5月29日の日経新聞の朝刊、その紙面を開いた人はいつもとどこか違うテレビ欄に手が止まったことだろう。その番組表を見ると、「ムカムカモーニングワイド」「ムカデとことん買います」「ムカデレース」「かみつきジャーナル」「クイズムカデ王2時間SP」…など、上から下まですべて「ムカデ」に関連した番組になっている。
実はこれ、大日本除虫菊(以下、金鳥)のムカデムエンダーを中心としたムカデ退治用品の新聞広告だ。金鳥は、この広告を「LOVEメディア広告」と名づけている。
「昨今、マスメディア(テレビ、新聞、ラジオ)に元気がないといわれますが、金鳥は広告のチカラを信じている会社です。メディアが元気なら、コマーシャルもより広く深く生活者に届く。元気がないとそりゃ困る!というわけで『LOVEメディア』というメッセージを掲げ、メディアを応援するカタチで(フリをして)、広告の注目度アップ、拡散を狙えないかと企画しました」と、電通CreativeKANSAI クリエーティブディレクターの古川雅之氏。
今回、クリエイティブチームが目指したのは、「丁寧に読むほどに発見があり、面白いと思ってもらえる仕上がりと、あの手この手で楽しんでもらえる広告」だ。
新聞の隅から隅までじっくりと読んでもらうべく、またネットでの話題化を念頭におき、ディテールには手を抜かず、番組欄の番組名や内容紹介、記事、広告、ロゴに至るまで全てムカデがらみにしている。
「『ぱっと見の違和感』と『テレビ欄らしさ』の塩梅が難しく、放送局は5局では少なく、7局では多すぎて読まなくなるかも、という検証を経て6局がベストに。紙面の右端にある『噛まれたらiTAi』というロゴも複数種類作っていかに真面目そうな企業ロゴになるか?という検証もしています」と、電通CreativeKANSAI アートディレクターの茗荷恭平氏。
実は、テレビとラジオの番組欄の色帯部分では「メディアが元気だと♢広告もうれしい」「広告のチカラ信じてる金鳥」とのメッセージを「縦読み」の形で仕込んでいる。
さらに、この企画で決定するまでに出てきた「ボツになった新聞広告」もネット上で公開した。一見ムカデを思わせるサバの骨写真は、実際にサバを2枚におろすところから撮影まで手がけたという。
「全体を通して、せっかく見ていただいた人に損はさせないよう、ディティールまで楽しめるデザインを心がけました」(茗荷氏)
新聞とテレビが交錯する場所である「テレビ欄」を原稿の基本デザインにすることで、「新聞読んで、テレビを見よう!」「ラジオも聴こう!」、そしてちゃっかりと「なによりも、コマーシャルを見よう!」とメッセージ。さらに「新聞広告で、作ったテレビCMを広告する」(QRコードを配置してテレビCMに誘導する)ことにしたという。
QRコードから見ることができるテレビCMは、全部で4種類。とくにムカデに悩んでいる地域(中国、四国、九州地方)に向けて制作されている。そのCMは、いかにもムカデの出そうな家に、そこに住む人をイメージした顔をはめ込むという、かなり大胆な演出だ。
「『ムカデに大いに悩んでる地域の方々』に、『ムカデ駆除の画期的な製品』という分かりやすいお話なので、まずムカデの悩み(生の声)をできるだけたくさん集めました。そこから共感の高そうな数個のセリフを作り、香川(高松)・広島・福岡(小倉)と計130人あまりの方にオーディション本番での音声収録をしました。ムカデに悩む家主を、家に顔をはめるビジュアルアイデアで登場させ、インパクトある1枚絵にラジオCMを作るように音声を当てるという懐かしい時代の作り方で取り組みました」(古川氏)
新聞出稿後、Twitterでの反響は上々という。「普段見ないテレビ欄を初めてじっくり見た気がする」「初めて新聞を隅々まで見たかも(笑)」といった反応が見られた。
「一番うれしかったのは、いくつか『家族で見た』という投稿があり、まだまだメディアは元気なのでは!と思えたことです」と、茗荷氏は話している。
スタッフリスト
共通
- 企画制作
- 電通+電通Creative KANSAI
- CD+企画+C
- 古川雅之
- 企画+C
- 直川隆久
- AD+企画
- 茗荷恭平
- AE
- 新宅義之、佐藤修一、多嶋田雅司
グラフィック
- 制作
- モノリス
- AD
- 大松敬和
- D
- 水江隆、玉井智子
テレビCM
- 制作
- 春企画東京
- Pr
- 石川博之、市川拓弥
- PM
- 長澤アキラ
- 演出
- 山口剛平
- 撮影
- 内川聡
- 照明
- テリーマン
- 編集
- 奥本宏幸
- MA
- 清水天務仁
- CAS
- 佐藤比登美
- ロケCrd
- 神岡裕介
- 造形
- 猿渡孝太郎