TikTokやInstagramのリール機能などのショート動画が、若年層を呼び込むプロモーション手法としても注目されています。インフルエンサーが実際に足を運んだスポットを紹介する動画を投稿するや、観光客が殺到、一夜にして人気スポットとなるケースも見られます。
そこで本記事で、2人の旅行系インフルエンサーに「観た人に足を運んでもらう動画」制作のポイントを解説してもらいました。
※本記事は、広報会議2023年11月号の巻頭特集「訪れたくなる!観光を促す技」 から抜粋しています。
【回答してくれた方はこちら】
たのしむこころ
代表取締役 窪 雄貴 氏(くぼたび)
年300日ほど旅する夫婦クリエイターくぼたび。各種SNS(YouTube、TikTok、Instagramなど)にて観光・ホテル・スポット情報を中心に、ショート・ロング動画を発信。アカウント開始から3年で総フォロワー220万人超え。「47都道府県、すべてを主役に」をビジョンに、地域おこしに力を入れて活動している。自治体と連携する観光PRが得意。自治体SNSアカウントなどのコンサルティングも行う。
クリエイター・インフルエンサー
くつざわ 氏
地元千葉でフリーランスとして活動。令和元年よりSNSを通して動画を発信。執筆なども始め10万人程のフォロワーが集まる。その後SNSを中心に広告やマーケティング施策、観光業の広報施策、サイト制作やブランディングなど幅広く手がける。また、インフルエンサーとしてX(旧Twitter)でエッセイや記事執筆、動画投稿などを行う。趣味は釣りと愛犬の散歩。「情緒を具現化」した動画制作、記事執筆に定評がある。
STEP 1, 企画づくり
動画制作のファーストステップである企画づくり。動画の構成を漠然と決めるのではなく、誰に何を見せるために、どんな動画にするかを綿密に定めることが重要だ。その具体的な方法とは。
─企画づくりで意識していることは?
最重視しているのは自治体などのクライアント、視聴者、そして私たち自身の「三方よし」の動画づくり。例えばクライアントの要望であっても、「PRしてほしい」内容が今のSNSにマッチしない、私たちの発信する世界観と合わないと視聴者に敬遠されます。またPRに偏りすぎた内容も同様です。認識のすり合わせをしながら別の切り口を提案することもあります。私たちの世界観にフィットした動画で視聴者に支持してもらってはじめて、「その地に足を運んでもらう」というクライアントの要望に添うことができるのです。
─視聴者に実際に足を運んでもらうために、心掛けている点は?
アカウントのコンセプトに「47都道府県、すべてを主役に」と掲げているように、地域ならではの魅力が、視聴者(SNSのユーザー)にきちんと“伝わる” 企画を提案しています。そのためには、ユーザーの関心にフィットするよう「魅せ方」を工夫すること。例えば、地域で採れた新鮮な野菜をアピールしたい場合、そのまま新鮮と伝えるよりも… 続きは本誌 からご覧ください。
──企画づくりで意識していることは?
動画制作の前に「 何を解決したいのか」「それには何が最善策か」 から認識することを大事にしています。そのため動画制作といった単発の業務ではなく、企画の根本から携わらせていただけると、形にしやすいと感じています。実際に動画制作に関する依頼の多くは「若年層などSNSを使う層に認知してもらい、その地域に足を運んでもらう」ことが目的でしょう。しかし、クライアント側が提案する企画と、観た人が「足を運びたくなる」企画には乖離があるケースも多い。そこで「何をどう見せるか」の部分から視聴者の視点を踏まえて動画をつくっていくことが重要です。また「その地に足を運びたくなる」気持ちを誘発できるよう、魅せ方も工夫しています。例えば自治体が見せたいものとして、グルメや温泉などが挙がりますが、それらは多くの観光地が持っているもの。綺麗に撮影するだけではよくある資料映像、広告映像でしかなく、足を運びたくはならないのです。
──視聴者が「足を運びたくなる」企画づくりとは。
視聴者に、その地域の魅力の一部を疑似体験させることです。実際の体験に近づけつつも、本当に体験したほどの満足感は出さず、どこか完結させないことを…
STEP 2, 企画づくり
企画を決めたら次は撮影だ。特に、地域に足を運んでもらう動画撮影に重要なのは「演者が純粋に楽しむこと」と2人のインフルエンサーは口を揃える。その意図とは。
─撮影時に重視していることは?
演者である私たち自身がその地域やスポットでの体験を「全力で楽しむ」ことです。私たちのアカウントでは、本当におすすめしたい地域や体験しか紹介しないことを一貫して心掛けており、それがフォロワーに支持いただいている一因だと考えているからです。本当は良いと思っていないのに…
─撮影時に意識していることは?
最も気を付けているのは “撮らされました感” を出さないこと。広告色を感じ取られると、視聴者に敬遠されがちです。そこで私の場合は、撮影時に本当の友人を連れていきます。また機材も基本、iPhone1台のみ。視聴者に馴染みのある画質で、手振れなどもあえて入れて撮ること…
STEP 3, 編集
良い素材が撮影できても、素材を活かした編集ができなければ、視聴者に「足を運んでもらう」どころか、観てすらもらえない。視聴者の関心を惹き、行動変容を促す魅せ方とは。
─編集はどのように行いますか。
シーンごとの動画素材を観ながら台本をつくり、アフレコをし、トリミングやテロップを入れる流れです。中でも意識しているのは、没入感のある視聴体験。一緒に旅をしている
ように感じられる「ストーリー性」と、離脱を防ぐ「テンポ感」のバランスを重視しています。「ストーリー性」を高める一例として…
─編集はどのように行いますか。
まず、撮影した動画素材を全て視聴します。素材は15秒~数分ぐらいなのですが、そのうち直感的に「良い」と思う箇所を厳選して0.5秒~1秒の長さにトリミングし音声を調整。「どのような流れだと視聴者が飽きないか、離脱しないか」を念頭にシーンごとに並べ替えます。中でも重要なのは…
続きは巻頭特集「訪れたくなる!観光を促す技」(『広報会議』2023年11月号) からご覧ください。
本誌ではこのほか、インフルエンサーの活用術や自治体のSNS活用(TikTok、Instagram、YouTube)、インバウンドの誘客、風評に負けない対策なども掲載しています。
自社や自分たちの地域の資源を魅力的に伝え、足を運んでもらう企画づくりに役立てて下さい。
広報会議2023年11月号(9月29日発売)
- 特集
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訪日客の口コミ促進/風評に負けない対策 -
INTERVIEW
インフルエンサーに聞いた動画づくり
地域ならではの魅力が伝わる3ステップとは
窪雄貴(くぼたび)・くつざわ -
インフルエンサーを効果的に活用し
地域に足を運ばせるコツとは?
LIDDELL代表取締役CEO 福田晃一氏 -
OPINION
Z世代は「旅行先」をどう選ぶ
検索方法 重視する情報
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「【公式】山梨県が良すぎる」
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CASE2
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旅行者の安全を保つ「観光危機管理」と
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揚羽/たきコーポレーション IGI/Qetic - ほか連載多数