「アドリーチマックスって何ですか?」
初めまして。武井 裕亮です。
今年の6月、日本テレビの営業局に誕生したアドリーチマックス部で仕事をしています。よろしくお願いします。
私が属する営業局は地上波の他、TVerなどのCM枠をセールスし、放送・配信までのオペレーションを担当する組織で多くの広告主や広告会社の方々とお付き合いをさせていただいています。
新部署の発足、ならびに部署名が発表されてから3カ月、「アドリーチマックスってなんですか?」とお問い合わせをいただく機会が少しずつ増えてきました。
あ!調べないで大丈夫です・・・!
「アドリーチマックス(以下、ARM)」は造語ですし、今回はこの場をお借りして我々がどこに向かおうとしているのか、要点を絞ってお話をさせていただきます。
早速ですが、結論から入ります。
ARM部では「テレビ広告をテクノロジーの力で再設計し、マーケティング活動に資する使いやすい広告媒体へと一気に進化させたい」と考えています。
・・・・自分で書いていても疑問だらけの一文となってしまったので、少しだけ解説をさせてください。
まず、一番大事にしているポイントは「順序」です。
我々の議論では、常に「テクノロジー」が先に立ちます。もちろん視聴者ファースト、ユーザーファーストの視点は忘れませんが、このテクノロジーを使ってどんな戦略が描けるのか? プロダクトの開発マイルストーンは? 最終的にどんな商品を展開する? という順番で議論を進めていくことが多いです。スマートなブロダクトが良質なサービスを生み出すと信じているからです。
2つ目のポイントは「テレビ広告」という言葉の定義です。
いま「テレビ」という言葉の持つ定義がグラグラとゆらいでいます。テレビ局で仕事をしていても、その時々に議論するメンバーで「テレビ」の定義を揃えないと議論が明後日の方向へと流れていきます。
そこでARM部ではテレビ局のコンテンツに紐づく、全ての広告枠を「テレビ広告」の守備範囲とすると、定義しました。つまり地上波やTVerに限らず、外部の動画配信サービスなど我々のコンテンツを楽しんでいただいた視聴者に広告をしっかりと届けていくことを使命としました。
最後、3つ目のポイントは「一気に」、つまりはスピード感です。
ARM部は部長をいれても4人の小さな部署です。考えながら走り、恐れずに決めて、組織としての意思決定もリードします。スピード感を常に意識して時間をかけずにサービスをリリースしていきたいと考えています。
デジタル動画広告の登場で「扱いにくい広告」になってしまったテレビの今
ここまで概要ではありますがARM部の狙いについて恐縮ながらお話をさせていただきました。続いて、ARM部が「いま」向き合っている課題について共有をさせてください。
最初に申し上げると・・・、
ARM部が取り組んでいる課題は、すでに手をつけるのが遅すぎるくらいテレビ業界にとって”待ったなし”の危機的なものばかりです。
日本テレビは2023年に開局70周年を迎えました。
日テレに限らず、テレビ局はたくさんの番組やIPを生み出し、世界中で愛されるストーリーやキャラクターも少なくありません。その多種多様なコンテンツ、そこに電波という武器が合わさることで「地上波広告」は強力な広告媒体として多くの広告主の方々に活用いただいてきました。
しかし「地上波広告」は「デジタル広告」、特に「デジタル動画広告」の登場で相対的に扱いにくいものになってしまいました。そこにARM部が向き合う課題があります。
振り返るとARMはプロジェクトとして、以下の1枚のスライドに記した構想から始まりました。
地上波に限定せず、TVerやHulu、さらには資本関係のない外部の動画配信サービスにもコンテンツを配信して全ての広告在庫を「統合」してセールスすることを目指したものでした。
テクノロジーの力で「扱いやすい」テレビ広告へ
しかし、この取り組みを進めれば進めるほど地上波の”扱いにくさ”が際立つというジレンマに陥りました。
取引指標も運用上のタイムラインも噛み合わず、「今のままでは地上波とデジタルを統合することは難しいし、誰からも求められない」という結論に至ったのです。
例えば、地上波広告には長年続く”商慣行”としてCM素材に関する業界ルールがあります。そのルールでは放送の4営業日前までにCM素材を放送局に搬入し、どの広告枠で流すのか指示することを求めています(4営業日にこだわらず独自に搬入日を指定する局もあります)。
つまり金曜日の広告枠で流すCM素材は4日前の月曜日までに指示する必要があり、土日や祝日、年末年始を挟むと1週間以上前に決めなければなりません。また一度決めると直前での変更は原則できません。この「4営業日前」という業界ルールはアナログテレビ以前から何十年と続くルールだと聞きます(なんとフィルム時代から?)。
電波を扱う放送局にとって放送事故防止の面もある大事なルールなのですが、広告主の方々にとって地上波広告の購入時に生じる「扱いにくさ」のひとつであるとも思います。
そして、これから広告活動を始める企業にとって動画広告はYouTubeやTikTokのようなデジタルが原体験となり、地上波広告がイレギュラーとして映るはずです。そのとき「扱いにくさ」が原因でメディア選定時の候補にも上がらないことを我々は恐れています。
しかし、恐れているだけでは何も変わりません。
ARM部ではテクノロジーの力で地上波とデジタルのギャップを埋めたいと思っています。
このギャップを埋めることができれば地上波とデジタルの「波長」が揃い、地上波やTVerに限らず、外部の動画配信サービスの広告枠まで統合してセールスする未来に辿り着くことができると考えているからです。
小難しい話が続いてしまいましたが、ARM部は生まれたばかりの組織です。その存在意義も変化していくと思います。今の時点では「テレビ広告を進化させようとチャレンジするチームが日本テレビにある」とだけでも覚えていただけると嬉しいです。
次回以降、ARM部が取り組む具体的なテーマについても少しずつ触れていきます。
連載が年末年始ころまで続きますが、お付き合いください!