広報業務が多様化している昨今。「業務時間が足りない」と悩みを抱える広報担当者も多いのではないでしょうか。そこで『広報会議』10月号(9月1日発売)では、「業務成果を最大化する」ための方法について、メディアへ戦略的に露出している企業などに話しを聞いています。
本記事では、「メディア視点」に立った広報戦略で、スタートアップ企業でありながら効果的にパブリシティを獲得しているゼロボードの事例を一部、紹介します。
※本記事は、『広報会議』10月号の転載記事です。
CO₂など温室効果ガスの排出量算定・可視化できるサービスを展開しているゼロボード。2021年8月の設立から2年足らずでテレビをはじめマスメディアでの露出を続々叶え、認知を拡大している。その背景には、大手企業との連携・協業発表リリースをはじめ「メディア視点」の広報施策がある。
「ニュース性」を打ち出す
同社は創業初期から出していた、関西電力や三菱UFJ銀行などの大手企業との協業プレスリリースが「企業の信頼性向上に寄与した」と同社広報の太田智子氏は振り返る。
その一方で、導入や連携について単に発表するだけではニュース性は弱いとし、「双方が連携したことで社会に対してどのようなインパクトがあるのか、『記者にとってのニュース性』を打ち出すこと」を心がけているという。
例えば「岩手銀行と岩手県釡石市との地域脱炭素の実現に向けた協定の締結」に関するリリースでは、連携における三者の役割を表で示した上で、「今後、社会はどのような潮流になるか」「連携がその潮流にどのように貢献できるか」を明記。地元メディアなどを中心に露出につながった。
太田氏は「地方は都心と比べてニュースの母数が限られ、環境配慮に関する取り組みも少ない傾向にあります。『ニュース性』を細やかに打ち出すことで、地方から露出を目指すのも戦略のひとつです」ともコメントする。
記者の知りたいことから逆算
また、国内大手PEファンドとの連携で、同ファンドの投資先へのサービス導入を開始したという発表時には、メディアプロモートにも注力した。
中でも全国紙の経済新聞には、従来から同社への取材を行っている「スタートアップ」担当記者ではなく、ファンドを取材している「金融」担当記者にアプローチして「メディアレク」を設定した。
レクには、同ファンドの担当者に加え、同社の温室効果ガスの排出量算定に関する専門家も同席し、取り組みの背景やその意義を含め記者がカジュアルにヒアリングできるような形に。結果として記事化につながり、同ファンドへの反響も多数寄せられたという。
「国内PEファンドとして初の取り組みだったため、金融担当記者の方が興味を持ってくれると考えレクを開催しました。レクの開催は、記者の方が知りたいことをその場で聞くことができたり、記事の方向性を模索できたりするため、互いにとって効率的だと自負しています」(太田氏)。
記者接点の創出を重視
同社の広報戦略では、こうした「メディアレク」の開催により多数の記者との関係性を構築している。
直近では、同社が全国の地域金融機関19社を集めて実施した「脱炭素経営情報の連携会」に数社のメディアを招待した。
会の趣旨はあくまで、金融機関同士に「それぞれどのように脱炭素を進めているのか」「何に苦労しているのか」といった本音を共有してもらうこと。
だが、その本音を記者にも体感してもらうことで、今後メディアから読者に届けるべきニュースの切り口におけるヒントを提供できたと、手ごたえを感じているという。
「自社の露出が、成果のすべてではないと常々感じています。記者の方とのコミュニケーションを創出することで、記者の方が『実際どうなの』と質問できる存在になることが長期視点での広報戦略で重要だと考えています」(太田氏)。
このほか、広報会議10月号の特集「成果を最大化する 仕事の進め方」では、「情報収集」「広報企画」「コラボレーション」といった3つの切り口から、10社のケーススタディを紹介します。
広報会議10月号(9月1日発売)
- 特集
- 「成果を最大化する仕事の進め方」
- ~情報収集~
- CASE1
- 共有カレンダーを活用し情報集約を自動化する
- アークランドサービスホールディングス
- CASE2
- PR戦略会議で社内に「広報」への意識を浸透
- ニュー・オータニ
- CASE3
- 資料管理ルールを定めた効率的なキャッチアップ
- MCEAホールディングス
- CASE4
- クリッピングや会議参加で多事業の動向を把握
- ダスキン
- ~広報企画~
- CASE5
- 訴求する切り口をストーリーで伝える
- カルビー
- CASE6
- 記者発表会でメディアへの継続露出を
- 村田製作所
- CASE7
- 事業の進捗ごとの発信で訴求点強める
- メタウォーター
- CASE8
- 親近感を示し企業色伝えるSNS運用
- 帝人
- ~コラボ施策~
- CASE9
- 記者視点の「ニュース性」提案にこだわり
- ゼロボード
- CASE10
- 企業の役割を明確化し波及効果狙う
- シェアリングエネルギー
- COLUMN
- 活用される業務マニュアルの作成法
- 森田圭美
- GUIDE1 言語化
- 瞬時に「言語化」するための6ステップ
- 荒木俊哉 電通 コピーライター
- GUIDE2 画像活用
- 記者の目を惹き伝わるビジュアルとは
- 善本喜一郎 写真家
- GUIDE3 ミスをなくす
- 調査リリースのチェックポイント
- 木下彰二 共同制作社 代表取締役社長
- GUIDE4 外部パートナー
- 社外へ依頼することを見極める
- 長沼史宏『先読み広報術』著者
- GUIDE5 効果測定
- 経営層と現場の意識の一致が鍵
- 鈴木恭平 パナソニック コネクト
- OPNION メディア編集長が考えるうまい広報
- 安田典人 安田典人 『DIME』編集室長
- 影山桐子 『Women’s Health』編集長
- INTERVIEW 生産性向上につながる生成AI活用法
- 河野あや子、牛山マーティン、前田梨沙
- 広報担当者のための企画書のつくり方入門 特別編
- ChatGPTを広報に応用
- 片岡英彦
など