※本記事の内容は7月20日以前に書かれたものになります。現在、Twitterは「X」に名称を変更しています。
※本記事は月刊『広報会議』2023年9月号(8月1日発売)に掲載する連載企画「ウェブリスク24時」の転載記事になります。
文/鶴野充茂
社会構想大学院大学 客員教授
ビーンスター 代表取締役
つるの・みつしげ 社会構想大学院大学客員教授。日本広報学会 常任理事。米コロンビア大学院(国際広報)卒。国連機関、ソニーなどでの広報経験を経て独立、ビーンスターを設立。中小企業から国会までを舞台に幅広くコミュニケーションのプロジェクトに取り組む。著書はシリーズ60万部のベストセラー『頭のいい説明「すぐできる」コツ』(三笠書房)など多数。個人の公式サイトはhttp://tsuruno.net/
Twitterはコミュニケーション・ツールとして長らく定着しており、重要な情報インフラとして位置付けている組織も多い。そのTwitterの混乱で、SNS活用の見直しを検討し始めたという話をよく耳にする。実際のところ、閲覧制限などが増えて安定的に情報にアクセスできないとなると、投稿のリーチ数は下がり、モニタリングも十分にできない。主軸の広告売上も6割減というから、Twitter自体を取り巻く環境も大きく変化している。
Meta(旧Facebook)は、Twitterの乗り換え先と位置付けた新しいSNS、Threadsを7月に開始した。Instagramのアカウントを引き継ぐ形でアカウントを開設できることもあり、異例のスピードでユーザー数が増えている。Twitterの代替になるかは分からないが、今後を見据え、SNSの位置付けを確認するには良いタイミングだろう。
リアルタイムの伝達手段として
Twitterの最大の特徴は、その即時性だ。投稿した内容がリアルタイムでフォロワーに届き、また検索対象になり、それに対する反応もまた可視化される。投稿はそのままシェアされ、フォロワー以外にも情報が運ばれる。これはとりわけニュースや災害時などの緊急の情報伝達に適しており、ユーザー規模も考えると情報発信だけでなく情報収集の場としても他の追随を許さない。
しかしそれがゆえに、SNSのビジネス活用と言えばTwitterをメインに、重点的に見てきた個人・組織も少なからずいる。Twitterがこの先も安定的に使えるかが見通せなくなってきた今、そのままでは危うい。組織としてTwitter依存はもはやリスクなのだ。
SNS活用の見直しを
災害時のニュース提供をイメージしてみよう。ウェブサイトは、緊急時にアクセス集中で見られない可能性がある。Facebookはアルゴリズムで表示が
左右され、YouTubeは日常運用にややハードルがある。Instagram、TikTokはニュースと利用シーンに距離がある。そんな観点で、Twitterの対抗馬としてのThreadsに手を付けておくのは悪くない。
改めて今、メルマガの活用に注目するのもひとつの手だ。情報を求めている人たちに登録を促してメールで情報を送る。最近、自治体が豪雨や台風などに際して緊急メールを活用する例が増えている印象がある。また専用アプリの導入も選択肢になるかもしれない。
他社の公式アカウント担当者との連携や意見交換も進めたい。Twitterの混乱で見直しの必要性を感じている組織も多く、やり取りしやすいタイミングだと考えられる。これまでの知見を共有し合えば、自社に適した方法も見つかるかもしれない。
今年は関東大震災から100年を迎える年で、メディア各局は秋に向け防災関連の企画を進めていると耳にする。早めの対策は、そこで先行事例として広報できる可能性もある。
――本記事は月刊『広報会議』2023年9月号(8月1日発売)に掲載しています。
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