7月4日より東京・新橋にあるクリエイションギャラリーG8にて、 第25回亀倉雄策賞受賞記念 三澤遥 個展「Just by | だけ しか たった」が始まった。
1997年に急逝したグラフィックデザイナー亀倉雄策の生前の業績をたたえ、グラフィックデザインの発展に寄与することを目的として、1999年に設立された亀倉雄策賞。25回目を迎えた今回は、岡崎智弘氏の放送局の番組コンテンツ映像「デザインあneo あのテーマ」、および三澤遥氏の幼稚園のサイン計画「⽟造幼稚園」が選出された。亀倉雄策賞としては初めてとなる2作品の同時受賞が決定し、6月に岡崎展を、7月に三澤展を実施することになった。
三澤遥氏は、武蔵野美術大学卒業後、デザインオフィスnendoを経て、日本デザインセンター原デザイン研究所に所属。2014年より三澤デザイン研究室として活動開始した。ものごとの奥に潜む原理を観察し、そこから引き出した未知の可能性を視覚化する試みを、実験的なアプローチによって続けている。主な仕事に、水中環境を新たな風景に再構築した「waterscape」、かつてない紙の可能性を探求した「動紙」、国立科学博物館の移動展示キット「WHO ARE WE」、隠岐ユネスコジオパークの泊まれる拠点「Entô」のアートディレクション、上野動物園の知られざる魅力をビジュアル化した「UENOPLANET」がある。
今回の受賞対象となった作品は、円筒形を駆使した立体造形と独特の配色による、幼稚園のサイン計画。原弘賞の審査では、「この数年、高いレベルで受賞を競ってきた三澤の仕事に共通するデリケートさを持った作品」「今回はさらに新たなデザインの切り口を発見し定着させた仕事で、表現の幅の広さを見せた」などの評価を得ている。
今回の受賞作品は、金属の輪っかの組み合わせから成るサイン。これらはすべて、輪っかの大きさ、重なりやずれの違いから生まれた簡潔な形状をしている。
「一見、オブジェや彫刻のようなサインらしからぬ佇まいは、子どもたちに観察し想像することを問う。これはなんだろう、と。サインに書かれた文字がまだ幼くて読めなくても、彼らは柔軟な発想で周辺や世界を捕まえようとする。子どもたちのことをそっと近くで見守るような、柔らかなコミュニケーションをサインに。最初から具体的なイメージを決めず、原寸の紙模型で検証を重ね、要素を削ぎ落としながら造形やストーリーを編集して構築していくプロセスは、これまで三澤デザイン研究室が繰り返し行なってきた実験と検証の延長にある」と、三澤氏はコメントを寄せている。
第25回亀倉雄策賞受賞記念 三澤遥 個展
「Just by | だけ しか たった」
今日から始まりました!一見何もなさそうに見える会場ですが、目を凝らすと200ほどの展示物が見えてきます。ほとんどが今回の展覧会のために制作しています。たった20日間しか開催されていません。ぜひぜひお越しください。 pic.twitter.com/pchJekJwZ0— 三澤 遥 Haruka Misawa (@MisawaDesign) July 4, 2023
三澤氏には「敢えて、完成させないようにしている」未完のプロジェクトがあるという。
「例えば、紙の可能性を探求する『動紙』はそのうちのひとつで、5年に亘って研究している。まだまだこれから、10年、20年と続けていくかもしれない。継続的な試みの中にしか見えてこないものづくりの質を追求し、仲間と数々の実験や検証をしていく時間は、まるで社会との接点を暗闇で探るようで、地道ながら刺激に満ちている。わくわくすることもあるし、途方もない気持ちになることもある。つくることで、もっとわからなくなることもある。つくり続けるその先で何に出会えるかはまだわからないが、想像も及ばないものと遭遇できる可能性に大いに期待し、つくることを止めないでおく。これまで制作発表した作品も、まだ変化している途中の状態かもしれない。そう捉えてみると、まだまだ先の姿を考えてみたくなる。まだまだ、をつくる。すると、まだまだ面白がれる。まだまだ、の思考が次に進む力となる」
7月7日には、同じく亀倉雄策賞を受賞した岡崎智弘氏と三澤氏によるトークショーが開催される(現状、オンラインのみ予約可能。事前要予約)。モデレーターは、デザインライターの角尾舞氏が務める。
また7月19日には、 HIGURE17-15 cas 代表の有元利彦氏、国立科学博物館で展示ディレクター 久保匡氏を迎えて、それぞれ3名が活動する野での「保存と収集」をテーマにトークイベントも実施される(会場での観覧は、7月12日11時よりギャラリーにて受付。オンラインは、Peatixにて予約)。
三澤遥 個展「Just by | だけ しか たった」
会期:開催中、7月27日まで
時間:午前11時~午後7時
日曜・祝日休館
入場無料