月刊『販促会議』で連載している「ヒットの仕掛人に聞く!」。話題のヒット商品・サービスがヒットに至った経緯を、開発の背景やプロモーション戦略からひも解きます。
今回は、2022年秋に発売したサントリー「ビアボール」。ビールを炭酸水で割って飲むという、ビールの新たな楽しみ方を提案する商品だ。飲食店での先行販売やTikTokの活用など、「楽しさ」を訴求し、販売数を伸ばす「ビアボール」のヒット仕掛け人に迫ります。
――本記事は、月刊『販促会議』8月号 連載企画『ヒットの仕掛人に聞く!』に掲載されています。
■商品情報
商品名:ビアボール 334ml小瓶
希望小売価格:768円(税込)
主な販路:スーパー、コンビニエンスストアなど
サントリー
ビールカンパニー
マーケティング本部
イノベーション部
佐藤勇介氏
2009年入社。主に家庭用・量販店向けの営業、飲食店向けの業務用営業を経て、17年に新商品開発グループへ異動、新商品の開発に携わった。21年に新設されたイノベーション部に異動となり現職に。新商品や新規事業の開発を担当している。
楽しさのある商品でビール市場の再活性化を目指した
──「ビアボール」開発の背景を教えてください。
2021年の4月に立ち上がったイノベーション部はお客さまにビールの美味しさや楽しさをもう一度しっかりと伝え、苦戦が続くビール市場の再活性化をミッションにしています。「ビアボール」の開発における、着眼点のひとつがコロナ禍。在宅時間が増えたことで、DIYの流行など、自分で工夫をして生活を豊かにするという意識が芽生えたのではないかと考えたのがきっかけでしたね。
当社製品で言うと、ジャパニーズジン「翠(SUI)」や「こだわり酒場のレモンサワーの素」などの、割って楽しむお酒の市場が拡大していたこともあり、割ることで自分好みにつくって楽しむことができるビールがあればもっとお酒時間を豊かにできるのではないかというアイデアにたどりつきました。
また、若者やビールへの関与度が低い人に、もう一度ビールとの接点を持ってもらいたいという思いもあります。現在、ビールメーカー各社は多くの銘柄を販売していますよね、飲み比べるとそれぞれ素材、製法の違いから商品ならではの特長的な味わいがあり、その違いを感じることも楽しみの一つだと思っています。
ただ、ビール関与度が低い層にとっては味の違いを明確に伝え、感じてもらうことは少し難しいと思っています。実際、アンケート調査では、各社のビールの味わいの違いが分からないという声もありました。中でも着目したのは、ビールは「楽しくない」という声。「楽しくない」の真意は、ビールは決められた味や量、どことなく同じトンマナのパッケージ…と遊びが少ないこと。また、ぬるくなると美味しくなくなるからこそ、早く飲み切らないといけない、焦らされる、といったイメージから想起されるものだと思っています。
そこで着目したのが、ビールにDIY的要素を取り入れること。好きな濃さ、量で自分好みに自由につくることができる「ビアボール」が誕生しました。
体験する機会をつくり、時流を生み出すための戦略
──新商品のプロモーションでは、どのようなことをされましたか。
2022年6月21日に「ビアボール」発売の記者発表を行いました。その後、7月に飲食店向け商品を数量限定で先行発売、10月に飲食店向けの全国展開を経て、11月に家庭用商品を発売と、通常の商品よりも家庭用の発売までにあえて時間をかけました。
その狙いは、今回のターゲットとした若い世代が、モノよりもコトを重視していると考えたからです。市場に向けた新しい提案となる商品だからこそ、お客さまとの接点を増やし、体験機会を設け、世間の関心を高め「最近ビアボールって話題だよね」という時流をつくることを目指しました。
──TikTokの「サントリービアボーラーズ」も特徴的な取り組みですね。
TikTokは短く、動きがあるので「ビアボール」をつくる様子を楽しそうに見てもらうには効果的な手段だと考えました。
ビアボーラーズのメンバーはTikTokerを中心に選んでいるのですが、人選は単純にフォロワー数の大小ではなく、その人にコアなファンがしっかり定着しているかどうかを重視しました。投稿を自発的に見たり、そこで発信されている情報を積極的に取りにいくようなフォロワーの存在は、その先の拡散にも影響すると考えたからです。
――本記事の続きは、月刊『販促会議』8月号でお読みいただけます。
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