専門組織の創設でクリエイティブの質を向上 神戸市の広報戦略

自治体における広報の役割とは?兵庫県神戸市の広報担当者に、広報施策の背景や効果をもとに、同市の広報戦略や広報に対する思いを聞きました。

※本記事は、『広報会議』11月号(10月1日発売予定) に掲載している連載企画「自治体広報の裏側」の転載記事です。

 

神戸市
市長室
広報戦略部長兼広報官
多名部 重則氏

 

従来、神戸市の広報では、各部署の判断で広報媒体の制作や発信をしてきました。しかし、各部署の職員たちは、基本的にデザイン・コピーや映像、ITなどの知識・ノウハウに精通しているわけではありません。その結果、質が高いとは言えない広報媒体を制作したり、非効率な手法で発信したりするのが日常でした。また、?子定規の“お役所言葉”での広報にも問題を感じていました。大量の情報があふれるなかで、しっかりと情報を届けるには、分かりやすい言葉で伝えなければならないと考えました。

 

「広報クリエイティブユニット」による内製化

これらの課題に対し神戸市では、2020年に広報業務に副業人材40人を登用して外部専門人材の活用をスタート。2022年4月には広報戦略部に「広報クリエイティブユニット」を設置しました。グラフィックデザイナー・映像クリエイター・コピーライター・ライター・IT専門家などが在籍しています。

このユニットが司令塔となって、神戸市役所全体の広報ツールを戦略性、統一性のあるものに転換しました。具体的には、神戸市の各部署で制作する全広報媒体について広報戦略部では優先順位を決定し、優先度の高いものは各部署でなく、「広報クリエイティブユニット」を中心に広報戦略部が媒体の制作から発信・検証まで責任を持って行っています。昨年から現在まで、広告会社に発注せずに、「神戸登山プロジェクトテレビCM」「子育て施策PRシネアド動画」などの制作と発信を行いました。

また、神戸市では2022年9月に「note」に公式アカウントを開設しました。開設にあたっての調査で、他の多くの自治体では、数人で執筆する体制によって記事の品質にばらつきがでる課題があると聞いていました。そこで、本市では執筆・編集体制の確立に注力しました。

執筆は、神戸市職員(約1万4000人)であれば、誰でもライターになれます。ただ、職員はライターではないので、品質は一定ではありません。そこで、これまでに100本近い記事を執筆してきた経験のある私と、フリーライターであり「広報クリエイティブユニット」に在籍している合楽仁美の2名を編集者として配置し、丁寧な記事編集をすることで、品質を担保しています。

「どんなにいい施策をやっていたとしても、市民に伝わっていなければ何の意味もない」。これは、久元喜造市長の口ぐせであり、私もその通りだと思っています。一方で自治体の行政サービスや施策は、難解な法令に基づくものや、公平性の観点、他の関係機関との調整などで、どうしても複雑な内容になりがちだというハードルもあります。だからこそ、住民が知りたい、あるいは神戸市が伝えたい情報を、正しく、伝わりやすい形で届けていく。

「市民にとって分かりやすい、役に立つ行政」をいかに実現するか、これこそ自治体の広報の腕の見せ所だと考えています。

 

CASE STUDY

「広報クリエイティブユニット創設」


 

2022年に誕生した「広報クリエイティブユニット」では、神戸市役所内のクリエイティブの司令塔となり、ディレクションを実施。優先度の高いクリエイティブについては、制作、発信、検証まで行っている。同ユニットが中心となり制作した「神戸登山プロジェクトテレビCM」は2600万人にリーチした。

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広報会議2023年11月号

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