サントリー新サービス「酒ことば」のローンチ過程から企画術を学ぶ

サントリーは2023年7月18日、ギフトサービス「酒ことば」を開始した。これまでもお酒の新しい価値を商品やクリエイティブで提案してきた同社だが、今回挑戦した切り口は、「パーソナルギフト」だ。ギフトとお酒の新たな文化ともなり得る「酒ことば」に、商品の新たな見せ方を実現する企画術を学ぶ。

写真 人物 個人 宮元尚哉氏

サントリー
戦略本部
宮元尚哉氏

企画の発端は新たな酒文化の創造だった

サントリーが開始した「酒ことば」とは、お酒そのものだけではなく、一緒に「気持ち」も贈る新しいギフトサービス。本当は伝えたいけれど、なかなか言えない想いを表す言葉を「酒ことば」として16枚のカードにそれぞれ一語ずつ記載。お酒と一緒にカードに書かれた気持ちを贈るというものだ。専用のWebサイトから「酒ことば」を選ぶと、その言葉に合ったお酒がレコメンドされ、購入することができる。16枚のカードは相手にすべて贈られるが、「No.○○のカードを見て」とメッセージを同封することで、想いを伝えるという仕組みだ。

「酒ことば」の企画を担当したのが同社戦略本部の宮元尚哉氏。企画した目的は、“ちょっといいお酒を贈って想いを伝える”という新たな酒文化をつくることだったと話す。パーソナルギフトの需要は近年伸長しているが、贈り物の対象としてお酒が選ばれることは少ないという課題が、ひとつのきっかけとなって生まれた企画だった。

「誕生日や記念日などのパーソナルなイベントは、お中元やお歳暮などと違って、商戦時期が決まっていないですよね。そのため、パーソナルギフトはメーカーとしても商品、宣伝、店頭のいずれも施策を展開しづらい状況でした。これは当社だけではなく、他社も同じなのではないかと捉えています。そこで着眼したのが、パーソナルギフト需要に対して、お酒は目立った提案活動ができていないということ。つまり、パーソナルギフト市場には新たな需要として増分の余地があると考えたのです。お酒は、ただの飲み物としての役割だけではなく、コミュニケーションツールとして人と人との関係を繋ぎ、深めることができるという価値もあります。この価値を改めて知ってもらうことで、新たにお酒ギフトに振り向いてもらうきっかけをつくりたいと考えました」(宮元氏)。

“人物相関図”に着目!?見直した「ギフト選びの基準」

パーソナルギフトの需要増や、お酒の贈り物の市場可能性があったとはいえ、お酒をギフトの選択肢に入れてもらうのは容易ではないと想像がつく。ましてや、ギフトは相手のために選び、購入するという購買行動が主であるため、通常の購買よりも手間がかかることも利用のハードルになり得ると考えられる。新たな酒文化の創造と利用促進には、工夫とアイデアが必要に違いない.

そこで宮元氏が見直したのが、「ギフトの選び方の基準」。従来の“モノ”から選ぶギフトから、“相手との関係性や伝えたい想い”を軸にギフトを選ぶという選択肢を新たにつくれないかと考えた。

「先ほど述べた『コミュニケーションツールとして人間関係を深める』というお酒の価値を、ギフトでも使うことができないかと考えました。その中でまず、思い浮かんだのは“人物相関図”。人物相関図を見てみると、家族や友達、先輩といったダイレクトな関係だけではなく、憧れや信頼といった“感情”の関係性まで描かれていることがわかりました。そこで改めてギフトの特性を見直してみると、親和性が高いことに気づいたのです。ギフトも相手との関係性があるからこそ贈られるものですよね。その関係性はダイレクトなものだけではなく、想いや感情をはらんだ関係性でもよいのではないかと考えました」。

気持ちを伝えるときのインサイトにも応える

コミュニケーションツールとしての価値を持つお酒とギフトの特性を再考した結果、「気持ちを贈る」という着想を得た宮元氏。しかし、言葉で気持ちを伝える手段は手紙やデジタルなど、多岐にわたる。なぜ、カードに単語を記載するアウトプットに至ったのか――。

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