まだまだ暑い日が続いておりますが、皆様いかがお過ごしでしょうか。この夏、慶應高校が甲子園で優勝まで上り詰めて行ったニュースは、弊社・代表 齊藤をはじめとして、今回のコラム担当・高橋など慶應出身者が数名いるSMO内でも非常にアツく駆け巡りました。
ご存じのとおり、見事優勝を掴んだ慶應高校野球部ですが、そのチームビルディング、そしてその導き方に、非常にパーパスフルで組織経営のヒントになる部分が多くありましたので、今回は彼らの強さの秘訣を、理念という視点から説きたいと思います。
今回の優勝で一躍有名となった、森林貴彦監督。試合後のインタビューでは、たびたび「慶應が勝つことで、高校野球の常識を覆したい」「それによって社会を変え、先導する存在になりたい」というような発言をされました。
2019年の「ハフィントンポスト」のインタビューでは「私は、野球の監督よりも中小企業の経営者という意識が強いので、いかに良い組織にするか、一人ひとりが生き生きと取り組めるようにするにはどうしたらいいかを常に考えています。」という発言もあり、実際に経営者的なマインドで部を率いていらっしゃるようです。
試合を観ていて、他のチームと顕著に違っていたのは、どんなに厳しい場面でも、部員が皆楽しそうに笑顔でプレーしていたこと。実はそれには「不敵な笑み」作戦というところもあったようですが、よほど皆がそれを演じられる器用さがない限り、余裕さえ感じられるあの表情を作るのは難しいでしょう。そこには、部が前々から掲げてきた「Enjoy Baseball」の精神がしっかりと根付いており、それを体現できていると感じました。
慶應高校野球部ホームページの監督メッセージでは、「全社会の先導者になる」という慶應義塾の目的のもと、社会にインパクトを与えるような良いチームになるために試行錯誤していく、と書かれています。
慶應義塾のサイトの理念ページでは、この義塾の目的についてはっきりと明言されています。
慶應義塾の目的
「慶應義塾は単に一所の学塾として自から甘んずるを得ず。其目的は我日本国中に於ける気品の泉源、智徳の模範たらんことを期し、之を実際にしては居家、処世、立国の本旨を明にして、之を口に言ふのみにあらず、躬行実践、以て全社会の先導者たらんことを欲するものなり」
(福澤諭吉は学問を修める過程で、「智徳」とともに「気品」を重視し、社会の先導者にふさわしい人格形成を志しました。)
この「社会の先導者にふさわしい人格形成」が、私たちの言うところの“パーパス”、「智徳」と「気品」が“バリューズ”と言えるでしょう。
この慶應義塾のパーパスを根底に、「Enjoy Baseball」の精神を大切に活動する慶應高校野球部。こうしたブレない拠り所があり、チーム全員が信じ切って実践しているところに、理念を軸にした組織の強さを垣間見ることができました。
試合後に森林監督が答えていた記事(日刊スポーツ)にも、印象的な発言がありました。
「甲子園優勝を人生最高の思い出にしないように。そこにしか、すがれないような人生にしてほしくない。もっと素晴らしい経験をしてほしいと伝えたい」
この言葉は、監督が「常識を覆す」「社会を先導する」という壮大な”なぜやるか?”に向かって野球部を率いていらっしゃるからこそ、甲子園優勝は彼らの最終目的ではない、このパーパスを実現していくための過程に課されたミッションの1つをクリアしたに過ぎない、ということではないでしょうか。
このような素晴らしい指導者のもとで練習を積んだ部員たちはきっと、同じパーパスを胸に、野球以外でも将来いろんな道での先導者となり、活躍していってくれることでしょう。
彼らのパーパス実現は、まだ始まったばかりです。今後、高校野球界、しいてはそれを取り巻く社会にどのような変化が巻き起こるか、慶應高校野球部の野望は尽きることはありません。(エスエムオー 高橋 苗)