MBAフレームワークを使って入試対策!? マーケター出身の民間校長だからできる指導法

秋になると、受験モード一色になる3年生

民間企業の花王から、茨城県の下妻一高に転身して約半年。秋になると学校では3年生は部活動を引退し、またクラスマッチなどの秋の学校行事も始まります。いよいよ本年度の学校生活も後半戦のスタートです。

学校生活後半戦の高校3年生を待ち構えているのが、進路選択・大学受験です。それぞれの夢の実現に向けて、一生懸命、進路選択や受験勉強に励んでいます。そろそろ私立大学の推進入試が始まる時期なのですが、入試の事前提出課題に悩む生徒がちらほら出てきました。

ある大学の問題では、「企業が今後、SNSとどう付き合っていくべきか」それぞれのメリットとデメリットを踏まえて、あなたの考えを記載しないさいという問題が出ました。社会で働いた経験がない生徒にはなかなか難しい問題ですね。そしてこういう時こそ、民間出身の私の力を発揮すべきタイミングだと思ったわけです。

私は夏ぐらいから、マーケティングに興味がある生徒を4・5人集めて、マーケティングゆるゼミを開講。ゆる〜く、気を遣わずに参加することをコンセプトにしています。例えば、マーケティングフレームワークを最近の企業事例を用いて説明したりしているわけですが、この活動が小論文対策にもなるのではないかと思いました。最初は3名の女子学生でスタートしたゆるゼミですが、3年生の男子にも興味を持っている生徒がいると先生から聞き、ゆるゼミ男子バージョンを開催。最近の時事問題や、マーケティング事例を、MBAビジネスフレームワークを使って解説することにしました。

【参考】受験勉強の合間に社会勉強! 高校3年生を対象に「マーケティングゆるゼミ」を開講

このゆるゼミはすでに何回か実施していますが、意外と生徒からも好評で、学年内で噂が広がりをみせ、生徒のみならず、何人かの先生にも参加してもらえるようになりました。まずは小さく始めて、成果が出てきたら徐々にスケールさせていくアジャイル型の進め方が良かったのかもしれません。

前述の男子学生を対象にしたゆるゼミでは最近、気になっているニュースや、通勤する電車の中で読んだ新聞記事の中で、気になった情報などを共有するので、大学入試の時前課題対策や面接試験に繋がれば生徒の役に立てるかなと思っています。

写真 マーケティングゆるゼミに男子学生も参加。

マーケティングゆるゼミに男子学生も参加。

小論文の課題にSWOT分析が生きる?

民間出身の校長だからこそ、実践に役立つ知識を提供したいですよね。先の大学の推薦入試の課題に対しても、Pros・Cons分析やSWOT分析を使って答えを検討してみました。企業がSNSを使うメリット・デメリットを考えて意見を出し合い、具体的な事例を用いてさらに理解を深める。多面的な考え方を取り入れるには、SWOT分析が向いている。このように、いくつかのフレームワークを使って考えると、自分の頭の整理がしやすくなることを紹介させてもらいました。生徒からは、「これがフレームワークというものなんですね!」とか、「具体的な企業事例があると分かりやすい」など、生徒たちの反響もすごくよかったです。

グラフ オリジナル 実際にゆるゼミで使用した資料。
実際にゆるゼミで使用した資料。

このように私が大学院で学んだMBAのスキルだったり、企業で実践してきたマーケティングの経験が、生徒達の学校教育に活かせるものだと実感しています。

教育現場という、全く異なる世界に飛び込んで不安も多々ありましたが、花王を退社して外に出ることで、改めて自分の強みを知ることができました。その自分の強みを産業界以外でも持ち運べるスキルの身につけ方が重要で、それが自分の大きな武器になと学ぶこともできました。

私が目指しているのは、いま学校に足りないものを私が補う形で学校に入っていくこと。今回のゆるゼミの活動もまさにこの活動の一環です。

これからの人生100年時代を生き抜く力を身につけるために、「グローバルで通用する、起業家的リーダーシップを持った生徒の育成」をしていく事は、民間校長に応募した時と今も変わっていません。今の現場経験を活かして、来年の学校経営の構想を深めていきたいと思います。

頑張れ妻一受験生!!

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生井秀一(茨城県立下妻第一高等学校・附属中学校 校長)
生井秀一(茨城県立下妻第一高等学校・附属中学校 校長)

花王の販売子会社に入社し、営業部門で大手流通チェーンを担当。ヘアケアブランドのマーケティングを担当した後、2015年にECの営業マネジャーとなり、花王のECビジネスを推進。2018年に全社DX推進をするプロジェクト型組織の先端技術戦略室に異動。2021年にDX戦略推進センターを設立、全社DX戦略を担当した。過去3度、社長賞を獲得。花王グループのDXを推進し、ECビジネスの構築などの推進役を担う。

2023年に茨城県とエン・ジャパンが実施した「ソーシャルインパクト採用」において、茨城県内の中高一貫校・専門高校の「校長」を教員免許不問で公募するプロジェクトに応募。1645人の応募者のなかから選ばれ、花王を退職して2023年4月から民間出身者の校長として茨城県立下妻第一高等学校・附属中学校に着任。

生井秀一(茨城県立下妻第一高等学校・附属中学校 校長)

花王の販売子会社に入社し、営業部門で大手流通チェーンを担当。ヘアケアブランドのマーケティングを担当した後、2015年にECの営業マネジャーとなり、花王のECビジネスを推進。2018年に全社DX推進をするプロジェクト型組織の先端技術戦略室に異動。2021年にDX戦略推進センターを設立、全社DX戦略を担当した。過去3度、社長賞を獲得。花王グループのDXを推進し、ECビジネスの構築などの推進役を担う。

2023年に茨城県とエン・ジャパンが実施した「ソーシャルインパクト採用」において、茨城県内の中高一貫校・専門高校の「校長」を教員免許不問で公募するプロジェクトに応募。1645人の応募者のなかから選ばれ、花王を退職して2023年4月から民間出身者の校長として茨城県立下妻第一高等学校・附属中学校に着任。

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