『なぜ教科書通りのマーケティングはうまくいかないのか 電通戦略プランナーが教える現場のプランニング論』2024年3月5日発売、好評発売中
前回はターゲットインサイトについてお話ししました。今回のテーマは「リテンション」です。リテンションはお客様を保持すること、つまり1回だけでなく何回も買ってもらうことですが、カテゴリーによりその目指す形は大きく異なります。では、始めましょう。
間口型か、奥行型か
第12回で、「間口奥行分析(まぐちおくゆきぶんせき)」の話をしました。例えば食品は、たくさん食べるとおなかがいっぱいになり、奥行には限界があるので、売上を伸ばすには間口をとる(購入者数を広げる)必要がある。医薬品などのPain系カテゴリーは、悩みを持たない層には買ってもらえないので間口に限界があり、奥行をとる(購入者あたり金額を上げる)必要がある。カテゴリーによって形がある程度決まってくるという内容でした。
リテンションは1回だけでなく何回も買ってもらうということですので、自ブランドのカテゴリーが間口型か奥行型かによって、何回くらい買ってもらえればいいかという目指す形が大きく変わってきます。まずは、ここを意識する必要があります。
ロイヤルユーザーが利益の大半をもたらすカテゴリー
受講生からの質問:
間口型のカテゴリーは、単価も安い食品や日用品といったようにイメージが持ちやすいのですが、奥行型はPain系以外だと、具体的にどういったものがありますか?
単価が高い車などかと思いますが、何回も買ってもらうリテンションの話には合わない気もします。
身近な例では、スマホゲームアプリです。ゲームアプリは無料で遊ぶ人(いわゆる無課金勢)が多いのですが、ごく一部に何十万円も課金する人(重課金や廃課金という言葉があります)がいて、そのたくさん課金する一部のロイヤルユーザーが全体の利益の大半をもたらす構造になっています。そうした構造のカテゴリーは、他にもいろいろあります。
アイドルや歌舞伎など芸能の分野も、公演チケットをはじめさまざまな形でお金をかけるコアなファン層に支えられているカテゴリーです。そのアイドルに多くの人が平均的に年間で数百円ずつかけるわけではなく、ごく一部の人が数万円かけたりする。「推し活」という言葉があるように、地方や海外で行われる公演にも行く。そうした動きは近年、これまで
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