プランナーの頭の中を整理してくれる一冊―『手書きの戦略論』によせて(筧将英)

『宣伝会議のこの本、どんな本?』では、弊社が刊行した書籍の、内容と性格を感じていただけるよう、本のテーマを掘り下げるような解説を掲載していきます。言うなれば、本の中身の見通しと、その本の位置づけをわかりやすくするための試みです。今回は、戦略プランナーの筧将英さんが『手書きの戦略論「人を動かす」7つのコミュニケーション戦略』を紹介します。

コミュニケーションの手法が複雑になった今、立ち返るための本

手書きの戦略論「人を動かす」7つのコミュニケーション戦略
手書きの戦略論「人を動かす」7つのコミュニケーション戦略』磯部光毅著

新入社員や若いスタッフに広告やコミュニケーションを教える立場になる年齢になって、難しいと感じるのは、スキルを獲得していく順番です。デジタルが主戦場になっていることもあり、デジタルスキルから習得することが多いのですが、PRやSP(販促)などからキャリアを初める方も多いでしょう。

そこからより広い領域に取り組みたいと転職する場合に、もともとの出自によって、マーケティングやコミュニケーションの捉え方、プランニング方法も異なります。さらに最近、あらゆる領域がマーケティングの範囲に入り、その状況がますます加速していると感じています。

そういったときに、頭の中のノウハウを整理し、再構築するサポートが必要なのですが、本書籍がふさわしいのではないでしょうか。コミュニケーションの方法論が生まれた背景を歴史的に説明し、具体的な広告やわかりやすいエピソードが付いている。こんなにぴったりな本があるでしょうか。

早く若いスタッフに読ませればよかったと思う反面、おそらく5年以上の経験がある方の方が得るものが大きいでしょう。早すぎてもよくないものです。

コミュニケーション戦略は発展途上というロマン

寄稿するということで本書を再読していて、広告業界にいるロマンを見つけました。最終章には「戦略論をどう進化させていくか」を筆者は書かれていますが、時代が変われば、消費者/生活者も変わり、それに伴ってコミュニケーション戦略も変わっていきます。

『手書きの戦略論』より。時代ごとに戦略論同士がどう影響し合い、進化してきたのかを描く。

 

新しい戦略・メソッドを生み出すことは戦略を考える人間の楽しみでもあり、社会に提供するべき価値とも言えますが、この変化が大きい時代にその余地は大きく残されています。

ただし、マーケティング・コミュニケーションの変遷を知らずに考えることは本末転倒です。新しいメソッドを生み出したいと思う方は、本書籍を読み、大きな流れの未来を描いていきましょう。私も寄稿をきっかけに取り組んでいきたいと思います。

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筧将英(かけひ・まさひで)
ストラテジックプランナー/クリエイティブストラテジスト

2008年電通入社、ストプラ職からデータマーケティング職を経験。戦略立案がメインだが、PRやサイト制作ディレクションも経験。子会社出向、クライアント常駐経験も有する。マーケティング/コミュニケーション戦略立案を中心として、大手クライアントのキャンペーン設計から企画・実施を担当。2021年に、ストラテジーブティックとして「Base Strategy株式会社」を設立、同時に株式会社FOR YOU執行役員CMOに就任する。2023年書籍『考えるスキルを武器にする』(フォレスト出版)を出版。

読み継がれて7刷出来。宣伝会議のロングセラー。
『手書きの戦略論「人を動かす」7つのコミュニケーション戦略』
磯部光毅著/定価2,035円(本体1,850円+税)

コミュニケーション戦略を「人を動かす心理工学」と捉え、併存する様々な戦略・手法を「ポジショニング論」「ブランド論」「アカウントプランニング論」「ダイレクト論」「IMC論」「エンゲージメント論」「クチコミ論」の7つに整理。それぞれの歴史的変遷や、プランニングの方法を解説する。体系的にマーケティング・コミュニケーションについて学ぶための一冊。2016年発売のロングセラー。
宣伝会議ベストセラーライブラリーでは、本書をもとにしたオンデマンド講座も配信中。




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