会議の推進には、鉄板の考え方と方法があった! 「全社横断プロジェクト」マネジメントの掟!

プロジェクトの品質は、会議の品質で決まる

あなたが、「全社横断プロジェクトチーム」のリーダーに任命されたら、その時どうする?

そんなシチュエーションを想定して、PM(プロジェクトマネージャー)の仕事について解説していく本コラム。今回は「会議の推進」についてお話しします。大きなプロジェクトでは、会議は非常に頻繁に行われ(新規事業開発だと150日連続定例などあります)、PMはファシリテータを担う場合も多々あります。

しかし、会議進行は手ぶらで臨んで進められるほど、甘いものではありません…!複雑な議題では様々な意見や専門的な会話も多く生じます。そこに自分の意見も発言しつつ、参加者が納得する結論に着地させる…。私は、「プロジェクトの品質は、会議の品質で決まる」と考えています。それゆえ会議の品質をどこまで上げられるかが、PMの腕の見せ所なのです。

自分だけのメンバーデータベースをつくる

では、会議をうまく進めるために何をすればいいのか?について考えていきます。まず、全社横断プロジェクトでは大前提として、多くの部署から様々な立場のメンバーが参加するので、リテラシーに差があり、それぞれの得意分野も異なるという側面があります。

例えば顧客視点に強い、運用面に詳しい、システムに明るい、計数管理や目標設定が得意など…。メンバーの能力を最大限に発揮してもらうためには、それぞれの得意分野の話題で躍動してもらうことです。発言が多くなると会議品質が高まるので、まずは活性化の流れをつくります。

ただ、得意分野の話題を振るにしても、そもそもメンバーのことを知らないと何も振れないですよね。そこで私はメンバー情報を集約した自分専用のメモ帳をつくっています。特徴、性格、好き嫌い、得意分野、実績、業務上のクセ、メンバー間の相性などを記した「メンバーデータベース」のようなものですね。とにかく気づいたことを日頃から書き留めています。わりと生々しいメモなので、人様に見せられるものではないのですが笑。でもこれが意外と役に立ちます。

会議というのは突き詰めると、会話の連続であり応酬です。いかにリズムよく、高濃度の会話をできるかが会議成功のキーとなります。人は、好きな話題には脳が活性化され会話が弾むので、それにより会議そのものの代謝が上がって推進力が生まれます。それこそがPMの目指すべき状態です。

一方で、まじめな話ばかりでなく、アイスブレイクや褒めることも必要です。ドライな会話は一方通行になりがちで、受け身や思考停止をする人が生まれます。そうなると全員参加型は叶わなくなるので、話題を適切に振るためにもメンバーを知ることには大きな意味があります。

発言は極端な表現で、課題はシンプル化を

メンバーに情報をインプットする時は、もちろん1回の説明で全員が理解できると効率的でグッドです。PMの言語化能力が試される場面でもあります。しかしそう簡単な話でもありませんよね…。私がいつも意識していることを3点ほどご紹介します。

1. 発言は極端な表現にして、とにかく分かりやすく伝える。

現代人は情報の洪水に常にさらされているので、人の話を正確に聞く、曖昧なニュアンスを正しく理解するという力が落ちています。極端な表現にすることでそこに引っ掛かりが生まれ、それが相手の思考に残ります。

2. 会議資料は自分でつくって説明する(つくり直す)。

例えば、ベンダーの資料を社内に説明する場合、情報量が多く、専門的で分かりにくいことがあります。会議は全員の理解一致が原則なので、何度も同じ説明をするより社内用に資料をつくり直して1回の説明で終える方が結局は合理的なのです。この時、注意点として余計な情報をいれないこと。1シートに情報はひとつだけ(文章であれば一文一義)。これを徹底しましょう。

3. 課題をシンプル化する。

複雑な課題を複雑なままにしておくと課題が進まず、最悪の場合は放置されます。課題担当者が悩んでいるなら、一緒に課題を分解してひも解いて、担当者の理解が進む状況をつくる。それにより担当者の目の前の霧は一気に晴れて、課題対応が進み始めます。

ネガティブな出来事は、むりやり前向きに考える

それでも会議がうまくいかずに悩むこともありますよね…。自身にストレスが募って判断を間違えたり、モチベーションが急降下してしまうことも…。私も長年、悩まされてきましたが、最近は忍耐力より、そもそもダメージを受けない思考力を大事にしています。

訓練というと大袈裟ですが、日々のマイナスな出来事を前向きに脳内変換してダメージを受け流す練習をしています。例えば、急いだけど予定の電車に乗れなかったとします。普通ならイライラしたりストレスに感じる場面ですが、私は「きっと乗る予定だった電車は乗車率200%の超満員地獄電車だったに違いない」と思いこんだり、子どもが床に飲み物をぶちまけた時は「そろそろ床を入念に掃除しろと神様がいってるんだろうな」とか、とにかくまったく根拠のない、かなり意味不明な思い込みをして、マインドチェンジをします。すると、不思議とストレスが減った気がするのです(イライラする前に発想を変える。アンガーをそもそも起こさせない私なりのアンガーマネジメントです笑)。

会議の場でもこの脳内変換を瞬間的にすることで、わりと平常心で進行できるようになりました。人はストレスに晒され続けると、本来持って生まれた感性や触覚を退化させていくそうです。ストレスが最も人を破壊するとしたら、どう守るかという点も気にしないといけません。自分を最後まで守れるのは、世界で自分しかいませんから。

会議で絶対にやってはいけないこと

会議推進において、必ず意識すべきことがあります。それは、会議で自分と相手の意見が食い違う場面では、「マウントを取ることは絶対にしてはいけない」ということです。マウントを取った瞬間から会議は死んでいきます。メンバーのモチベーションは急激に下がり、冷え込んでいきます。私は会議における参加者のスタンスとそれに伴う効果について、「全員参加型」と「講演型」があると考えています。下の表を見ると分かる通り、全員参加型こそプロジェクトには有益であり、PMが目指すべき姿です。

実データ グラフィック 会議の推進で意識すべきこと

しかし、会議は死んでいくと講演型になります。前回の「では、大義を決めなかったらどうなるの?」でも書きましたが、この状態から復興するのは極めて難儀で、通常の5倍のコストがかかります(冨田調べ)。

実際にプロジェクトマネジメントをするとよく分かるのですが、プロジェクトのエネルギー源はメンバーのモチベーションしかありません。それ以外には一切ないのです。だからこそメンバーが会議に参加しやすい、能力を最大化できる環境を整えることもPMの大事な仕事なのです。

会議には、プロジェクトの醍醐味が詰まっている

デジタルの仕事では、データに基づいてネクストアクションを考えることが多いですが、プロジェクトマネジメントはある意味、その対極にあります。プロジェクトマネジメントは、すべての関係者の心理を考えることから始まるからです。

特に会議では、その側面が強く求められます。メンバーの心理や状況をくみ取りながら、知見を総動員して、納得の着地点を探る。簡単なようで(私には)実に難しいですが、一方でプロジェクトの醍醐味でもあります。自分の頑張りでみんなの意見を収穫ある形に整えることもあれば、八方塞がりの状況下にメンバーが助けてくれることもある。お互いの能力を最大出力して、ともに仕事を前に進める。私はこの実感を得るたび、泣きたくなるぐらい嬉しくなるのです…!

コラムをご覧の皆様にも、この醍醐味を味わっていただけるといいなと思います。

次回は、「プロジェクト体制」について解説します。

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冨田良介(ゴールドウイン システム部 ITストラテジーグループ マネージャー)
冨田良介(ゴールドウイン システム部 ITストラテジーグループ マネージャー)

外資系総合広告代理店でデジタル領域のプロジェクトマネージャー(PM)、アパレルメーカー及び消費財メーカーにて新規事業開発やOMO強化など全社横断プロジェクトのPM、EC事業責任者を経て、2019年1月にゴールドウインへキャリア入社。2020年7月にローンチしたECシステムのリプレイス・OMO強化のプロジェクトをPMとして推進。現在は全社のデジタル開発案件全般に携わっている。

冨田良介(ゴールドウイン システム部 ITストラテジーグループ マネージャー)

外資系総合広告代理店でデジタル領域のプロジェクトマネージャー(PM)、アパレルメーカー及び消費財メーカーにて新規事業開発やOMO強化など全社横断プロジェクトのPM、EC事業責任者を経て、2019年1月にゴールドウインへキャリア入社。2020年7月にローンチしたECシステムのリプレイス・OMO強化のプロジェクトをPMとして推進。現在は全社のデジタル開発案件全般に携わっている。

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