自社サイト、CRMにどう生かす カンロ、Francfranc、KANADEMONOの施策

CRMは、顧客や見込み客とのコミュニケーションを重ね、ブランドとの関係を築き上げる手法だ。コロナ禍で強いられた販売チャネルの制限や、Cookie規制によって改めて注目が高まっている。コマースプラットフォームの「Shopify(ショッピファイ)」を活用する、カンロやFrancfranc(フランフラン)、家具DtoCブランドの「KANADEMONO(カナデモノ)」のCRM運用体制は、いずれも2〜3人。それぞれのブランド特性に合わせながら試行錯誤を続けている。

 

Francfrancは2019年8月から「Shopify」を利用している。CRM運用体制は3人という。家具やインテリア雑貨を扱うインテリアショップのほか、eコマースサイトを運営する同社の課題は、店舗とECの併用による顧客生涯価値の向上だ。

写真 人物 プロフィール 武本圭史氏

Francfrancカスタマーコミュニケーション部の武本圭史氏は、19年8月以前の状況について、「顧客データが店舗やスマホアプリ、ECサイトごとで分断されていたほか、EC機能自体も古びてしまっていました」と話す。

まずはお客様のニーズに応えられるECサイトへの改修が必要だが、CRMは中長期的な施策とその改善を前提とする手法。「必要に応じて機能を取り入れられる柔軟性や拡張性の高さ、外部ツールとの接続性を重視し、『Shopify』を選定しました」(武本氏)

現在では店舗、アプリ、ECサイトを横断した顧客IDで会員データや各チャネルでの購買データを一元的に管理し、更にShopifyのカスタムレポートを用いて施策経由での流入・購入状況を可視化し、施策の意図と結果を突き合わせた検証をしやすくした。

グラフ その他
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「例を挙げると、冷感寝具を既にお持ちのお客さまに再購入をおすすめする意図で施策を打った際の分析として、その施策経由での購入金額(発生売上)はもちろん、ご購入された方はどんな方なのか、施策意図通り本当に2回目以降の購入なのかどうかをすばやく検証するということです。そこができずに単純に売上金額だけしかわからないと、本来知りたい「そもそも施策意図は間違っていなかったか」「意図を伝える上でクリエイティブやタイミングに改善点はなかったか」といったコミュニケーションの在り方や、顧客インサイトの掘り下げがしづらくなってしまいます」(武本氏)

武本氏が挙げるのは、こんな失敗例だ。トラベルグッズのプロモーションで、顧客が本来求めるタイミングを外してしまった施策だった。制限のないゴールデンウイーク(GW)で旅行需要が高まった時期に合わせて打つのが正道のところ、在庫の問題からGW前は見送りとし、在庫が整ったGW直後の施策実施とした。

「旅行中に感じるであろう課題に応えた商品だったため、GW直後のお知らせでも、『このアイテムで解決できる』と汎用的にアプローチできるのではないか、とも考えました」(武本氏)

しかし、結果は振るわず。「理屈としては、『次回の旅行に向けて、今回の旅行で感じた課題を解決できる商品です』というアプローチは正しいようにも思われますが、やはりいま必要なもの、商品がまさに役に立つタイミングでご案内することがいかに重要かということがわかりました」と武本氏は話す。実際、気温が高い日には手持ち型の扇風機や冷感商品などを配信すると好反応だったという。

グラフ その他 失敗事例

「会社として売りたいものを配信することはもちろんありますが、それが本当にお客さまのためになるのかという点を忘れてはいけないということだと思います。お客さまの立場で本当に欲しいと思っていただけるか、これはよい商品と感じていただけるか。真にお客様目線でコミュニケーションができているかどうかをCRMとしては大切にしています」(武本氏)

今後の課題はより高い好意度を持つファン化の推進だ。春先の店頭では、一人暮らし前と思しき親子の来店者をしばしば見かけるのだという。

「推測ではありますが、当ブランドを好んでいただいているお客さまが、お子さまにも勧めてくださることもあるのではないかと。ご自身のために購入される以外にも、お客さま間に波及していくような、そうしたつながりを今後も続ける、築いていくファン化をさらに進めていかなくては、と考えています」(武本氏)

「KANADEMONO」は、インテリアに特化した写真SNS「RoomClip」運営のルームクリップ社が手がける家具のDtoC(ダイレクト・トゥ・コンシューマー)ブランドだ。同ブランドは2020年7月から「Shopify」を活用している。マーケティングチームから2人がCRM運用にも携わっている。

写真 人物 プロフィール 松本好司氏

家具には、特有のCRMの難しさがある。もともと買い切りの顧客が多い点だ。「KANADEMONO」では、「ECサイトへのトラフィック獲得や、目当ての商品以外のものの購入をどう促すかという、明確な課題があります」と話すのは、ルームクリップKANADEMONOカンパニーの松本好司氏。

「当ブランドの場合、CRMを効果的に運用するには、最初のサイト来訪時の体験が重要だと考えています。もし、そこで期待を超える体験がなければ、その後どれだけアプローチを重ねても、またサイトを訪れたいとは思わないはずだからです。広告で各商品ページへのトラフィックを得ることが多いため、Shopifyで〔サイト体験を〕つど向上し、商品ページの機能やコンテンツをリッチなものにすべく、注力しています」(松本氏)

グラフ その他 良質な体験と忘れられない顔ロゴ設計

「Shopify」への移行と同時期に実施したリブランディングで、文字通り「KANADEMONO」の顔となったのが、人物の顔のイラスト。「Kanademono」のほか、「Gemone(ジモーネ)」「Favrica(ファブリカ)」「Wabika(ワビカ)」、そして飼い猫との暮らしをコンセプトにした「Nekodamono(ネコダモノ)」といったインテリアスタイルを表現するキャラクターを用意した。

グラフ その他 好みのスタイルをカテゴライズ

「企業のSNS発信はどうしてもビジネス色がついてしまいますが、人物を前面に出すことで、人間味のあるコミュニケーションになっているのではないかと思います。実際Instagramのフォロワー数は4万人ほど増え、現在では約14万人となりました。サイト上でも登場しますが、人物像から伺える嗜好性で揃えているので、性別や年齢などのデモグラフィック属性に限らず、好むスタイルをもとにデータを取れる仕掛けにもなっています」(松本氏)

「Shopify」導入後の購入単価は半年ごとに約5000円ずつ上昇し、リピート購入も同様に半年ごとに5%ずつ段階的に成長しているという。「目標はリピート割合が50%」といい、そこから逆算してCRMに取り組む。

「開封率が10%を超えるケースも見られるようになり、ブランドのあり方から落とし込む一方、こうした土台からの積み上げによる成果、影響範囲も広いと考えています」(松本氏)

カンロは3社の中では最も最近の2021年5月に「Shopify」を導入した。コロナ禍で出店先の商業施設などが営業制限を強いられた結果、同社の直営店「ヒトツブカンロ」が営業できない状況に。Webフォームと銀行振込という最もシンプルな形でのeコマースから、マーケティング機能を強化すべく乗り換えたのが「Shopify」だった。現在ではヒトツブカンロ商品だけでなく、EC専用商品も販売するEC機能を有する複合型オウンドメディア「Kanro POCKeT(カンロポケット)」として拡大している。

グラフ その他

重視するのは、どのような人がブランドのファンなのか、ファンになってくれるのはどのような人か、といった顧客データの収集と分析だ。

カンロ デジタルコマース事業本部の武井優氏は、「まだ着手したばかり」としながら、顧客データの可視化に手応えを感じつつある。コアファンがスーパーやコンビニなどの店頭でカンロの商品を何個ぐらい買っているのかといった定量的なもののほか、どのような人がファンになりやすいか、という定性データが見えてきた。

写真 人物 プロフィール 武井優氏

「カンロというブランドに対して、遊び心があるとか、センスがよいとか、将来性を感じてくれる方がファンになりやすい傾向が見えてきました。いまや当たり前かもしれませんが、当社のSNSアカウントをフォローしている、というのも重要な要素です。購入数の少ないライト層は、歴史がある、安定性があるといったブランドイメージを持っているというように、ファンステージごとの違いも見えてきました」(武井氏)

コロナ禍を経て、消費者がブランドを好きでいるか、共感できているかということが、売り上げや購入の継続につながるということをカンロという企業全体で重視するようになったという。ECに限らず、デジタル上のタッチポイントでどうファンを育成していくか。部署横断のプロジェクトを立ち上げて取組んだ

「広い視野でCRMを組み込んでいけたことは、ひとつ良かった点だと思います。企業体質にもよるのかもしれませんが、こうしたやり方もあるのではないかと」(武井氏)

今後は「イメージに合わせたコミュニケーションをしていくというのはトライしたい」と話す武井氏。ファンと共同でロイヤルティプログラムの構築も目標のひとつだ。

「公式SNS自体がファンの育成における貢献度も高いこともわかりましたので、どうすればフォローしたいと思うのか、『Kanro POCKeT』へ誘引するにはどうすればよいか、という施策も強化していきたいと考えています」(武井氏)

グラフ その他

「Shopify」の利点として三氏が口を揃えるのは、柔軟性と拡張性の高さだ。「KANADEMONO」の松本氏はCRMについて、「始められる施策はすぐにでも始めてしまっていいと思います」と話す。

「たとえばShopifyなら、『バックインストック』(再入荷通知)の機能の導入がとてもやりやすく、我々もかなり初期から取り入れました。できるところから始め、その結果がすぐ見えるという点も重要です。CRMは顧客との関係を築き続ける施策がメインなので、たった1回の施策で売り上げが何倍にも高まるということは基本的にはありません。だからこそ、やれることは着実にすばやく取り組んでいくこと、そして、ベースとなる戦略が大事です。足元でできることをやりつつ、戦略を練り上げていくことになるかと思います」(松本氏)

「本当にPDCAでどんどんシナリオを試していくことが大事」とはカンロの武井氏の弁だ。

「時間をかけるものなので、ある意味あきらめず、今後のためにいろいろ挑んでいくことが重要だと思います。カンロでShopifyを導入したのも、もし途中でやりたいことが変わっても対応できるという点がひとつの理由となりました。とりあえずと言ってしまうとよくないかもしれませんが、軌道修正の容易さと、それに対応できる機能拡充が可能かというのは、選定のポイントかと思います」(武井氏)

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Shopify Japan株式会社 マーケティング部
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