※月刊『ブレーン』2023年9月号は「AIの民主化で際立つ人間・文化の視点 世界のクリエイティブ」特集です。詳細は文末をご覧ください。
6月19日からフランス・カンヌで開催された「カンヌライオンズ国際クリエイティビティフェスティバル2023」。5日目には、Film、Glass、SDGs、Titaniumの4部門が発表された。
Film部門で「Relax, it’s iPhone– R.I.P. Leon」でグランプリを受賞したAppleは、ショートリストと上位賞に選出された作品の合計ポイントが最も多いブランドに贈られる「クリエイティブ・ブランド・オブ・ザ・イヤー」も受賞。これまで3回連続でバーガーキングが受賞しており、Appleの同賞選出は初となる。
全部門共通で優れた成績を収めたネットワーク(広告会社グループ)を称える「ネットワーク・オブ・ザ・イヤー」にはDDB Worldwideが、応募作品の総合ポイントを最も多く獲得したエージェンシーに贈られる「エージェンシー・オブ・ザ・イヤー」には、今回のカンヌライオンズにおいて3部門でグランプリを受賞したアルゼンチン・ブエノスアイレス発のGUTが輝いた。
各部門のグランプリ獲得作品は下記の通り。
Film部門(2作品が受賞)
- Apple「Relax, it’s iPhone– R.I.P. Leon」
- (Cupertino)
送信したメッセージを取り消せるiPhone14の機能を訴求するCM。
- ITV X CALM「The Last Photo」
- (adam&eveDDB)
Campaign Against Living Miserably(CALM)とITVによる、自殺予防のためのキャンペーンの一環で公開されたムービー。
Glass: The Lion for Change部門
- The Korean National Police Agency「Knock Knock」
- (Cheil Worldwide)
韓国で増加している家庭内暴力に対し、被害者の通報のハードルを下げられるよう韓国警察が導入した施策。スマートフォンから112番(警察に通報する緊急ダイヤル)に電話をかけ、任意のボタンを2 回押すと会話をせずとも通報ができる。アイデアはモールス信号から着想を得た。
SDGs部門
- マスターカード「Where To Settle」
- (McCann Poland)
ロシアの侵攻を受けてポーランドへ逃げる1000万人以上のウクライナ難民に向けて、マスターカードはポーランド国内のさまざまな地域の居住地情報をまとめたプラットフォーム「Where to Settle」を立ち上げた。給与情報や不動産情報、求人サイトなどのデータに基づいており、ユーザーの職業などに適した居住地情報が提案される。ログインも不要。ポーランドの一部の大都市に難民が集まりすぎてしまうことへの対策でもある。
Titanium部門
- ツバル政府「The First Digital Nation」for The Government Of
- (The Monkeys(Part of Accenture Song))
南太平洋に位置する島国・ツバルは、最も高い地点でも約4メートルの高さしかなく、数十年後には国全体が沈んでしまうと言われている。2022年に開催された「COP27」にて、同国のサイモン・コフェ外務大臣は、海面上昇から同国の遺産を守る手段として、世界初のデジタル国家への転換を目指すプロジェクトを発表。メタバース上にツバルを再現し、国土が消失したあともその文化や歴史、行政サービスを維持できるようにする計画だ。現在の国際法では国が存在するには「明確な物理的領土」が必要とされているが、既に9カ国がツバルのデジタル国家化を承認するとしている。
Grand Prix for Good部門
- For Fondation Anne De Gaulle Association「Anne De Gaulle」
- (Havas Paris)
パリの空港名になっているフランスの第18代大統領 シャルル・ド・ゴール氏には、ダウン症の娘 アンヌがいた。彼は妻とともに、1945年にアンヌ・ド・ゴール財団を設立。神経発達症の患者の受け入れや支援を行ってきたが、その知名度は十分ではなかった。そこで同財団は2022年12月3日の国際障害者デーからの1週間、「アンヌ・ド・ゴール空港」に名称を変更。財団の知名度を高めるとともに、空港での障害者の雇用促進や受け入れ態勢の改善に繋げた。
月刊『ブレーン』2023年9月号
【特集】AIの民主化で際立つ
人間・文化の視点
世界のクリエイティブ
- ▼31人のクリエイターに聞く海外アワード2023
- 時代を映す注目事例とキーワード
- ▼海外アワードに見る
- AIとの共創の可能性
- ▼AI 活用の前に理解しておきたい
- 国・地域で異なる「文化的価値観」
- (文:渡邉 寧)
- ▼審査員と応募者
- 双方の視点からひも解く
- 企画の見方
- (八木義博)
- ▼海外アワード2023
- 日本の受賞作品
- ▼ヤングカンヌレビュー
- 受賞へのあと「一歩」は?