ESGの「見える化」で見える企業の未来 自然資本・企業リスクの可視化の重要性

人権をはじめとしたESGの取組が企業に求められる

環境・社会・ガバナンスの3要素からさらに分岐するESGは多様な側面を持ち、「ESGを経営に取り入れない=企業は存在できない」と考えを提示した馬奈木氏。なかでも最後に行きつく課題が『人権』だ。馬奈木氏は、日本政府が2022年9月に策定した『責任あるサプライチェーン等における人権尊重のためのガイドライン』について、実質的にESGをサプライチェーンに導入したもので、人権が重視され始めたことを象徴する事象として紹介。

アメリカの大手アパレルメーカーが所有工場で強制労働や児童労働などの人権問題に端を発する不買行動により、予測利益の1/3を数年にわたり失い続けた事例を引き合いに、「『自社では他国に工場を持っていないから人権問題は大丈夫』とはならない。他国の取引先が『どのようなESGにもとづき、どのように原料を調達しているのか』といった自社ルールの開示を求めてくるかもしれない。そこで先方と合致しなければ取引終了となる」と参加者に危機意識を持つよう促した。

写真 イベントで話す馬奈木氏

「ESGを経営に取り入れない=企業は存在できない」と話す馬奈木氏

世界各国で実践されるESG経営について、馬奈木氏は「日本企業は比較的よく実践している。特に環境製品の取り組みはすばらしい」との見解を示した。これから意識するべきこととしては生物多様性とネイチャーポジティブを挙げ、「自然資本に対して、企業はもっと配慮した動きをするべき」との考えを伝えた。また、従来の豊かさから『幸せ』へ価値指標に転換するとして、新たな経済指標として『新国富指標』『地域コミュニティ指標』『幸福指標』の3つの指標が機能し、人を中心としたウェルビーイングな人生と幸福コミュニティの形成に向かう未来を示唆した。


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