学校だって「顧客満足度」が重要! 中学生から企業訪問を実施、職業選択の幅を広げる

中学2年生が楽天クリムゾンハウスを訪問

24年間勤めた花王から転職して半年が経ちました。まだまだ教育業界では見習いですが、少しずつ成果を出しながら、アジャイル型で仕事を進めていき、来年に向けての準備をしています。

民間企業から移籍してきた私が描いている学校経営の構想のひとつに、「産学連携」があります。企業と学校を結びつけて、進路選択の参考になる「体験の場」を子供たちに提供したいと考えているのです。具体的に、いま進めている活動のひとつに企業訪問があります。私が属する茨城県の下妻一高は中高一貫校であるため、中学生には高校受験がありません。受験勉強がない分、様々な事に時間を使うことができるので、企業訪問の機会もつくれると考えています。

先日は中学2年生を対象とした校外学習で、楽天本社のクリムゾンハウスを訪問しました。楽天さんは、私が花王でEコマースを担当していた時代に、Eコマースの「い・ろ・は」を教えていただいた、大変お世話になった企業です。当時、担当いただいていた方のつながりで、企画実現に繋がりました。

校外学習の目的は、いくつかあります。ひとつが今年度の総合的な学習の時間の目標であるSDGS項目11の「住み続けられるまちづくり」をテーマに地域探求に取り組むこと。そして、今回の楽天さんへの訪問が好例ですが、キャリア学習を通じて様々な生き方を知ることで、自分の意思をもてるような機会をつくることです。これが、将来の志や未来のまちづくりをイメージしてもらうことにつながります。

写真 人物 集合 下妻一高附属中学2年のメンバーで楽天本社を訪問。
写真 人物 下妻一高附属中学2年のメンバーで楽天本社を訪問。
下妻一高附属中学2年のメンバーで楽天本社を訪問。

また楽天さんは会社の公用語が英語です。エレベーターで外国の方と一緒に乗り降りする光景は、生徒たちも刺激になったと思います。英語ができると、国境を超えて仕事ができるし、仕事の幅も広がることを知ってほしい。またイスラム教の社員さんもいらっしゃいますので、お祈りをする部屋もあります。まさに多様性の理解を学び、肌で感じられる、貴重な機会となりました。

写真 グローバル企業となりつつある楽天では、多様な国籍の社員が在籍。イスラム教徒の従業員のために祈祷室も設置されていた。

グローバル企業となりつつある楽天では、多様な国籍の社員が在籍。イスラム教徒の従業員のために祈祷室も設置されていた。

今の教育は、早く的確に正解を求める仕組みはできています。ある意味、この詰め込み教育から切り離してあげる時間をつくって上げることで、「社会とはどういうものか体験し、そこになにがあり、どう動いているのか、そして自分は何を好んで、何が得意なのか発見して欲しい」と思っています。

その実現のためには、学校と企業の連携が必要です。TBSさんにお伺いさせていただいた時もそうだったのですが、企業の部署に「地方創生事業」「地域事業創造センター」などの地域と連携する部署が見受けられます。つまり、企業も学校や地方自治体との結びつきを求めているのです。

私が企業と学校を結び付ける事により、生徒たちへのキャリア学習に繋げられると思っています。私は民間校長であり、まさに外部とのつながりを持つ事が役割でもあります。私は双方のメリットを生み出していくコンソーシアムをつくりたいと思っています。

今回の楽天さんへの校外学習は、生徒たちも大変喜んでもらい、帰りのバスの中でも今回学んだことで話題がつきなかったり、学校に着くまで元気いっぱいでした。また、生徒だけでなく保護者からも好評だったと聞くと、私も非常に嬉しく思っています。

私が常に意識しているのが、「顧客満足度NO1の学校経営」です。少しずつ、チャレンジしてきたことが実を結びはじめています。

そして私は産業界と教育業界は全く別物にならないように、産学連携を図っていく事を目標にしたいと思います。そして、顧客(生徒)満足度NO1を目指して、子供たちが下妻一に入学して良かったと思えるような学校にしていきます。

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生井秀一(茨城県立下妻第一高等学校・附属中学校 校長)
生井秀一(茨城県立下妻第一高等学校・附属中学校 校長)

花王の販売子会社に入社し、営業部門で大手流通チェーンを担当。ヘアケアブランドのマーケティングを担当した後、2015年にECの営業マネジャーとなり、花王のECビジネスを推進。2018年に全社DX推進をするプロジェクト型組織の先端技術戦略室に異動。2021年にDX戦略推進センターを設立、全社DX戦略を担当した。過去3度、社長賞を獲得。花王グループのDXを推進し、ECビジネスの構築などの推進役を担う。

2023年に茨城県とエン・ジャパンが実施した「ソーシャルインパクト採用」において、茨城県内の中高一貫校・専門高校の「校長」を教員免許不問で公募するプロジェクトに応募。1645人の応募者のなかから選ばれ、花王を退職して2023年4月から民間出身者の校長として茨城県立下妻第一高等学校・附属中学校に着任。

生井秀一(茨城県立下妻第一高等学校・附属中学校 校長)

花王の販売子会社に入社し、営業部門で大手流通チェーンを担当。ヘアケアブランドのマーケティングを担当した後、2015年にECの営業マネジャーとなり、花王のECビジネスを推進。2018年に全社DX推進をするプロジェクト型組織の先端技術戦略室に異動。2021年にDX戦略推進センターを設立、全社DX戦略を担当した。過去3度、社長賞を獲得。花王グループのDXを推進し、ECビジネスの構築などの推進役を担う。

2023年に茨城県とエン・ジャパンが実施した「ソーシャルインパクト採用」において、茨城県内の中高一貫校・専門高校の「校長」を教員免許不問で公募するプロジェクトに応募。1645人の応募者のなかから選ばれ、花王を退職して2023年4月から民間出身者の校長として茨城県立下妻第一高等学校・附属中学校に着任。

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