「ギョーザ焦げ付いた」ツイートに公式が対応 SNSで称賛された理由

複雑化する企業の諸問題に、広報はどう立ち向かうべきか。リスクマネジメントを専門とする弁護士・浅見隆行氏が最新のケーススタディを取り上げて解説する。

※本稿は2023年9月号『広報会議』の連載「リスク広報最前線」の内容をダイジェストでお届けします。

2023年5月11日に、ある消費者が「油いらないって!!!! 書いてたじゃん!!!!!! 嘘つき!!!!!!」と油を使わずに焼いて焦げてしまった冷凍餃子の写真をTwitterに投稿。これに対し、味の素冷凍食品の公式アカウントは、フライパンを着払いで提供してもらえるようにお願いし、研究開発に活用したいことを伝えました。その後の対応も含め見事だったため、クレームから一転して味の素冷凍食品を称賛するツイートが溢れる事態になりました。今回は、このケースを題材に、SNSでの問題投稿に対する危機管理について説明します。

写真・動画付きでの投稿への対応

TwitterなどSNSが普及するにつれ、消費者が商品・サービスに問題を発見したときに、写真や動画と一緒にSNSに投稿するケースが増えています。異物が混入した商品の写真付き投稿がきっかけで一時販売停止になった例もありました。また消費者・従業員が商品・サービスに関する不適切な投稿をする例も相次いでいます。回転寿司チェーンで醤油さしを舐めた高校生(当時)の動画が投稿され世の中を騒がせたケースなどが記憶に新しいところです。

SNSに投稿された内容は、拡散するスピードが速いこと、SNS利用者一人ひとりが独自のコメントを付けやすいこと、元の投稿が削除されても動画や写真のコピーなどが転載されるなどしてデジタルデータがネット上に存在し続けること、ネットニュースでも面白おかしく取り上げられることなどから、会社が対応を誤ると更なる炎上に繋がりやすい特徴があります。

そうした中、味の素冷凍食品の公式アカウントは、5月11日に焦げてしまった冷凍餃子の写真を投稿した消費者に対し、翌日にフライパンの着払いでの提供をお願いするレスポンスをしました。

炎上する可能性がある投稿に即座に対応したことはもちろんのこと、着払いでの提供のお願いが非常に丁寧で、なおかつ、「弊社は、誰でも失敗なく、羽根つきギョーザが焼き上がる感動をお届けすることを目指しております」「焦げ付いてしまうフライパンの状態を確認させていただき、研究・開発に活用させていただきたく考えております」と、お願いしている目的・意図を正直に伝えていたことが、投稿者本人にも、またこのやり取りを見ていた他の人たちにも非常に好意的に受け入れられました。

クレームに対応する投稿と与える印象

商品・サービスへの不平・不満などクレームの類の投稿すべてに対応していたらキリがありません。しかし、自社の商品・サービスの改善・改良に役立ちそうな情報が含まれた投稿には、積極的に対応した方が良い時代です。もちろん、対応するか否かを露骨に選別していることがあからさまになると、今度は差別的取扱いなどという別のクレームが出てくる可能性があります。写真や動画付きでクレームの内容が確認・把握できる場合に、会社の公式アカウントが「DMでやり取りさせていただいてもよろしいですか」などと、詳細をうかがう準備はできている姿勢を見せる反応をするだけでも、投稿者やそれを見ている人たちに与える印象は違います。

古い事例ですが、2013年6月11日には、チロルチョコの中に芋虫がいたという写真付きの投稿に対して、チロルチョコのTwitter公式アカウントが、投稿された写真から分かる最終出荷日、出荷からの経過日数を投稿し、かつ、日本チョコレート・ココア協会の公式サイトを引用してチョコレート製品の生産段階で虫の卵や幼虫が入ることは通常なく、工場を出荷してから家庭で消費する間に侵入するケースが大半であることを説明し、炎上を回避したケースもありました。

また、問題がある投稿に対応する際には、丁寧な言葉遣い、上から目線にならない、口論・喧嘩はしないなど従来のクレーム対応の基本原則に加えて、味の素冷凍食品のように目的・意図を伝えられると良いと思います。目的・意図を伝えないと「問題のある商品を隠蔽するのか」などと誤解される可能性があることと、会社が目的・意図を伝えたのに投稿者が協力してくれなかったときには、そのやり取りを見ていた人たちが「会社は改善・改良する姿勢を見せていたのに、投稿者が協力しないのは、投稿者が単に炎上狙いだったのではないか」などと理解し、無意識に会社の味方になり、会社の姿勢を理解する投稿など炎上を招かないための投稿をしてくれることがあるからです。

…続きは本誌、広報会議2023年9月号で。フライパン回収後の、調理する人の目線に立った情報提供についても触れています。

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