生活者インサイトに向き合うプロマーケティングDXの挑戦
電通グループの社内横断チームである「MCx」は、メディア部門各局、コンテンツ部門、スポーツ部門を中心に、デジタルマーケティング、ソリューション部門などの担当者約80名で組織されている。同グループが保有する知見とソリューションを掛け合わせることで、複雑化する広告主の事業課題、社会課題解決に貢献するためのソリューションを提供することが目的だ。
「発足の目的は、ひとつにはマーケティングのDXを行うにあたり、グループ内の各メディア、システムにおいても人的リソースにおいてもノウハウや知見が閉じられている現状がありました。例えば出版部門でよいソリューションが開発されても、それがテレビやOOHに展開されていないことも。連携を強化することで、組織内の知見を共有することにつながると考えました」(布瀬川氏)。
もうひとつの目的が、メディア側の変革をより強力に支援すること。昨今、マスメディア企業においても広告ビジネスのDXは喫緊の課題だ。「放送局や出版社など、多くのメディア企業がデジタル化を推進しています。まずは、いかにデジタル空間で生活者と接点をつくるか、という課題に始まり、広告に限らず新しいマネタイズ手法の開発も求められています。多種多様なメディア企業にパートナーとしてかかわってきた当社の各局メンバーが集まることで、業界を超えたベストプラクティスの共有も可能になると考えました」(布瀬川氏)。
AX、BX、CSNの3チームでステークホルダーとの連携を強化
社内の広告、メディア、コンテンツのプロフェッショナルが集結する「MCx」は、大きく「AX」「BX」「CSN」の3つのチームで構成されている。
まず庄司泰輔氏がリードするAX(Advertising Transformation)は、広告コミュニケーションの高度化・深化を推進するチームだ。
「昨今の広告主のニーズは、統合コミュニケーションにある、と考えています。生活者視点で考えた場合、テレビ、デジタルといった広告業界の定義は意味を持ちません。生活者に最良の情報コミュニケーション体験を提供し、気持ちや行動の変化を精度高く捉えながら、適切なタイミングでの情報発信を可能にするための仕組み・システムを提供していきます」と庄司氏は話す。
そして伊藤弘和氏が牽引するBXチームでは、メディア・コンテンツ企業と、メディアとしての「面」づくりだけではなく、新しい生活者向けのコミュニケーション事業を共創していくパートナーとして活動していく。
「近年、メディア企業がコンテンツメーカーとしての役割を持つようになっています。そこに伴走して、生活者がより楽しい体験に参加したり、今までにないベネフィットを受け取れるよう、外部企業とも連携して、新しいテクノロジーを活用したソリューション開発に取り組んでいます」(伊藤氏)。
生活者の課題を逐次、捉えている同グループだからこそ、新たなコンテンツデリバリーの在り方が可能になっているのだ。
エンターテインメント・コンテンツの企業によるソリューション活用の高度化を担い、顧客体験の変革を起こすのがCSNチームであり、こちらは新居氏がリードしている。長年、同グループが自主事業として取り組んできたエンターテインメント事業を基盤に、生活者の気持ちを動かすトリガーを捉え、そこでのクライアント企業のコミュニケーション活動・場の創出をサポートする。
生活者のトリガーを捉えてタイムリーなコミュニケーションを
メディアの枠を超え、大きな変革をもたらす「MCx」のプロジェクト。多くのクライアントやメディアと向き合い、さらに生活者との接点を見つめ続けてきたプロフェッショナル達は、現在の広告業界における課題をどのように捉えているのだろうか。
まず新居氏は「若年層とブランドが相対するとき、既存のメディアや広告を使ったコミュニケーションのみでは困難であるという課題が多く寄せられます。その時、エンターテインメントとの融合が肝となる。これはグローバルの拠点からの問い合わせも多く、世界的な潮流であると考えます」と語る。
さらに「私たちが目指すのは、企業と生活者の最適な接点をつくり上げること。コンテンツホルダーに寄り添うのがCSNのアプローチで、メディア企業の課題に寄り添うのがAXやBXのアプローチ。同じ山頂を目指しながらも、違うルートから登っている。それがMCxという組織で連携していることに価値がある。私たちだからこそ可能な、統合的なソリューションが提供できると考えます」と新居氏。
また布瀬川氏は、昨今のクライアント課題を「いかにトリガーをつくりだし、そのトリガーを捉えるかで解決していきたい」と語る。
「いつでも情報が得られるようになった今、人々の生活はより便利になっていきました。一方で企業からすると、いつ自社の情報が上書きされるのか、分からない状態にあると言える。またECの普及により、“ほしい”と思った瞬間にその場で購入することができるようになりましたが、この時に、いかにタイミングよく情報を提供するかが重要になります」と布瀬川氏。「AXは、そのトリガーが発生した瞬間を捉える仕組みをつくる領域。BXやCSNは、トリガーをつくりだしていくための仕組みづくりだと考えています」と、プロジェクトの全体像を語った。
お問い合わせ
dentsu Japan
URL:https://www.japan.dentsu.com/jp/