q Department New York、Final Cut New York and Smuggler New York / Los Angeles)

2023年のスーパーボウルでオンエアされたウェブサイトビルダー「Squarespace」のCM。北アイルランドを拠点に活動するイーファ・マッカードル監督が演出し、俳優アダム・ドライバーが出演している。オフィスで独りパソコンに向かうアダムが、「Squarespaceはウェブサイトを作成するウェブサイト」であることに気づく。すると、いきなり場面が変わり、アダムは砂漠に。彼はそこで同じ問いを繰り返す。そして「つまり自分自身を作り出せる」という結論に行き着いたアダムは、どんどん増殖していく。
 

Experiential Design
Anheuser Busch Michelob ULTRA/McEnroe vs McEnroe
(FCB New York、AB in Bev/Michelob Ultra)

ミケロブ・ウルトラには「楽しんでこそ価値がある」という信念がある。それを説得力があり、面白く、技術的に進んだ方法で示すべく企画されたのが、コート上で厳しいことで知られるレジェンド・テニス・プレイヤー、ジョン マッケンローに、最も手ごわい相手である自分自身と対峙させること。対戦したのは、CGでアバター化されたマッケンローのAIプレイヤー。その試合の様子は、1時間のスペシャル番組としてSPNによって50か国以上で放送された。
 

Gaming
OLG/Chatham Plays On
(The Hive Toronto、 MLB New York)

1934年、オンタリオ州野球協会チャンピオンシップで優勝した初のオールブラックチームであるチャタム・カラード・オールスターズ。彼らの功績を次の世代に伝えていくべく、オンタリオ宝くじ賭博公社 (OLG)は、メジャーリーグベースボールと提携。ユーザーがレジェンドたちを集めてチームをつくることができる、野球オンラインゲーム「MLB The Show 22」 の中で、チャタムのメンバー全員を復活させ、チームの存在を不滅のものにした。また、伝説的なプレイヤーの子孫をフィーチャーした動画を通じて、チームの歴史と、人種差別やその他の時代の課題を乗り越えた選手たちの忍耐力など、チャタム カラード オールスターズの遺産を紹介している。
 

Motion / Film Craft
Telefonica Movistar /Shout
( MLY&R Mexico / Mexico City、Quiet City Music + Sound / São Paulo/New York 、 Nash VFX / Brasil 、 Rebolucion Mexico / Mexico D.F.)

メキシコは、ラテンアメリカのLGBTQIA+コミュニティにとって、社会的偏見の強い国。携帯電話事業会社のMovistarはとVMLY&Rメキシコは、同性愛嫌悪やいじめに対するユーザーの意識を高めるべく、映像作品を制作。1980年代のティアーズフォーフィアーズのヒット曲「SHOUT」のリメイクに載せて展開されるのは、新進気鋭ボクサー・ハビエルの物語。性的嗜好がソーシャルネットワーク上で暴露され、リングの内外において人生で最も重要な戦いに直面するハビエル。セクシュアリティを拒絶されることが人間にとってどれほど苦痛であるか、メキシコ文化における男らしさとは何であるのかなどを物語を通して描いている。
 

Packaging Design
Dia Elis/Dia Elis
(G Design Studio Athens)

オリーブオイル「Dia Elis」は、若い女性が女神ヘラに敬意を表して競い合うHeraean Gameが開催された古代エリスの近くで有機栽培されている。こうした背景から、ロゴマークは製品から与えられる元気と生命力で疾走する女性ランナーをイメージ、未来を見据えながら過去を語る総合的な「Dia Elis」のブランドアイデンティティをつくりあげた。白いセラミックのボトルには、古典的ですぐにギリシャと認識できるドーリア式の細い柱を反映。この手作りのボトルの表面には垂直方向の溝が刻まれており、ユーザーが使いやすいグリップとして機能している。
 

Product Design
Dot Incorporation/Dot Pad. The first smart tactile graphics display.
(Serviceplan Germany Munich、Serviceplan Korea Seoul )

視覚障害者向けの初のスマート触覚グラフィックディスプレイ。触覚コミュニケーションにおいて全く新しい次元に入り、革新的なドット画像処理とアクチュエーター技術を使用して、あらゆるソースからのあらゆるビジュアルコンテンツを表示できる。そのため、視覚障害者がインターネット上のあらゆる視覚コンテンツにアクセスすることが可能になった。
 

Photography
The New Yorker/Waiting for the School Bus in Uvalde
(The New Yorker New York)

サンディフック銃乱射事件をきっかけに、写真家のグレッグ ミラーが2013 年に立ち上げたモーニング バス プロジェクト。悲劇的な出来事の後、日常に戻ろうとするティーンエイジャーや子供たちがスクールバスを待つ姿をシンプルに捉えたポートレイトシリーズを展開している。本作は、2022年に21人が亡くなった米テキサス州ユバルディのロブ小学校で起きた最悪の銃乱射事件後、100日経ったときの子どもたちのポートレイト。
 

Publication Design
China People’s Education Press/Chinese Nursery Rhymes
(Rang Li)

中国の童謡シリーズをサイズの異なる10冊の本で構成。紙の型抜き、透明オーバーレイ、折り、伸ばし、跳ね返りなど、本ごとにさまざまな印刷技法、紙(色紙、テクスチャ紙、白い紙など)、イラスト(抽象的、具体的、写実的、誇張など)を使用して、童謡の内容と芸術的概念を表現している。
 

※日本のGOLD CUBE受賞作品

BRAND / COMMUNICATION DESIGN 部門
アドミュージアム東京/吉田秀雄記念財団「BEAUTIFUL MUTATIONS」(電通)
Coxco「CLOTHES FOR BELIEVING IN DREAMS」(Haruka + vitamin inc. + coxco inc.)

ARTIFICIAL INTELLIGENCE 部門
トヨタ・モビリティ基金「VOICE WATCH」(電通+ Data Artist Inc. 、 DENTSU LIVE、 SHINDII, LLC. )

GAMING 部門
講談社VRラボ「THANK YOU FOR SHARING YOUR WORLD」(講談社、講談社VRラボ)


 

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