渋谷の若者文化を牽引してきたパルコ。2023年に、パルコの起点とも言える渋谷パルコが創業50周年を迎えたことを機に、かつての「宣伝部」という名称を復活させた。なぜ、いま「宣伝部」という名称を復活させたのか?今日における「宣伝部」の役割とは?
パルコ 宣伝部 部長の手塚千尋氏が解説します。
渋谷パルコ創業50周年で宣伝部という名称が復活
本日は「パルコに学ぶSNS・リリースを使ったヒット企画の作り方」についてお話をさせていただきます。
まず、最初に私の自己紹介から。私は現在、パルコの宣伝部の部長を務めています。2006年に新卒でパルコに入社。2010年からエンタテインメント事業部の開発チームに所属。劇場・音楽・出版・映画などのコンテンツを作る部署で、新規事業の立ち上げに携わったのち、2016年から渋谷パルコのリニューアルオープンプロジェクトに携わり、新生渋谷PARCOのテナントリーシング、プロモーション企画などを担当しました。
その後2022年より宣伝部に所属。パルコ宣伝部は旧プロモーション部という名称でしたが、渋谷パルコがオープンから50周年を迎えた今年、10年ぶりに宣伝部という名称が復活しました。今年の広告のテーマである「伝統と革新」を掲げ、広告の制作、営業企画、デジタルプロモーション、SNS、リリース配信、展覧会などのミュージアム運営、媒体ビジネス、クラウドファンドが主な事業内容となっている部門です。
「時代にあった共感」「誰かに言いたくなるような仕掛け」「ちょっとした違和感」
それでは本題に入りたいと思います。まず、今日のテーマである「バズる企画」とは何なのか、からお話ししていきます。
「バズる企画」には大きく3つのポイントがあると思います。
- ① 時代にあった「共感」がある
- ② 誰かに言いたくなるような仕掛けがある
- ③ ちょっとした違和感がある
私は特に3つ目が、一番重要だと思っているのですが、ある企画の中で違和感があるかどうか、これは私たちがよく「引っ掛かり」と表現します。「これ何だろう?」みたいな、ちょっと好奇心をくすぐるようなネタが入っているのかが、すごく重要になってくると思います。その辺はリリースを配信する時に、「媒体の方々が違和感を抱けるか」が重要になってきますので、私は特にその点を意識して企画を作っています。
いま、お話したことを「マツケンサンバPOP UP SHOP」の実例をもとに説明します。2022年の年末に俳優の松平健さんの大ヒット曲「マツケンサンバⅡ」をテーマにした期間限定POP UP SHOPを展開致しました。ショップには全64種類の「マツケンサンバ」オリジナルグッズを販売。店内には松平健さんが実際に着用していた衣装などを展示しました。
企画自体は2022年12月17日にスタートしました。まずリリース日は2022年の12月7日です。私が入社した頃は、雑誌メディアの校了のタイミングに合わせて「1カ月以上前にリリースは出すように」と指示されたものですが、現在のように情報が溢れる時代においては「リリースは約2週間前」をめどに配信しています。また曜日は受け手側のメディアの都合を考えて、金曜日∼月曜日を避けて、火曜日、水曜日、木曜日にしています。
今回メディア内覧という形で松平健さんにご出演いただけることになっていましたので、イベントはオープンの前日に設けました。メディアの誘い方がイベントの成功の要因になります。
次に実際の企画の中身について説明していきたいと思います。商品のラインナップを見ていただくと、かなり面白い中身になっていると思います。ここでインパクトがあるものを出せるかどうかというのも重要になっていて、「ちょっとした違和感」「誰かに言いたくなる商品」が、ここに詰め込まれていると思います。特に商品に関しては、一番左にあるような、マツケンさんの髪留めですが、インパクトがあり、画像で人に見せたくなる、そういった仕掛けを盛り込みました。
松平健さんのファン層はおそらく50代以上の方がメインだと思いますが、今回パルコとの企画ではターゲットを20代の女性に設定しました。かなり挑戦的なものであったと思いますが、「誰かに言いたくなる」ような仕掛けであったり、「違和感」が創出できた企画だったと思っています。
企画を作るのと同じぐらいの力で情報発信に取り組む
続いて、情報発信についてです。ひとつはプレスリリースを配信すること。もうひとつはSNSを配信することです。意識していただきたいのは企画を作るのと同じくらい情報発信にも力を入れていただきたいと思います。
次はリリース内容に関するポイントです。日々多くのリリースに接する記者の方の目に留まるようにリリースのポイントは6項目あります。①目を引く圧倒的なビジュアル、②簡潔なタイトル、③記事を書きやすくする詳細情報、④写真はなるべく多く、⑤イベントの告知は赤字で目立たせる、⑥内覧会の申込書を付けるという点です。
写真に関しては、勝負写真1枚用意します。その他の写真も準備するのですが、媒体の方によると写真があるとクリック数が増えるので、なるべく多く欲しいそうです。また今回はマツケンさんがご出演頂けるという非常に大きなトピックがありましたので、そちらは赤字で目立つように記入しました。
「告知のタイミング」「リツイート数が重要」「協業相手の発信」がSNSのポイント
続いて、SNSの仕掛け方に関して、です。リリースと同時にSNSを使って告知していきます。ポイントは①告知のタイミング②ツイッターが重要。特にRT数が重要③勝負写真と企画URLを必ず入れる③協業相手からも発信していただくという点です。
当社はもちろんInstagramにも力を入れていますが、Instagramはブランディングで使う一方で、企画の告知・バズを生むためにはTwitter(現・X)を使うという使い分けをしています。
リリース同様、重要なのは勝負写真です。また企画の詳細ページ企画のURLランニングページに、必ずリンクを設置すると、リツイートをされたときに利いてきますので重要です。また今回の企画は松平健さんと協業なので、相手からも発信してもらうことも重要でした。
具体的に松平さんとの企画での取り組みについて紹介していきます。まず一番左ですが、企画の告知ツイートです。ここでリツイートがどのくらいされたのかというのが重要ですが、結果として1.5万リツイートされて大きな話題を作ることができました。
FNS歌謡祭の日にSNSのリリースを出したこともあり当日のTwitterのトレンド一位がFNS歌謡祭で二位が「マツケンサンバⅡ」となり、これをツイート検索されている方がパルコのツイートに辿り着いて、そこで商品などを知ってさらにリツイートが増えたという結果となりました。
FNS歌謡祭のタイミングでSNSリリースをした結果、メディア内覧会にテレビ4局が参加してくださいました。ツイッターでのバズを、テレビ関係の方々が見てくださり「大きなムーブメントがきている」と捉えていただきました。さらにそのテレビパブリシティがパブリシティを呼び、最終的に8番組に取り上げられて、Webで200媒体以上といった形で非常に大きなバズを作ることができました。
実際、POP UP SHOPは連日入店列ができるぐらいの大盛況となりました。お客様の客層も20代女性がメインと狙い通りのターゲットに情報を届けることができました。
今回は、新生「宣伝部」が取り組む、新しい時代のプロモーションについてお話をさせていただきました。企画を作るのと同じぐらいの力でプロモーション活動も行うことが非常に重要であるという実例を松平さんとの企画を例にお話させていただきました。
パルコ 宣伝部 部長
手塚 千尋氏
2006年、パルコ入社。パルコ・シティ(現パルコデジタルマーケティング)出向、エンタテインメント事業部を経て、デジタルプロモーションを学び、新規事業としてコラボカフェ「THE GUEST cafe&diner」を立ち上げ。その後2019年にリニューアルオープンした渋谷PARCOプロジェクトに参加し、ビルプランニング、リーシング、オープニングプロモーションを担当。2022年より宣伝部、現職。