ESGの「見える化」で見える企業の未来 自然資本・企業リスクの可視化の重要性

多様な取組で脱炭素社会の実現を目指す

馬奈木氏は自然資本の重要性に言及した背景には、一人当たりの自然資本が減少傾向にある状況が関係している。馬奈木氏は「GDPの半分以上は自然資本から生まれているが、その価値は30年で半減している」として、これからは“自然の価値の数値化・指標化”が重要になると語った。自然の価値を可視化する取組はイギリス、アメリカ、中国など主要国で進行し、バランスシート上に取組実績を記載することで企業経営に好影響を及ぼしている。

主要国においてサプライチェーン上のESGに関する問題が深刻になるなか、解決支援策として「株式会社aiESG (アイエスジー)」が紹介された。世界初となる製品・サービスのESG分析評価サービスは、ビッグデータを用いたAI分析と3200のESG指標にもとづいてサプライチェーンをすべて数値化。開発を手掛けた馬奈木氏は「『資源を掘削し過ぎているが、水の消費量は少ない』や『気候変動に悪影響を与えているが、人権は遵守している』など、自社の課題も良さを数値化できる。企業のリスクは社内にいる人間では見つけにくい。自社を可視化・評価したうえで次の取組につながる仕組みとして貢献できれば」と展望を話した。

講演の最後には、馬奈木氏がカーボンクレジット市場の活性化を通じて脱炭素社会を実現することを目標に設立した一般社団法人ナチュラルキャピタルクレジットコンソーシアム(NCCC)の取組も紹介された。社会全体を網羅した活動により自然資本の増加を目指す取組は、森林資源だけでなく古民家や古材などもカーボンクレジットを得る対象となり、温室効果ガスの削減に貢献する。

脱炭素社会の実現に向けて着実に歩みを進めるなか、馬奈木氏は「日本のカーボンクレジット市場は、シンガポールなどと比べて遅れをとっている部分がある。より推進力を持って脱炭素社会を実現するためには、海外と国内を連携させて取り組むことが大事」の発展の余地を指摘して講演を締めた。

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