デジタル広告の品質問題、「代理店が取り組むべき」が6割 広告主調査から見えたデジタル広告「買い方改革」の必要性

経済産業省は6月30日、「広告主意識アンケート調査から見えるデジタル広告の『買い方改革』の必要性に関するオンラインセミナー」を開催した。

本セミナー実施の背景には、2020年5月に成立、同年6月3日に公布、2021年2月1日から施行された「特定デジタルプラットフォームの透明性及び公正性の向上に関する法律(以下、透明化法)」がある。世界市場において巨大プラットフォーム事業者が躍進し、欧州 では自由な市場競争を阻まないよう、プラットフォーム事業者に対する規制が始まっており、日本においても「透明化法」が施行されるに至った。

2021年4月には大規模な総合物販オンラインモール、アプリストアを対象に運用が開始。さらに2022年10月3日からデジタル広告分野におけるデジタルプラットフォーム事業者の指定がなされ、同日よりデジタル広告分野における本格運用が開始した。

「透明化法」の運用に際して、経済産業省ではデジタルプラットフォームを利用する事業者向けに、取引上の課題などに関する悩みや相談に無料で応じる窓口(デジタルプラットフォーム取引相談窓口)を設置している。

【参考】デジタル広告分野における「透明化法」の規制対象事業者が発表に

透明化法の対象となる特定デジタルプラットフォーム提供者には、情報開示義務などが課せられる。さらに経済産業大臣に提出される報告書、先の窓口に寄せられた取引先事業者からの情報の他、消費者、有識者などの意見も聞きつつ「モニタリング・レビュー」を行って結果を公表。この結果に基づき、デジタルプラットフォーム提供者は問題があれば、自主改善の努力が求められる。

自由で公正な競争を促し、イノベーションを阻まないことを目的に、透明化法は規制の大枠を法律で定めつつ、詳細は事業者の自主的取組に委ねる「共同規制」という手法を採っている。こうした運用法を採用する透明化法の下、プラットフォーム事業者には一定の規律がかかることになるが、市場全体を健全化していくにあたっては、デジタル広告を発注する広告主側の意識啓発が必要。そうした考えもあって、今回の「買い方改革」を謳うセミナーの実施に至った。

なぜ、今デジタル広告の買い方改革が求められているのか?

セミナーには経済産業省の日置純子氏(商務情報政策局情報経済課デジタル取引環境整備室長)が登壇。「アドフラウドをはじめ、デジタル広告の取引における諸問題が顕在化しているが、広告主が広告枠の買い方を変えていかなければ、デジタル広告の品質問題は解決しえないのではないか。政府提言として『デジタル市場競争会議』がまとめたレポートでも『買い方改革』という言葉が使われている。この『買い方改革』を広めていきたい」と話した。

セミナーにはデジタル広告品質認証機構(JICDAQ)事務局長の小出誠氏、広告主側でデジタル広告取引の透明性の課題に取り組む三井不動産の松島佳奈氏(広報部・ブランドマネジメントグループ主任)も登壇し、パネルディスカッションを行った。

セミナーでは今年3月2日~7日の期間、広告主企業の400名を対象に行った意識調査の結果も発表に。デジタル広告の質の問題に対する関心を聞いた設問では「とても関心を持っている(18%)」、「関心を持っている(51%)」を合わせて69%を超えた。

また、デジタル広告の出稿の際に品質に配慮しているかを聞いた設問では「とても気にしている(12%)」、「気にしている(50%)を合わせて62%となった。

しかし、デジタル広告の品質問題への対策方法としては、最も多かったのが「自社でデジタルプラットフォームのレポート画面などで品質はチェックしている(49%)」、次が「広告代理店に任せており、品質に関しての報告も受けているので安心している(29%)」で「自社でアドベリフィケーション等の対策ツールを利用している」と答えた人は16%にとどまった。

こうした意識の背景には、デジタル広告の質の健全化に向けた対策は、広告主よりもむしろ広告代理店側で行うべきという考えが根強いことがありそうだ。実際、デジタル広告の質の健全化に取り組むべき事業者を聞いた設問では「広告代理店(59%)」が「広告主企業(41%)を上回る結果になっている。

小出誠氏は「ブランドセーフティではない掲載などの質の悪いデジタル広告の出稿がオンラインのみならず、オフラインでの売上に影響することもありうる。またデジタル広告は各種データが計測しやすいと言われるが、デジタル広告の効果が出ていれば、問題ないという思考は危険。リーチ効率の高さ=高い広告効果ではない。デジタルであっても広告が広告主の意図通りに届き、効果を出すためには、リーチだけでなく受け手側での広告の受容性の視点も重要だ。受容性を高めるクリエイティブ、受容性を高める掲出環境であるかを常に気にかけるべき」と話した。

また、松島佳奈氏からは、広告表示の質の側面も勘案したデジタル広告の健全化、コストの透明化を図るための具体的な取り組みや、アドベリフィケーションツールを利用した取組とその効果について紹介があり、「広告主が当事者意識を持ち、広告出稿を進めることが重要だと考える」と話した。

セミナーの最後に日置純子氏は明日からできる買い方改革の第一歩として、「まずは、デジタルプラットフォームが広告代理店に提供しているパフォーマンスレポートの中身について確認してみてはどうか」という具体的な取組例を示すとともに、「デジタル広告ならではの特徴、さらにはリスクを改めて認識する機会となった。今後もデジタル広告の『買い方改革』を広めていきたい」と話した。

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