LIFULL HOME’Sが実践する、Cookieレス時代のマーケティング施策 SIMC2023レポート

SIMC(シンク)は、広告・マーケティング界の未来の姿を構想し、明日からの実務に活きるノウハウを提供する、株式会社宣伝会議主催のオンラインイベント「SIMC」。6月に開催されたいま注目のテーマを網羅したプログラムに、最前線で活躍する多数のマーケターが登壇した本イベントから注目セッションをレポートします。

サードパーティCookieデータの利用規制は、これまでネット広告を活用して事業を成長させてきた多くの事業体に影響を与えています。いかにして、Cookieレス時代に対応したデジタルマーケティング戦略を構築できるか。多くの企業が次なるテーマに取り組んでいます。

デジタル、データの利活用を推進し、マーケティングDXを推進してきた「LIFULL HOME‘Sが実践するCookieレス時代のマーケティングの取り組みについて、同社マーケティング部の遠藤智史氏が解説します。

サードパーティCookie規制で影響受けたが、マーケティング活動は変わらない

私は2012年に大手総合通販企業に入社。2016年にLIFULLの前身であるネクストに入社後デジタルマーケティングチーム、ブランド領域のマネージャーを経て2020年からマーケティング部のユニット長としてデジタルマーケティング・ブランド・オウンドメディア・ムック本の創刊など担当するチームを統括しています。

私が所属するLIFULLの主力事業はLIFULL HOME‘Sで不動産情報ポータルサイトの運営です。住まい探しをしたいユーザーと実際に物件を紹介している不動産会社のマッチングをWebやアプリを使ってサービスを提供しています。

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本日のテーマはCookieレス時代のマーケティングについて、です。2017年から順次、始まったCookie規制、GDPR等での世界的な個人情報保護など、デジタルマーケティング領域において大きな地殻変動が起きています。インターネットサービスが主力となるLIFULL HOME’Sにおいても大きな問題で、投資対効果の可視化や精緻化ができなくなれば、販管費のコントロール、そしてPLにも影響してきます。

一方でマーケティング活動が根本から変わるわけではなく、生活者が誰(WHO)で何を(WHAT)求めているのかといった部分が大事なことは今後も変わらないかなと考えています。

選ばれたい時に選ばれるサービスになるためのコミュニケーションとは?

このような環境のもと、LIFULL HOME’Sが実践するクッキーレス時代のマーケティング施策を3点、ご紹介します。

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まず「選好性を高めるブランド戦略 選ばれたい時に選ばれるサービスになるためのコミュニケーション」から説明させていただきますが、その前に住み替えの概況についてお話したいと思います。こちらは人口推計や当社独自調査からのデータとなります。

  • 1.2020年4月から2021年3月における住み替えをした人は全国で474万人。
  • 2.生涯の引っ越し回数は平均3回。
  • 3.契約更新まで2年あるので、常に住まい探しをしているという人は滅多にいない。
  • 4.不動産情報サイトはどこも同じという認識。

以上4点から考えると不動産情報ポータルサイトに対して人々は「低関与×低頻度」という特徴があると思っております。そういう状況の中で、①お客様が住まい探しをする際に使うサービスとして当社が候補に入っているか(Evoked Set)、②LIFULL HOME’Sを思い出してもらえるか(純粋想起)、低関与×低頻度のこのカテゴリーにおいて、どう戦っていくかが非常に大事になっています。

このような背景がある中、直近に行ったブランド施策についてご説明をします。

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当社では寿司チェーン「すしざんまい」の木村清社長が、住まい探しサイトの併用利用をお寿司で例えるWEB CM「お寿司で例えてみました」篇を2023年1月5日(木)より、LIFULL HOME’Sの公式YouTubeチャンネルで公開しました。

この動画を制作するにあたり注力したのは以下の3点です。

  • ①生活者の「Evoked Set」には非常に強い競合がいるため、それとホームズを「併用することによるメリットを紹介する動画を作成。選ばれる理由を作りました。
  • ②「広告は見られない、異質である」ということを前提に、どうしたら見ていただけるかを探求しました。
  • ③出稿金額が競合と比べて、当社の場合そこまで大きくないためにWebを軸に、テレビCM、OH、PR、SNSなどのメディアをIMCでつなぎ、タッチポイントの総和が最大となるように設計しました。
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こちらの施策の結果ですが、5月下旬時点で全クリエイティブの累計再生回数が、1321万回を超えました。対象ワードが含まれたtwitter投稿のリーチ数が配信開始1週間で約113万投稿と非常に大きな話題を生むことができました。

住まいの窓口の活用 O2O施策を通じたナーチャリング

次に「生活者の検討状況に合わせたコミュニケーション 住まいの窓口の活用 O2O施策を通じたナーチャリング」についてお話をしたいと思います。

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前述の通り、不動産情報サイトの選択においては、「低関与×低頻度」ですが、物件や家探しにおいては関与度が高くなるので、「高関与×低頻度」となります。また、検討期間も特に物件の購入の場合は非常に長くなりまして、その間のコミュニケーションをクッキーに依存してしまうと保持期間が切れてしまい、思うような適材適所のコミュニケーションができないというところが課題としてあります。

こうした課題に対してひとつの解決策となるのが対面サービスの「住まいの窓口」です。物件や家探しをしている方の悩みを無料で相談するサービスで、条件設定を整理したのち、しかるべき不動産会社に送客をさせて頂き、成果報酬をいただくというビジネスモデルとなっています。

ファーストパーティデータを活用した生活者との相互コミュニケーション

次にWeb to App施策としてファーストパーティデータを活用した生活者との相互コミュニケーションについて説明をしたいと思います。

住まい探しのサービスに関しては、「低関与×低頻度」と申し上げましたが、LIFUL HOME‘Sのサービスも、住まい探しをする際に利用されるケースがほとんどです。また、使われ方も一定の期間において非常に高頻度に利用されるケースが多いです。

こういったケースから私たちはパネル型ではなくて、ホルン型にしてコミュニケーションを取っていくべきだと考えています。

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こちらはアン・H・ジャンザー著「サブスクリプション・マーケティング――モノが売れない時代の顧客との関わり方」からの抜粋となります。左側が「検討状況の深度」となっておりますが、「ブランド認知」「見込み客の創出」「見込み客の育成」といったものをグルグルグルグルと回していきながらメール、ライン、アプリのプッシュ通知などを活用して、条件整理や悩みの相談と解決を循環していくことが求められてくると考えています。

こうした背景があり、またCookie規制から再訪問を促すリタゲが難しくなった環境でのコミュニケーションとしては、自社アプリの活用を強化しています。物件は、世界にひとつしかないものですまさに鮮度が重要。リアルタイムでのコミュニケーションが求められます。そういった面でアプリは、「プッシュ通知による新着物件通知」や「お気に入り物件の情報変更」など、リアルタイム性においても相性が良いという特徴があります。

生活者にとって納得がいく住まい探しのお手伝いがしたい

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私たちは今後もこのクッキーレスの取り組みを行ないつつ、サードパーティクッキーに成り代わる識別因子などの情報もキャッチアップしながら「テクノロジーによって何ができるのか・できないのか」を認識して打ち手を考えていきたいと思っています。

ただ前述の通り、今後テクノロジーが発展して「How」が変容してもコミュニケーションの根幹となる「WHOとWHAT」は変わらないかなと思います。しっかりとこれらを明確にして適材適所のコミュニケーションを実現し、生活者にとって納得のいく住まい探しのお手伝いを全力で取り組んでいきます。

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遠藤 智史氏

LIFULL
マーケティング部
コンシューマーマーケティングユニット ユニット長
遠藤 智史氏

2012年、大手総合通販企業に入社。マーケティング室にてWebプロモーションを担当。2016年、ネクスト(現・LIFULL)入社。デジタルマーケティングチームにてマーケ施策を推進・実行。2019年デジタルマーケティングチームマネージャー。2021年 兼任にてブランド領域のマネージャー。2022年より現職。デジタルマーケ、ブランド、Owned運営、ムック本などの全体統括を担う。


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