※本記事は6月30日発売の月刊『宣伝会議』8月号の転載記事です。
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齋藤弘彰氏
プラスアルファ・コンサルティング
見える化エンジン事業部 副事業部長
住谷七海氏
プラスアルファ・コンサルティング
見える化エンジン事業部 セールス・コンサルティングG
コロナ禍で高まった、テキストマイニングのニーズ
マーケターの創造力を最大化するために、必要不可欠となるインプット。数値データを見るだけでは読み取れない顧客の声を、アンケートやSNSなどで寄せられた“言葉”を分析することで理解が深まっていく。とはいえ、ただ言葉を眺めているだけでは何も生まれず、組織として価値のある資産にするためには、共通言語となる材料に変換していかなければならない。
プラスアルファ・コンサルティングの「見える化エンジン」は、SNS、問い合わせログ、アンケート、社内文書、日報といったビッグデータをテキストマイニングで可視化し、社内で共有していくためのプラットフォームだ。ただ言葉を単語に分解するだけでなく、「構文解析」で語の繋がりを把握し、さらに「意味解析」によりその言葉に込められた感情まで分析ができる「見える化エンジン」。齋藤弘彰氏は、近年のテキストマイニングに関する環境変化について次のように話す。
「私たちの調査においては、定性データの重要性は着目されているものの、実際に活用できている企業は大企業であっても少ない現状です。特にコロナ禍では顧客体験価値が大きく変化。窓口や売場など対面で接する機会も減り、顧客理解が停滞してしまったという声が聞かれます。企画の立案から検証まで、あらゆる場面で“言葉を分析したい”というニーズは高まっていると感じます」(齋藤氏)。
同社が提唱するのは『顧客体験フィードバック』という考え方。企業が意図する体験価値(CX)と顧客が実際に受け止めた価値のギャップを捉え、CXの最適化・最大化に繋げることを指す。
「商品やサービスには、届けたいと思っている価値がある。それがきちんと顧客に届いているか、どのように受け止められているかを確認しましょう、という提案です。例えば化粧品で、最も届けたい価値は色持ちの良さだったとします。では実際に顧客が受け止めた価値は何か。もしかすると、好評なのはツヤかもしれないし、パッケージに魅力があるのかもしれない。こうしたギャップを見える化することで、より顧客体験を向上させるアプローチが可能になると考えます」(齋藤氏)。
あわせて、SNSをソースとしてトレンド・インサイトの分析やリスク分析も可能だ。特にTwitterには素直な感情や本音が投稿されることが多く、アンケートでは分からないヒントが隠されている。
作品のテキストマイニングで価値の軸を見出す
「宣伝会議賞」では、応募作品として表現された“言葉”を分析し、その結果から新たな発見を導き出すための試みとして、2020年より同社のサービスを活用した応募作品のテキストマイニングを実施してきた。
まず話題マップとして、頻出単語と、単語同士の関係性(係り受け) を分析。さらに「名詞」「形容詞」「動詞」の各品詞と「総合」で、登場回数の多い単語をランキング化し、応募作品の傾向を可視化していく。
「過去3年間分析していて感じるのは、『宣伝会議賞』はまさに膨大な顧客体験フィードバックである、ということです。作品募集にあたり、各企業それぞれがこう見てほしい、こう感じてほしいという商品・サービスの魅力を提示しています。ここに応募者たちは真剣に向き合って、その価値をずばり、言葉にしていくわけですよね。様々な切り口で書かれたコピーから、どんな評価軸が多いのかも判断できるでしょう」(齋藤氏)。
分析を担当する住谷氏は、「テキストマイニングの結果を時系列で比較することで、価値観の変化なども見えてくるでしょう。それは企業からの訴求内容の変化によるものなのか、時代や消費者の価値観の変化によるものなのか。新たなヒントが見出せると考えます」と話す。
一人ひとりの言葉を掘り下げ、新たな兆しを捉える
同社は2021年の第59回「宣伝会議賞」で課題協賛も行った。課題は「『見える化エンジン』の魅力をわかりやすく伝えるアイデア」。協賛企業賞を受賞した「お客様の声に、目を傾けよう。」は現在、同社のタグラインやWebサイトで活用されている。
「協賛企業賞は経営幹部含めて選定をしました。新しい視点のものや、同じ視点でもその人にしかできないであろう表現。企画意図含めて、心が動かされました」と齋藤氏は振り返る。
「ChatGPTなども出てきていますが、生身の人間の体験から出てきた言葉には、大きな価値があると考えています。コロナ禍ではリアルなコミュニケーションが取れなくなり、テキストコミュニケーションの割合や重要性もより増しました。新たな兆しを捉えていくためにも、生活者一人ひとりの言葉を、改めて掘り下げていく価値があるのではないかと思います」(齋藤氏)。