江戸時代の京都で創業した老舗お米屋の八代目儀兵衛。2006年に会社組織を設立し、お米の通販と飲食・卸業をメインに事業展開している。八代目儀兵衛 取締役CMOの神徳 昭裕氏が、ECを中心に新たなブランド体験づくりに挑む、同社の取り組みを紹介する。
米の消費量は年間10万tベースで減少。「お米離れをゼロに」がミッション
本日は「リアルとデジタルでブランド体験をどうデザインするか」をテーマに話をさせていただきます。
まず八代目儀兵衛について簡単に説明をさせていただきます。八代目儀兵衛は京都の地で江戸時代に創業したお米屋です。代々受け継いだ技術を強みに2006年に八代目儀兵衛という会社を設立いたしました。お米の通販と飲食・卸業がメインの事業です。
お米業界を取り巻く環境ですが、ご存知の通り、直近年間10万tペースで消費量が減少しているような状況です。お米離れの深刻化、それによってお米余りによる価格の低下、それから農業従事者の高齢化であったり、離農が全体の課題となっています。
当社としてはお米のおいしさ、素晴らしさを世の中に広めることが使命だと考えています。今年「GIHEY VISION 2030」を設定しました。まずミッションは「儀兵衛を通じて世界中にお米を広げる」、ビジョンは「儀兵衛を通じて感動体験を増やすことで、お米離れをゼロにする」。こういったミッション・ビジョンを今期2030年に向けて取り組み始めています。
八代目儀兵衛の感動体験は「お米離れをゼロ」にするための手段
次に当社の技術及び感動体験について説明します。まず技術になりますが、大きく4つあります。
- ①お米の目利き力:毎年全国各地200種類以上のお米を自分たちの五感で確かめ、本当に美味しいお米だけを厳選しています。
- ②精米:お米の甘さを残しお米に負担をかけない低温低速で精米しています。また年間通して一定の温度で玄米の温度管理もしています。
- ③ブレンド:美味しいお米を掛け合わせることで味の深みが増すブレンドを行っています。
- ④こだわりの炊飯:直営の飲食店舗の総料理長が、お米の保管・研ぎ方・炊飯方法の研究を重ね独自の方法を生み出しました。店舗では土鍋で炊いたご飯を提供しています。通販で買われたお客様には必ず炊飯の方法をチラシで同梱しています。
次に八代目儀兵衛の感動体験についてお話ししたいと思います。当社には「お米離れをゼロ」にするという目標があるのですが、それを達成するための手段として今展開しているのが、この四事業になります。
- ①通販:こちらは写真の通り、内祝いや中元歳暮でご利用いただいているギフト商品です。結婚祝いや出産祝い、最近多いのは香典返しです。ご自宅用のお米の通販事業も展開しています。
- ②飲食事業:土鍋で炊いた究極のブレンド米「翁霞」を京都の祇園と東京の銀座の直営店で提供しています。
- ③お米の卸事業:こちらはミシュランガイドに記載されている料亭であったり、ホテル、レストラン。その他にもラーメン店、焼肉店とか、あらゆる業態での採用実績があります。こちらの事業では飲食店の好みによってブレンドを変えて納品しています。
- ⑤ソリューション事業:最近、強化している事業です。ソリューションに関しては他社が提供するご飯の品質を向上するためのお手伝いをするといった事業で、直近ではセブン-イレブン様の「八代目儀兵衛監修」おにぎりシリーズ全10種の監修をしています。
それからお米だけではなく例えば日立様の炊飯器「ふっくら御膳」につきましては、炊飯の技術を使って炊飯器で自宅で炊いても、当社の店舗で土鍋で炊いたような味になる技術を搭載した炊飯器の監修をしています。
このように当社だけはなかなか広がらない「お米離れをゼロにする」といった活動を、他社様のお手伝いをするという形で今後も強化していきたいと思っています。
通販での購入のきっかけは通販以外の場所での体験
今回のテーマにも関連していますが、「体験場所の重要性」について紹介したいと思います。当社では通販で購入いただいたお客様に「通販での購入のきっかけ」についてアンケートに答えてもらっています。
最近の回答は以下の通りです。
- ①お米ギフトを貰った
- ②自宅用のお米を購入した
- ③祇園・銀座のお店を利用した
- ④儀兵衛のお米を使った飲食店を利用した
- ⑥セブン-イレブンのおにぎりを食べた
調査の結果、通販以外の体験が通販での購入のきっかけになっていたことで、「体験場所」の重要性が分かりました。
また認知経路を調べるために同じアンケートの中で、「八代目儀兵衛のWebサイトは何で知りましたか」という質問に対する回答が以下です。
- ①インターネットの検索エンジン・広告
- ②Instagram、その他SNS
- ③楽天・Amazonなどのモール
- ④以前ギフトで貰った、儀兵衛の飲食店を利用した
- ⑤家族・知人の紹介
この回答を見て、リアルとデジタルの認知経路はバランスが必要だと考えました。
次にお客様から寄せられた声やInstagramへの投稿をお伝えします。香典返しでお使いになったお客様は「カタログ請求した際にお試しのお米が同封されていて、食べたら美味しく、またパッケージも品が良くて気に入ったので購入を決めました」という声も。当社ではカタログを請求していただいた方に、お米を2合同封させていただいており、お客様自身が体験してギフトを送るきっかけにもつながっています。
「リアルとデジタル」うまく組み合わせて商品の認知・体験につなげる
当社は「お米離れをゼロにする」という大きなミッション掲げて事業を展開しています。それゆえ「目利き・精米・ブレンド・炊飯」といった八代目儀兵衛ならではの技術にこだわってきました。
だからこそ、いかに食べていただけるか。体験してもらえるかが重要です。ただお米の難しいところは、見た目では差別化できないところです。また美味しさを伝えるのも非常に
難しい。そういったところもあり通販においては色とりどりの風呂敷に包んで展開することで注目していただき、それが購入のきっかけとして機能するような仕掛けもしています。内祝いの場合は1人のお客様が10件~20件送りますので、そういったところで体験が広がっていくのが通販の特徴です。
飲食・卸事業では、直営2店舗のほか、全国に当社のお米をご利用いただいているお店が約900店舗ありますので、実際に食べていただく体験の場としてオフラインの強化をしています。
ソリューション事業は、今後も強化をしていくのですが、他社様のお米・品質を改善していくことで、より多くのお客様に今まで持っていたお米・ご飯の考え方が変わるような、そういったソリューションを提供しております。あくまでこの事業は「お米離れをゼロにする」というミッションを達成するための手段として展開をしています。
最後に本日のテーマである「リアルとデジタル」に関して言えば、どちらかだけでも十分ではないと思いますし、うまく組み合わせることで商品を知っていただいたり体験していただくことが非常に重要だと考えています。
八代目儀兵衛
取締役CMO
神徳 昭裕氏
新卒でカタログ通販のニッセンに入社。黎明期のECサイト立ち上げを経験。モバイルEC責任者としてサイト運営、アプリ開発を担当。2016年WILLERに入社。国内旅行・バス予約サイトのEC責任者。2019年江戸寛政から続く京都の老舗米屋「八代目儀兵衛」のCMOに就任。2021年、取締役に就任。