ピタゴラ装置の制作は1カ月半以上
「雪肌精 SAVE the BLUE」というナレーションに合わせ、転がり始める青いボール。ボールは、ドミノが倒れるとグラスに木が植えられていく装置や雪肌精のボトルが倒れると珊瑚が現れる装置などの中を、心地よい音をたてながら通過していき、地球を青や緑で満たしていく⸺。
これはコーセーが「雪肌精」ブランドを冠し2009 年から取り組んできた環境保全プロジェクト「SAVE the BLUE」の活動を伝えるWeb 動画(1分47秒)だ。7月に公開されたもので、監督は梶間亮徳さん。企画から演出・プロデュースまで、制作のほとんどを担った。
コーセーからのオリエンでは「海に対する意識の向きやすい夏の時期に、海外の方が見ても活動が伝わるような動画にしたい」という要望があった。「最初に考えたのは、この素晴らしい取り組みを、いかに見た人が受け取りやすく伝えるかということでした」と梶間さん。社会性の高いテーマの動画は、一歩間違えると敬遠されてしまう可能性もある。そうした懸念を払拭し、1 分半を超える尺の動画でも最後まで見てもらえるよう、ピタゴラ装置を活用した動画を提案した。環境や言語を問わず視覚的に面白さが伝わるような、“魅せる”動画を意識している。
「老若男女、全ての人に届けるつもりでつくりました。ナレーションを子どもの声にしたのも、これが未来に向けたプロジェクトであり、大人にも子どもにも関心をもってもらうことを目指したからです」。
企画が通ってから装置の完成まで、1カ月半以上を費やした。撮影前には装置に合わせてカメラの動きを何度も確認。ナレーションと動きが合致するよう装置や仕掛けを細かく調整していった。
長回しノーカットで見せることにこだわったため、ナレーションの読み尺と装置の流れの一致は特に気を使った。「仮のナレーションを読みテスト動画を編集に入れ込みつつ、ドミノの数や装置を何度も調整しました」(梶間さん)。
最終的に計33 回のリテイクの末に完成。撮影後はカメラマイクの音をリファレンスに、リアリティのあるSE を効果的に施すことで、聴覚からも没入できるようにするなど五感に訴える工夫も加えた。
今後はイベントなどでも、この装置の展示や動画の公開を予定している。
梶間亮徳(かじま・あきのり)
多摩美術大学卒業後、2010 年東北新社入社、その後アマナを経て、2022年よりAMBL に所属。クリエイティブとプロデュースのハイブリッドを武器に肩書や媒体を問わずに活動。東京と上海をベースに、国内のみならず、グローバルでのクリエイティブも多く手がける。
スタッフリスト
- 企画制作
- AMBL
- CD+企画+Pr+演出
- 梶間亮徳
- 企画+PM
- 大澤愛花、岡安雄亮
- I
- 稲葉彩
- 撮影
- 大木雄介
- 照明
- 菊池直輔
- 操演
- 茅沼光明、木村正
- 美術
- 山田憲
- 編集
- 吉岡茂樹
- カラリスト
- 田中基
- SE
- 成田明人
- MA
- 福森彩奈