父の日を目前に控えた2023年6月14日の朝、ユニクロは朝日新聞に「父の日」広告を出稿。今年の母の日に続いて、「ちびまる子ちゃん」のまる子が、父・ヒロシと共に登場した。
新聞を開いたときに、15段広告でまず目に入るのが赤ら顔の父・ヒロシ。「あ、お父さんの顔、赤くなっている」という言葉通り、ビールとつまみを前に、お酒を飲んで酔っ払っちゃったのかな?と思いきや……。左の新聞を引き抜くと、小さなプレゼントを手にしたまる子が反対側の15段広告に登場する。実は、30段全体で見ると、お父さんは娘からのプレゼントに照れて顔が赤くなっていた、ということがわかる仕掛けになっている。
この広告では、普段は口下手だけど頑張ってくれているお父さんにありがとうを贈ろう、というメッセージを伝えている。
「毎年、母の日に比べ少し盛り上がりに欠けてしまう父の日。だからこそ、展開を縮小するのではなく、母の日同様に盛り上げたいというユニクロの方々の想いを受け、今年は、母の日と同じ規模で、シリーズ展開することになりました」と、クリエイティブディレクター 井戸真紀子氏。
今回ちびまる子ちゃんを起用するにあたって、まずは、父・ヒロシを起用するからこそ言える父の日に対するメッセージやインサイトは何か、をチームで探っていったという。そこでポイントになったのは、“ヒロシの赤ら顔”だ。
「普段お酒を飲んで赤くなっているイメージの強いヒロシですが、それがプレゼントをもらったときに赤くなる顔に通じるのではないか、という着眼点です」(アートディレクター 玉置太一氏)
その着眼点と、母の日と同じ“新聞を引き抜くギミック”を掛け合わせ、単体では赤ら顔に見えるけれど、新聞を引き抜くと30段となり、まる子がプレゼントを贈っていて赤くなっていたことがわかる……という企画になった。
「不器用で、ちょっとプライドが高くて、偉そうで、でも家族を想ってる。そんなヒロシの姿は、多くのお父さん像にも当てはまると考え、コピーを考えていきました。
言えないけれど、本当は父の日を楽しみにしてるし、本当は家族を大事に想ってる。そんなお父さんに、お疲れさまとありがとうを伝えて、普段とは違う形でお父さんの顔を赤くしようとメッセージしました」(コピーライター 真子千絵美氏)
新聞だけではなく、SNSでもまる子とヒロシのイラストを使ってメッセージを発信。「お父さんに似てるってちょっと恥ずかしくてちょっとうれしい。」「お父さんを笑顔にした思い出は、いつかあなたを笑顔にする。」など、SNSでも父と子のインサイトを色々な形で探りながら、コピーにしていった。
「まる子とヒロシの関係性の中で違和感がない上で、見た人が共感して、自分のお父さんの顔を思い出したり、ありがとうって言ってみるのもいいかもなと感じてもらえるといいなと思っています」(真子氏)
また、店頭では母の日に続き、ユニクロギフトを買うとプレゼントされる、ハートをモチーフとしたチャーム(メッセージカード)を制作。カードに描かれたたくさんのハートをよく見ると、ハートの中に紛れた「父」の文字が浮かび上がってくる。今回は、近い存在だからこそ普段なかなか伝えられないお父さんへの感謝の気持ちをこっそり伝えられるチャームを考えた。
「“ハート”と“父”の形状を活かしながら、たくさんのハートの中に“父”の文字を紛れ込ませることで、お父さんにしか贈れない特別なチャームにデザインしました。また、実物では“父”部分に凹凸のある印刷(UVシルク厚盛)を施すことで、手に取ると“父”が浮き出て見えてくる仕掛けになっています」(アートディレクター 関口遼氏)
出稿後、SNSでは「父・ヒロシが自分の父親と重なる」「ほっこりする」「プレゼントを贈りたくなった」などの声が多く寄せられたほか、複数のテレビ番組でも広告が紹介された。
スタッフリスト
■共通
- 企画制作
- 電通
- CD
- 井戸真紀子
- AD
- 玉置太一、関口遼
- C
- 栗田雅俊、真子千絵美
- D
- 菅原良太、田口美希、梁取幸子(sora inc.)
- 作画
- 吉岡彩乃(日本アニメーション)
- 作画補助
- 堀籠正樹(朝日新聞社)
- イラスト着色
- 喜多啓介・上嶋和巳
- AE
- 前田浩行、三浦良晃、高木綾乃、中山洋介
- メディアプランナー
- 赤松英治、田中僚、岡村莉紗子、小島里佳
- 印刷
- 精美堂