JR6社のデジタルスタンプラリーがカンヌIndustry Craftグランプリに

6月19日からフランス・カンヌで開催された「カンヌライオンズ国際クリエイティビティフェスティバル2023」。2日目には、Entertainment(Gaming)、Industry Craft、Digital Craft、Film Craft、Design Entertainment、Entertainment(Music)、同(Sport)の8部門が発表された。

今回から新設されたGaming部門には、609の作品がエントリー。そこからグランプリには、Supercellのゲーム「Clash of Clans」の「Clash from the Past」が選出された。本作はThe One Show 2023のGaming部門でも部門賞を獲得している。

またIndustry Craft部門ではJRグループ6社の鉄道開業150年キャンペーン「My Japan Railway」が受賞。電通のクリエーティブディレクター/アートディレクターの八木義博氏がリードした企画で、同氏はIndustry Craft部門の審査委員長も務めている。

また2日目の日本からのコンテンツセッションとして、Accenture Songのマネージングディレクター 枩崎由美氏、資生堂 グローバルチーフデジタルオフィサー Angelica Munson氏、資生堂ジャパン チーフデジタルオフィサー笹間靖彦氏が「When D&I Informs All Decisions, Not Just the Marketing Ones」というテーマで登壇した。

写真 人物 複数スナップ (左から)Accenture Songのマネージングディレクター 枩崎由美氏、資生堂 グローバルチーフデジタルオフィサー Angelica Munson氏、資生堂ジャパン チーフデジタルオフィサー 笹間靖彦氏。
(左から)Accenture Songのマネージングディレクター 枩崎由美氏、資生堂 グローバルチーフデジタルオフィサー Angelica Munson氏、資生堂ジャパン チーフデジタルオフィサー 笹間靖彦氏。

各部門のグランプリ獲得作品は下記の通り。

Entertainment for Gaming部門、Entertainment部門(2部門で受賞)

Supercell/Clash of Clans「Clash from the Past」
Agency:Wieden+Kennedy+Spark&Riot

2012年にリリースされた「Clash of Clans」は、世界中で人気のあるモバイルゲームだ。22年に10周年を迎えるにあたり、「スーパーマリオシリーズ」「パックマン」のような人々の文化や生活に浸透した象徴的なゲームとして確固たる存在感を示したいと考えた。そこで10周年を祝うのではなく、フェイクの40周年を祝うことに。1982年から「Clash of Clans」が存在する世界線をコミュニケーションで打ち出したのだ。ドキュメンタリームービーをつくり、まるで当時放送されたかのような偽のCMやインタビュー番組を制作。また80年代はアーケードゲーム、90年代はレースゲームなど、実際に当時のフォーマットに合わせて再編されたゲームも公開された。さらにスポーツアパレルブランドの「チャンピオン」やトレーディングカード販売サイト「Topps」などともコラボ。徹底してフェイクの歴史をつくり込むことで、ファンを中心に大きな反響を得た。

Gaming部門の審査委員長であるRiot GamesのGlobal Head of Marketing、Francine Li氏は「今回新設となったGaming部門での審査においては、ゲームカルチャーのニュアンスを尊重し、プレイヤー体験に創造的な付加価値を与える勇敢な作品を評価したいと考えていました。グランプリ受賞作は、それを見事に実現しています。ゲームのプレイヤーたちはゲームそのものだけでなく、ゲームを取り巻く世界観を愛しているのです」とコメントしている。

Design部門

Microsoft「ADLaM – an Alphabet to Preserve a Culture」
(McCann New York)

西アフリカ地域に住むフラニ族の言語、プラール語は4000万人以上の人々に話されているが、長らくこの言語にはアルファベットがなかった。子どもの頃から母国語を守ろうと決意していたバリー兄弟は「ADLaM」という手書きのアルファベットを制作。しかし、このアルファベットをデジタル化して、現代のデジタルでのコミュニケーションに使えるようにし、フラニ族の人々が自らの言語でビジネスを行い、SNSを通じてつながり、情報を見つけられるようにする必要性が残っていた。

兄弟はデジタル書体のプロトタイプを開発していたが、よりデジタルに最適化し、より広い範囲で利用できるように改良する必要があった。そこでマイクロソフトが兄弟と書体デザイナーの専門家グループに加わり、読みやすく書きやすいアルファベットの改訂版を作成。マイクロソフトは現在、全世界のプラットフォームで改訂版のアルファベットを採用している。また改訂版のアルファベットは現在、「ADLaM Display」フォントとしてunlocked.microsoft.comでダウンロード可能で、Microsoft 365の一連のプログラム、デスクトップ、モバイルなどにも展開されている。

実データ グラフィック

Film Craft部門

pgLANG「We CryTogether」
(pgLang)

2022年5月にローンチされたラッパーのKendrick Lamar(ケンドリック・ラマー)によるアルバム『Mr. Morale & the Big Steppers』。ここに収録された、俳優のTaylour Paige(テイラー・ペイジ)とコラボレーションした楽曲『We CryTogether』のショートフィルム(5分42秒)が受賞。映像では2人が口論するように歌う様子がワンテイクで撮影された。pgLangはKendrick LamarとMV監督のDave Freeが2020年に設立した会社。

Film Craft部門の審査委員長であるSomesuchのディレクター Kim Gehrig氏は、「映画制作技術のすべてを駆使し、ジャンルを定義するような先駆的な作品。このフィルムの演出とエグゼキューションには非常に多くの創造的な選択があったと思うが、クラフトがより感情に訴えかける力を高めている。カメラの動きや照明、被写体の撮り方や演技など、すべての選択が結実し、見る者に効果的に自問自答を促す勇敢な作品に仕上がっている」とコメントしている。

Digital Craft部門

Nike「Never Done Evolving Feat Serena」
(AKQA)

2022年8月、テニスプレーヤーのセリーナ・ウィリアムズが引退を発表したその2日後、ナイキは20年以上トップ選手であり続けた彼女のプレースタイルを分析する研究を発表。彼女の公式大会の全データと映像を分析した後、機械学習を用いて、各時代にわたる彼女のプレースタイルをモデル化した。AKQAはこの研究結果をより多くの人に届けられるよう、バーチャルの試合を開催。彼女が初めてグランドスラムを制したときの年齢である17歳のセリーナと、23回目のグランドスラムを制したときの年齢である35歳のセリーナを対戦させた。

Industry Craft部門

JRグループ6社/鉄道開業150年キャンペーン「My Japan Railway」
(電通)

日本での鉄道開業150周年を迎えた2022年。JRグループ6社(JR北海道、JR東日本、JR東海、JR西日本、JR四国、JR九州)はそれを記念して、22年4月から「鉄道開業150年キャンペーン」を実施した。その一環で制作されたのがデジタル版の駅スタンプラリー「STATION STAMP」。人々の鉄道への関心が希薄になってしまった今、人々と鉄道が「もう一度出会う」ためのトリガーとして機能するものだ。位置情報をオンにした状態で対象のJRの駅の近くに行くと、オリジナルのアプリ内でその駅のデジタルスタンプを押すことができる。スタンプはその地域の文化や歴史に基づくもので、23年4月時点で562種類が用意されている。

実データ グラフィック JRグループ6社/鉄道開業150年キャンペーン「My Japan Railway」

Entertainment for Music部門(2作品が部門賞を受賞)

Michael Kiwanuka『Beautiful Life』
(SMUGGLER+Michael Kiwanuka)

Michael Kiwanuka(マイケル・キワヌカ)による楽曲。ミュージックビデオでは、パーティーでロシアンルーレットをする若者たちと、それぞれの記憶が走馬灯のように描かれる。ラストシーンの悲劇と、それに対してスマホを向ける若者たちの異様さ。Netflixで公開された、コロナ禍であらわになった社会のひずみに対して戦う人々を描いた映画『コンバージェンス:危機のなかの勇気』に提供された楽曲。

Apple「The Greatest」
(Apple)

2022年12月3日の国際障害者デーに先駆けて公開された、Appleのアクセシビリティに対する継続的な取り組みを紹介したムービー。ハンディキャップを持つ7人の人々の日常を追いながら、彼らが生活の中で実際に使っているAppleのアクセシビリティ機能を紹介している。公開後1週間で、YouTube上で1600万回再生され音声解説版も18万1000回再生されるなど、好意的に受け取られた。本作はThe One Show 2023の最高賞(Best of Show)にも選ばれている。

Entertainment for Sport部門

Michelob ULTRA「Dreamcaster」
(FCB New York)

NBAのグローバルビールパートナーであるMichelob ULTRAは、全盲の人でもバスケットボールの試合観戦を楽しめるようにするシステム「Dreamcaster」を構築。コート上の全ての動きを感知できるハプティック(触覚反応)装置と、コート上の音を体感できる空間オーディオ、生成AIを用いた点字での実況、それぞれを組み合わせたものだ。NBAのテレビ実況で、全盲のスポーツジャーナリスト Cameron Black氏と共に発表し、Cameron氏はその場でスポーツ実況をして見せた。

3日目のCreative B2B、Creative Data、Social & Influencer、Direct、Media、PR部門の受賞作に続きます。

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