電通グループは6月9日、東京2020 オリンピック・パラリンピック競技大会の入札問題に関する第三者調査委員会の報告書と再発防止に向けた取り組みを公表した。
報告書は24ページにわたり、同社サイトでも公開されている。「過剰なまでにクライアント・ファーストを偏重する組織風土」を筆頭に、「コンプライアンスリスクに対する感度の鈍さ」「手続きの公正性・透明性への配慮を著しく欠いていたこと」といった、長く根付いた風土や社内組織の問題点を指摘した。
再発防止策としては「dentsu Japan改革委員会」を設置する。公正な取引を担保する業務プロセスの見直しやスポーツ領域や公共分野の業務のガイドラインを策定するほか、内部統制の実効性の向上、経営者から現場までコンプライアンス教育の徹底、グループ行動憲章の周知徹底や人事制度の見直しを挙げた。
報告書の中では「クライアント・ファーストへの偏重」という点に厳しい目が向けられている。
具体的には「クライアントの懐に飛び込み、クライアントが気付いてすらいない真意をも汲み取って、その期待を上回る成果を上げ続け、クライアントとの強い信頼関係を構築することを通じて、広告業界における現在の地位を築き上げてきた。このような仕事に対する積極的な姿勢は競争力の源泉となってきた一方で、ともすると、結果が全てを正当化するような思考に陥りがちであり、仕事に携わる者の視野を狭め、あるいは近視眼的になってしまうリスクを内包している」といった指摘がなされている。
さらにこれらの組織風土を生み出した要因として、「事業の特性(広告業の特殊性から、結果を出すためにクライアントの要望に応えることが至上命題となりやすい状況が存在し、スポーツ分野においても類似の状況が存在すること)」「パーパス・企業理念(クライアントの課題を解決することが強調された経営理念)」「経営陣の姿勢(コンプライアンス全般に真摯に取り組む姿勢が十分に示されてこなかったこと)」のほか、過去の成功体験や失敗体験、人事、心理的安全性、懲戒制度や責任の取らせ方など、16項目にわたる指摘が盛り込まれた。
これらを受けた再発防止策の提言としては「企業理念・行動指針のアップデート」「“クライアント・ファースト”や“成功”といった概念の再定義」などが必要といった点が挙げられている。