受験勉強の合間に社会勉強! 高校3年生を対象に「マーケティングゆるゼミ」を開講

「私、マーケティングに興味があります」 3年生の生徒が職員室にやってきた

花王のマーケティング職から転身。私が下妻一高に赴任してまもなく5カ月が経とうしています。少しずつではありますが学校にも慣れてきました。

環境にも慣れてきたせいか、それぞれの先生の役割、人柄も把握できるようになってきました。私自身も先生方に自分の性格や人柄、今までのバックグランドを知っていただけるようになってきたかなと思っています。

そんな中、ある3年生の担任の先生に連れられ、ひとりの生徒が職員室の私のところにやって来ました。生徒に話を聞いてみると、なんとマーケティングに興味があるので、私に話を聞いてみたいとのこと。彼女は、図書室のマーケティングコーナーにあった、「消費者行動学の本」を読んだところマーケティングに興味が出て、私に直接、話を聞いてみたいと思ったとのこと。私はこの行動力に胸を打たれました。

ちなみに図書室の先生の協力を得て、図書室内にマーケティングコーナーを設置した話は、以前の連載で紹介しています。

私が高校生だった頃、副校長や教頭先生に、こんなふうに話を聞きに行く勇気があったでしょうか。絶対になかったです。恥ずかしながら校長先生や教頭先生が誰なのかをあまり覚えておらず、もし知っていたとしても、彼女のような行動は取れなかったと思います。素晴らしい生徒に出会えたと思いました。

またこの影の立役者として、3年生の担任の先生の役割も大きいと思っています。その理由は、私と学生を繋ぐ、まさに架け橋的な役割を担ってくれたからです。この先生は生徒からの信頼も非常に厚く、国語の教諭と進路指導をされています。数々の学校を経験されただけあって経験豊富、人間力が素晴らしい先生です。その先生が、私のバックグランドに興味を持ってもらい、生徒と私を繋いでくれたのです。

この先生に話を聞いてみると、大学選びや大学の学部選びをするにあたり、私の今までの仕事の経験談を聞いて、今後の進路選択の参考にしたいとのことでした。マーケティングとは具体的にどのような仕事なのか。イメージが湧かないようでした。そこで、私の花王でのマーケティング実務経験が、学生の進路選択の参考になれば非常に嬉しいことだと思い、喜んで受けさせてもらいました。

ゆるーく始めた学内マーケティングゼミ、参加者が徐々に増えて4名に

まず私が早速考えたことは、生徒がリラックスして参加できる“場作り”をすることでした。「あまり気をつかうことなく、ゆるーく会話をしながら勉強する」。こんな目的から、“マーケティングゆるゼミ”と名付けました。マーケティングに興味がある他の生徒3人も加わり、生徒4人と先生でお昼休みに多目的教室でランチをしながら、第1回マーケティングゆるゼミを実施しました。

高校3年生は、受験に向けて、夏休み期間中でもほぼ毎日学校に来て課外授業を受けています。そんな忙しい3年生ですが、受験勉強とはちょっと違う話を聞くことで、気分転換や、進路選択の参考になればいいなと思い、ゆるーく始めてみました。

写真 人物 集合 生井秀一先生とマーケティングゆるぜみ参加者

ランチタイムを利用して始めた「マーケティングゆるゼミ」。

私は生徒と直接話す機会はあまりないので、非常に貴重な機会です。まず私が生徒に伝えたかったのは、社会に出ると、こんな仕事があるという具体的な話と、学校の勉強と社会を結び付けて、生徒の進路の選択肢を広げてあげることです。

私は大学に行くことが目的になってしまっている現状に私課題感を持っています。高校時代にいろいろな選択肢の中から自分のやりたいことを見つけて欲しい。選択肢はひとつじゃない。自分の人生をかけて取り組めることを見つけて欲しいと思います。そこで大切なのは、大学卒業後に自分が社会に出て、なにをやりたいのか。これを見つけること。大きな志と夢を持って欲しいと考えています。

高校生ではまだピンと来ないかもしれませんが、今までのように、いい大学に行って、大企業に入れば安泰という時代ではなくなっていると感じています。だからこそ、早めの準備が自分の人生を左右すると思っています。そんな私の経験を踏まえたことを、生徒たちに少しでも伝えられたらいいなと思っています。私の願いは、妻一卒業生は社会で活躍する人材を育てることです。この小さなゆるゼミというコミュニティ活動から、学校全体へ広げる活動を引き続き行っていきたいと思います。

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写真 人物 集合 生井秀一先生とマーケティングゆるぜみ参加者

中央にいるのが、生徒と私をつないでくれた3年生で担任を受け持つ先生。卒業後の進路指導にも力を入れて取り組んでくれています。



生井秀一(茨城県立下妻第一高等学校・附属中学校 校長)
生井秀一(茨城県立下妻第一高等学校・附属中学校 校長)

花王の販売子会社に入社し、営業部門で大手流通チェーンを担当。ヘアケアブランドのマーケティングを担当した後、2015年にECの営業マネジャーとなり、花王のECビジネスを推進。2018年に全社DX推進をするプロジェクト型組織の先端技術戦略室に異動。2021年にDX戦略推進センターを設立、全社DX戦略を担当した。過去3度、社長賞を獲得。花王グループのDXを推進し、ECビジネスの構築などの推進役を担う。

2023年に茨城県とエン・ジャパンが実施した「ソーシャルインパクト採用」において、茨城県内の中高一貫校・専門高校の「校長」を教員免許不問で公募するプロジェクトに応募。1645人の応募者のなかから選ばれ、花王を退職して2023年4月から民間出身者の校長として茨城県立下妻第一高等学校・附属中学校に着任。

生井秀一(茨城県立下妻第一高等学校・附属中学校 校長)

花王の販売子会社に入社し、営業部門で大手流通チェーンを担当。ヘアケアブランドのマーケティングを担当した後、2015年にECの営業マネジャーとなり、花王のECビジネスを推進。2018年に全社DX推進をするプロジェクト型組織の先端技術戦略室に異動。2021年にDX戦略推進センターを設立、全社DX戦略を担当した。過去3度、社長賞を獲得。花王グループのDXを推進し、ECビジネスの構築などの推進役を担う。

2023年に茨城県とエン・ジャパンが実施した「ソーシャルインパクト採用」において、茨城県内の中高一貫校・専門高校の「校長」を教員免許不問で公募するプロジェクトに応募。1645人の応募者のなかから選ばれ、花王を退職して2023年4月から民間出身者の校長として茨城県立下妻第一高等学校・附属中学校に着任。

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