親しまれてきたTwitterのロゴ「青い鳥」が、スマートフォンの画面から消えた。運営会社を買収したイーロン・マスク氏が、自身が手掛ける事業ブランドの一つ「X」に変えたためだ。これをもってSNSの世界で一つの時代が終わったと感じた人も多かっただろう。その直前にはポスト(旧ツイート)に補足情報を付ける「コミュニティノート」が追加されて話題になった。これもSNS業界の地殻変動を象徴している。今回は一連の変化が報道や広報にもたらす影響について考えたい。
コミュニティノートへの反応
「ツイートに記事内の重要な情報が欠けています」――。7月はじめ、毎日新聞のTwitterアカウントに、登場したばかりのコミュニティノートのコメントが付いて注目を集めた。
毎日が紹介したのは「『日本人なのに不法滞在と宣告されました』国籍法問う教授の闘い」(電子版7月5日付)という記事。国際結婚でカナダ国籍を取得した人物を取り上げている。日本国籍を失った自覚がないまま「帰国」した結果、不法滞在の状態に。出国もできなくなり、日本政府を訴えたというストーリーだ。
毎日のつぶやきには記事の見出しとリンクに、「両親は日本人で、自分も日本で生まれました。教授は『家族の介護のために日本へ戻ってきたのに、不法滞在のような扱いを受けるのは理不尽だ』と思い立ち、裁判に打って出ました」という紹介文が添えられている。
Twitter上で入管法改正を巡る賛否が割れていたこともあり、この記事は論争を巻き起こした。日本政府の不法滞在者に厳しい姿勢に批判的な勢力は記事に賛同する一方、移民の受け入れ条件緩和を懸念する勢力は反発したのだ。毎日は前者の側に立っており、ネットではそれを批判するコメントが目立っていた。
そんなツイートに、記事の「不備」を指摘するかのようなコメントが付いたのだ。毎日の報道に世論誘導の匂いを感じていた人たちは、これを記事の「偏向」に対する警告と捉えて喝采した。
実際のコメントは「この人物は、自らの意思で2007年に日本国籍からカナダ国籍に移行しています。国籍法11条1項によって『日本国民は、自己の志望によって外国の国籍を取得したときは、日本の国籍を失うと規定する。』と定められています」と、リンク先の記事を読めば分かる客観情報を示しただけだ。見出ししか読まずに記事を論じている人たちに注意を喚起しているだけとも読める。しかし少なくとも、このコメントを見てマスコミに不信を持つ人々が溜飲を下げた事実は、時代の空気をよく表している。要するに、ネット市民はマスメディアや著名人に対し、「尖った意見」より「公平性」を求めるようになってきたのだ。
報道姿勢、広報にも影響が
そもそもコミュニティノート自体が、…
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