「発信したくなる」仕掛けをつくる 宮崎県小林市の広報戦略

自治体における広報の役割とは?宮崎県小林市の広報担当者に、広報施策の背景や効果をもとに、同市の広報戦略や広報に対する思いを聞きました。

※本記事は、『広報会議』8月号(6月30日発売予定)に掲載している連載企画「自治体広報の裏側」の転載記事です。

小林市役所
総合政策部 地方創生課
主幹/プロモーショングループリーダー
佐藤友和氏

 

小林市は過去に「ンダモシタン小林」という動画で一躍“時の自治体”となりました。多くのメディアで取り上げられ、動画再生回数は300万回を超えるなど大きな話題に。その後も主に市外を意識した、単発的なプロモーションを展開してきましたが、定量的、定性的な成果というものは、初期の動画以降なかなか見出せない状況が続きました。過去の動画を意識するあまり、“バズらせる”ことを狙った、市外を意識したプロモーションへ比重が傾き、市内を意識したプロモーションへの意識が欠落していたことで不調和音が生まれていたようにも思います。

吉野北人を起用した15本の縦型ショート動画

このような課題がある中、本質的な部分に立ち戻ってプロモーションを再構築しようと自らの手で戦略・戦術を整理。行政だけで情報発信を担うより、小林市とかかわる人と共に市の魅力を発信した方が情報を拡散でき、さらに、人々を情報発信側へ引き込むことで、当事者意識や郷土愛醸成が期待できると仮説を立てプロジェクトの検討を進めました。こうして2022年にスタートしたのが「ハッシンコバヤシ!!」プロジェクトです。

プロジェクトでは、“市外向け”と“市内向け”のプロモーションを連動させ、市民や市とかかわりのある人と小林市が一丸となりムーブメントを起こすことを意識。初期のフェーズでは、まずは市民や近隣住民に興味を持っていただくため、市民をキャストに迎え、おじさん3人組がSNSで小林市の魅力を発信しようと奮闘するコンセプトムービーを自主制作しました。

2023年6月には小林市出身でTHE RAMPAGEのボーカルである吉野北人さんを起用した“萌え動画”を15本公開。若年層の動画視聴の動向を鑑み、縦型ショートタイプを採用しました。著名人の起用により市へのファン化が期待できる潜在層にもアプローチしています。

また、学生の視点で小林市の魅力を発信する「高校生記者クラブ」も立ち上げ、市の情報への関心度が低い若年層も関係者として巻き込む工夫も行っています。「ハッシンコバヤシ!!」プロジェクトにより、公式として運営している各SNSの合計フォロワー数はプロジェクト開始以前と比較し、6274人から2万4257人になり約3.9倍に増加。県内メディアに加え、国内キー局をはじめ各種メディアでも取り上げるなどの反響もあります。

小林市では、市政や行政活動に対する正確な情報を市民に伝える役割は総合政策部企画政策課が、そして市の魅力を多くの人に知ってもらいファンになっていただくきっかけづくり(広報戦略の策定)を私たち地方創生課のプロモーション担当が担っています。

広報戦略を担う立場としては、市にかかわりを持つ人や興味関心層が、自発的に小林市の情報を発信したくなる機運を醸成することが大切で、自治体は黒子となりその仕掛けづくりを行うことが重要な役割だと捉えています。今後も「ハッシンする人=当事者人口」を増やすべく楽しさの共有を意識し、仕掛けをつくっていきます。

CASE STUDY
「ハッシンコバヤシ!!」プロジェクト


 

プロジェクトでは、発信する人の数を増やすための仕掛けづくりを実施。吉野北人を起用したプロモーションでは、縦型ショート動画と連動し、参加型のキャンペーンを複数実施。小林市や都市部で開催する期間限定ポップアップストアでは、動画制作時のオフショット写真の展示、限定グッズの販売などを行う。

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広報会議2023年8月号

「“知られていない、伝わらない”を解決 SNS」特集

入門編
SNSアカウントの運用を任されたら押さえておくべき10のこと

人気投稿ケーススタディ
川崎ブレイブサンダース/TOTO/サンロード/濵田酒造/三菱UFJ銀行/YKK AP

3年でフォロワー数は9倍以上
注目アカウントに学ぶ投稿術
わかさ生活

“ショート動画で”バズを生み出す3つの仕掛け
セカイ監督
など




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