9月1日より募集を開始する公募広告賞「宣伝会議賞」では、2016年から中高生部門を実施しています。キャリア教育の一環としても活用されている本賞。8年目を迎え、作品が実際の広告で活用される事例も増加し、その可能性が広がってきています。
中高生部門審査員長の阿部広太郎さんがモデレーターとなり、昨年第7回グランプリの森川芽那さん、準グランプリの杉田珠江さん、特別審査員賞の本田健太さんに話を聞きました。
※本記事は5月1日発売の月刊『宣伝会議』6月号の転載記事です。
応募したきっかけは国語や社会の授業
阿部:「宣伝会議賞」に応募したきっかけを教えてください。
森川:私は国語の授業の中で取り組みました。今回が初めての応募です。今までは「宣伝会議賞」のことも、キャッチコピーのことも知らなかったのですが、授業でつくりかたを勉強しました。
阿部:森川さんは、粧美堂さんの課題「TWOOL(トゥール)でふたえメイクをしたくなるアイデア」で、「思いっきり泣いた。明日は任せた。」がグランプリを受賞しました。何本応募しましたか。
森川:粧美堂さんの課題で、2本応募しました。
阿部:2本の作品のひとつがグランプリ受賞とはすばらしいですね!そして杉田さんは同じく粧美堂さんの課題で、「ひとえにもふたえにもなれるわたし。」という作品で準グランプリです。杉田さんは前年、第6回の中高生部門で、四国銀行さんの協賛企業賞を受賞されましたね。
杉田:その時は高校入試を控えていて、推薦をもらうために何かの賞を取った方がよいのではないか、と思ったのがきっかけでした。コピーライターという仕事の存在は知っていて、小学校の卒業文集でも、「将来はコピーライターになりたい」と書いていたんです。実際、前回取り組んでみてとても楽しかったので、また書いてみようと思って再度チャレンジしました。
阿部:本田さんは、読売中高生新聞さんの「読売中高生新聞が読みたくなるアイデア」で特別審査員のSKY-HIさんが選ぶ特別審査員賞を受賞されました。作品は「世の中、この中。」です。
本田:僕も2回目の応募で、どちらも社会の授業で取り組みました。ただ言葉を考えるのではなく、自分のつくったコピーが企業のコピーとして表に出る…ということを意識してつくったことが、印象に残っています。
なんで?を繰り返しながら言葉を組み合わせていった
阿部:みなさんは、どのようにコピーを書いたのでしょうか。
本田:僕は結構本数を多めに応募したのですが、まずパッと思いついた言葉を、組み合わせたり、分けたりしてキャッチコピーにしていきました。今回の課題だと、新聞を読んだ時の利点はまず、世の中を知ることができる点。その「世の中」が紙面に詰まっている…と考えて、「この中」と続けたら、ゴロも良くて、インパクトもあるのかなと感じました。
阿部:まず課題に対して、言わなくてはいけないことを考えて、言い換えたりしていくんですね。それは頭の中で考えるのですか?
本田:はい、頭の中で完結する感じです。授業ではiPadを使っていて、(団体応募用の)応募フォームにそのまま打ち込んでいきました。
阿部:杉田さんはいかがでしょうか。
杉田:課題が難しかったので、とにかく課題に対して思いつくものを挙げていきました。このとき、「なんで難しいんだろう?」と、自分で突っ込みを入れながら書き出していくんです。通学時間に電車の中でひたすらスマホに打ち込んでいって、その中から言葉を組み合わせていきました。受賞した課題は、『TWOOLでふたえメイクをしたくなるアイデア』。なぜひとえじゃダメなんだろう?ひとえでもふたえでもかわいいのに、なんでふたえメイクをしたくなってしまうんだろう?と考えました。
阿部:「ひとえにもふたえにもなれるわたし。」は、まさにその多様性を言い当てているコピーですよね。どのくらいの数の作品を応募したのでしょうか。
杉田:ひとつの課題に対して1本か2本。中高生部門はほとんどすべての課題に応募しました。
阿部:森川さんはいかがでしょうか。
森川:国語の先生が毎年「宣伝会議賞」に応募していて。授業の最初に、「僕は一般部門で応募しているけど、中高生部門なら、中高生にしか書けない作品を考えてみてほしい」と言われたんです。それが心に残っていたので、まずは実際にTWOOLを使うシチュエーションを考えました。その様子に合った言葉を書き出したとき、似たような言葉でも意味が全然変わってくることが分かりました。いろいろなパターンを書き出してみて、一番しっくりくるのはどれだろう?と考えていきました。
阿部:受賞作品は、言葉が生まれた情景がイメージできるコピーになっていましたね。グランプリが決まった時、先生の反応はどうでしたか?
森川:すごくびっくりしていて、私以上に喜んでいました(笑)。贈賞式のYouTube配信も、職員室でみんなで観ていたそうです。
阿部:杉田さんはいかがでしたか?
杉田:ずっと結果発表を楽しみにしていました。連絡先を母のメールアドレスにしていたのですが、母からすごく軽く「受賞してたよ」と言われて…驚きと疑いの気持ちが大きかったです。贈賞式の時に会場でパネルを見て、実感がわきました。
阿部:本田さんはどうでしょう?
本田:先生から、「いい話がある!」と言われて、図書室に連れていかれました。正直、最初は嬉しいというよりも、びっくりしたというか…応募してから時間も経っていたので、何だったっけ?と、実感がわきませんでした。とてもシンプルなコピーだったので、これが賞に入っていいのかな?と思いました。
「その人がどんな想いで書いたか」を捉えていきたい
阿部:受賞したことで、なにか気持ちの変化はありましたか。
森川:キャッチコピーは身の回りにたくさんあるけど、それをじっくり見たことはあまりありませんでした。授業を通して、いろいろな思いが込められていることが分かりました。贈賞式で皆さんとお話したときも、それは実感しました。誰かのコピーを見る時も、その人がどんな思いで書いたかを、もっと深く、捉えていきたいなと思っています。
阿部:将来、言葉の仕事にかかわりたいと思いますか?
森川:今まであまり将来のことを考えたことはなかったのですが…。言葉で見た人の気持ちや行動が変化させることができるのがキャッチコピー。コピーライターのように、誰かに影響を与えられる仕事に就けたらと思うようになりました。
阿部:杉田さんはいかがでしょう。
杉田:実際に自分でキャッチコピーをつくって、贈賞式でもたくさんの作品を見て…言葉は人の心を動かすのだと、改めてその力を実感しました。私は演劇部に入っているのですが、自分がセリフで発する言葉や、普段の何気ない言葉も、大切にしていきたいと思っています。あまり明確には決めていませんが、将来はどんな職業でも、言葉を扱う仕事に就きたいです。
阿部:本田さんは受賞したあと、言葉に対する見方は変化しましたか。
本田:「キャッチコピー」という形で捉えたことは今までなかったんですが、「“やっちゃえ” NISSAN」とか、印象に残る、好きなコピーがあったことに気づきました。それと母が、コピーの句読点の使い方を褒めてくれたんです。点と丸や語尾など、少しの違いで、印象に残るかどうかにもかかわってくることを知りました。
僕は吹奏楽部なんですが、顧問の先生に「音は見えないものだから、その分、丁寧に扱わなければいけない」と言われたんです。言葉も、口に発してしまうと目には見えない。同じように、大切にしたいと思いました。
大人からは褒められたけれど、友達からの反応は…
阿部:受賞してみて周囲の反応はいかがでしたか。
森川:贈賞式の配信映像を友達も観てくれていました。学校で表彰されたのですが、それをきっかけに、あまり話したことのない人とも話す機会ができたり、いろいろな人に「すごいね」と言われたりして、嬉しかったのが純粋な気持ちです。来年も挑戦したいなと思っています。
杉田:昨年は個人応募でしたが、今年の「宣伝会議賞」は、学校の探究の授業でも取り組んだんです。私が昨年も応募したんですと言ったら、2連勝目指そう!と言ってくれて。受賞を伝えたらすごく喜んでくれました。贈賞式も配信で観てくれて、熱い先生でした。友達は…「準グランプリとったよ」と言ったらなぜかミスコンかと勘違いされちゃいましたが(笑)、びっくりしていました。
阿部:ちなみに、悔しさってありましたか?
杉田:それはなかったです!グランプリのコピーがすごく好きなので、同じテーマでこんなコピーが書けるんだ!と、驚きました。
本田:僕は学校の前に、自分の名前が入った横断幕が出て、始業式で表彰もされました。大人からは褒められたのですが、友達からの反応は少なかった(笑)。贈賞式の配信も観てねと言ったのに観てくれなかったので、もっとすごさを知ってもらいたいなと思いました。
良いコピーはメモして、たくさんの作品に触れたい
阿部:ちなみに、最近いいなと思ったコピーってありますか?
森川:先ほど本田さんも言っていた「“やっちゃえ”NISSAN」は好きです。キャッチコピーというと、表現が硬くなってしまったり、書き言葉になりがちかなと思うのですが、勢いのある感じとか、「ちゃえ」という言い方は、心に残っています。
杉田:駅とかで広告を見た時に、あの言葉良いな、と思うのですが、忘れてしまうことも多くて…良いコピーをちゃんとメモして、たくさん知ることは大事だなと改めて思います。
本田:僕もやっぱり、日産のコピーは小さい時から頭の中に残っています。身の回りを見てみると、すごいキャッチコピーがたくさんあることに気づく。体言止めとか、いろいろな表現があるんだなと実感します。
阿部:ありがとうございます。今回、皆さんの受賞を聞いて、友達や先輩・後輩で、心に火が付いた人はきっといると思います。これからも、キャッチコピーや、言葉を大切に、挑戦を続けていってください!
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