ジャニーズ事務所は10月2日に記者会見を開き、会社の再編や被害者への補償に向けた動きなどについて説明した。同社の経営陣は9月7日にも会見したが、内容が乏しく批判を浴びたため「やり直し」を迫られた形だ。さらに、会見を担当したコンサルティング会社が記者指名の「NGリスト」を作成していたことが報じられ、収拾がつかなくなっている。
会見の不手際については、すでに様々な指摘がされているし、筆者自身もすでに書いているので細かい点は繰り返さない。ただ、事務所の対応が迷走してきた原因をたどると、広報を巡る根本的な問いに行き着く。「報道をコントロールすることは可能なのか」という問題だ。
ジャニーズ事務所がなぜ会見で失敗を繰り返したかといえば、報道を支配してきた成功体験があるからだろう。中でも創業者の性加害から所属タレントのスキャンダルまで、テレビを沈黙させてきた「実績」は大きい。100%はコントロールできないにしても、都合のいい方向に誘導する程度は容易だと思い込むのは仕方がない。
しかし、それも「相手」次第だ。現経営陣は、これまでと種類の違う記者に向き合っている。それに気づかず同じ姿勢で臨めば失敗するのは当たり前だ。
筆者には、事務所とコンサル会社の双方が、会見を穏便に収めることは技術的に可能だと考えていたように見える。9月の会見失敗は、そうした慢心からくる準備不足が一因だろうし、10月2日の会見はそれを挽回しようと小細工したことが裏目に出た結果だろう。
では、会見をうまく仕切りさえすれば厳しい追及を避けることはできたのだろうか。結論から言えば、筆者はこの事件が一般紙とNHKの取材対象になった時点で無理だったと考える。これまで報道をコントロールできたのは、ジャニーズ関連のニュースに興味を持つのが芸能マスコミに限られていたからだ。英BBCが「人権問題」という切り口で報じ、一般紙やNHKの記者が無視できなくなった段階で局面は変わっていたのである。
むしろ、これまでの会見は序の口と見た方がよい。少なくとも9月の会見では、一般紙やNHKが主力級の記者を投入しているようには見えなかった。質問は型通りで、「これは自分たちの守備範囲なのだろうか」という戸惑いさえ感じられた。
しかし、会見内容が全国紙の一面で報じられたことで、…
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