優れた研究技術を他ブランドにも活用 企業の組織運営は学校にも使える!?
花王から茨城県の公立高校に転職してまもなく3カ月が経とうとしています。早いですね、あっという間の3カ月でした。
職場が学校ということもあり、おかげさまで生活も朝型に変わりました。毎朝5時半には起きて、6時過ぎには家を出ます。通勤は電車で約1時間。花王時代と通勤に要する時間はあまり変わらないのですが、毎朝同じ時間に必ず学校に行かなければならないというのはつらいですね…。学校がある茨城方面に向かう電車は比較的、空いているのが救いです。
私は通勤につくばエクスプレスを使っているのですが、その沿線は、都内まで出やすいということもあって最近、マンションや商業施設の開発が進んでいます。つくば市や守谷市を中心とした開発が進んでおり、県南・県西地区は県内でもこれからが楽しみなエリアです。
さて就任から3カ月が経ち、校内の仕事の他、茨城県内の他校との交流も始まっています。先日は茨城県内の副校長・教頭が集まる会で、「花王で学んだ組織運営とミドル層による企業変革力」というテーマで講演させていただきました。当日は水戸市内の会場に約200名の参加者が集まりました。私の役割は「研究協議会」の講師役です。
組織運営についての話の主題は、マトリックス組織運営によるメリット・デメリット、それを一時的に解決する手段としての、プロジェクト型組織運営の有効性について。花王では研究・事業・販売など各機能軸と化粧品、ファブリック、ヘアケアなどの各事業単位がマトリックスに絡み合って組織運営を行っています。そのメリットは、優れた研究技術を他のブランドにも活用ができることなど。
例えば、「メリット シャンプー」の改良時に開発された自発洗浄技術を、「アタック」や「サクセス」ブランドにも採用して、表現を変えてマーケティングをするといった活用です。まさに研究技術成果の花王ブランドへの横展開ですね。
学校にも同様の組織があります。各学年組織を横串で担当する教務部、生徒指導部、探究部などの横串組織の校務分掌というものです。学校の組織運営もまさにマトリックス組織運営になっているのです。
PDCAよりOODA OODAは学校でもすでに実践されていた
現状の学校組織を例にとって説明をし、校務分掌の横串組織の重要性を伝えました。学年組織が優先されがちなのですが、この校務分掌の横串組織が機能していると、学校組織は上手く回ると感じています。また新しいことを進めるにあたっては、プロジェクト型組織も有効であるという点についてもお話させていただきました。
各学年からプロジェクトメンバーを出し、目的が達成できたら解散する。まさに「乗合バス的な組織」です。このような方法もあるのではないかと紹介しました。また毎日、管理職ミーティングを行っているのですが、このマネジメントの仕方として、OODAループの手法も詳記しました。OODAループとは、刻一刻と変化する状況で成果を得るために、現在、ビジネスシーンの多くで使われているフレームワークです。PDCAと比べて状況への即応性に優れ、変化の早い昨今の環境で、チャンスを逃さないために重要な手法として使われています。
OODAループは以下4つのステップを繰り返す手法です。
Observe(観察)
Orient(状況判断、方向づけ)
Decide(意思決定)
Act(行動)
まさに本校でもOODAループはすでに実行されていると思っています。毎朝、警備報告書が上がってくるのですが、どこかの教室の戸締りがされていなかったことに対して、学校全体に伝わるそれぞれの会議で徹底する事柄を決め、すぐに教頭から各学年主任や、生徒指導部などの関連する先生に、再度徹底するように伝達される。かつ再発防止策も検討する、まさにOODAループを実践されていますね。
OODAループは「自ら考え、動く個人を増やす(=自走できる組織)」ことに効果的でもあるので、学校組織に取り入れてもよいのではないかと思ったので、紹介させてもらいました。このプロジェクト型組織運営とOODAループの話を聞いて、今年同じ民間校長として採用された、つくばサイエンス高等学校の副校長先生が、早速プロジェクト立ち上げ、OODAループを取り入れてくださいました。
学校同士の連携ももちろん重要ですが、民間校長同士の連携も今後さらに強化する必要があります。今まで私が花王で経験してきた「マーケティングスキルや組織運営、ミドル層からの変革力」など、学校経営に活かせるものは活かしていきたいと思います。