月刊『販促会議』で連載している「ヒットの仕掛人に聞く!」。話題のヒット商品・サービスがヒットに至った経緯を、開発の背景やプロモーション戦略からひも解きます。
今回は、2017年に発売を開始した「おもいのフライパン」。一時は3年半待ちになった超人気商品を生んだ仕掛け人に話を聞きました。
※本記事は、月刊『販促会議』10月号 連載企画『ヒットの仕掛人に聞く!』に掲載されています。
詳細はこちらから。
■商品情報
- DATA
- 商品名:おもいのフライパン
- 希望小売価格:12,650円(税込)~
- 主な販路:公式通販サイト、ふるさと納税、実演販売
石川鋳造
代表取締役社長
石川鋼逸氏
1995年中京大学卒業後、母校碧南高校野球部の監督に就任。2004年に先代から会社を引き継ぎ石川鋳造の社長に就任。2008年から新商品開発プロジェクトを立ち上げ、2017年に「おもいのフライパン」を発売。
「おもいのフライパン」誕生の背景とは?
──「おもいのフライパン」開発の背景を教えてください。
当社は、鋳造製品の製造を事業の核としてきました。戦後の高度経済成長期以降は、自動車産業の成長とともに、自動車部品を製造する企業が主要取引先になっていました。
しかし、自動車産業における市場の構造が変化し、売上が減少する状況に危機感をおぼえはじめた2008年頃、社内の若手社員を中心に新商品開発プロジェクトを立ち上げたのです。
──プロジェクトの中で、フライパンの開発が選ばれたのはどのような経緯でしたか。
プロジェクトで最初に行ったのは自社の強みの分析でした。熱が伝わりやすく、保温性が高いことが鋳物の特徴です。これを生かすには調理器具が良いのではないかと考えました。
個人的に、家では肉がおいしく焼けないなと思っていて。飲食店と同じようにできないかをずっと考えていました。当社で調べた結果、肉の質や焼き方に加えて、飲食店では熱伝導と保温性の観点から鉄板を使っていることが多く、厚みも平均で1.9ミリほどあることがわかりました。そこで、熱伝導と保温性の観点から鋳物製のフライパンは最適だ、と確信したのです。
しかし、鋳物の弱点は重さです。家庭用のフライパンで重視されるのは使いやすさと軽量性。既存の鋳物や鉄製のフライパンも軽さを追求して開発されていました。薄く、軽いものを目指すと、熱伝導が良すぎて食材本来の旨味を出せません。
さらに、鋳物の特性である保温性は低下しますし、軽さでもステンレスやアルミとは勝負できません。そこで私たちは既存品とは異なり、鋳物の良さを最大限出せる、重く、厚みのあるフライパンの可能性に賭けることにしました。
テレビ番組をきっかけに1日で1万5000本の注文が
──プロモーションではどのようなことをされましたか。
2023年2月17日に発売し、5月末の時点で販売計画の1.5倍に到達しています。発売当初から想定以上の動きを見せていて、現在も実績に応じた生産の最適化を図っています。
BtoCの商品は初めてですし、広告宣伝費もない。できるだけお金をかけずに知ってもらう方法として、SNSを使ってフライパンの開発過程を公開しました。試作品で肉を焼いてみたり、キャンプに持っていって使ってみたり。利用シーンを訴求する動画の投稿を続け、知人や友人を中心にフォロワーが増えていきました。
2017年に量産品を発売開始すると、そのフォロワーたちが買ってくれて、利用の様子をSNSで紹介・拡散してくれました。そこから少しずつ注文が増えていた数カ月後、メディアの目にも留まるようになり、注文が増えていきましたね。
──3年待ちになるほどの話題になったと聞きました、きっかけは何だったのでしょうか。
新聞の紹介記事がWebに転載されたものを見たテレビ局から問い合わせが来て、情報番組で紹介されたことがきっかけでしたね。その当時は1日で1万5000本売れました。その頃は生産の設備投資も十分にできておらず、1日20本程度の生産力だったんです。その状態で1万5000本となると、単純計算で生産に約2年かかりますよね。そのときすでに1年待ちの状況だったので、3年待ちになってしまったのです。
お待たせするのは良くないことですが、「最大3年待ち」を人気の証として利用することにしました。受注量を背景に急ピッチで設備や人への投資を行い、結果的に3年待ち分の注文は1年7カ月ほどで納品完了。現在は1日に100本ほど生産でき、2017年の発売以来、累計販売数は7万本を超えています。
「肉のサブスク」はフライパンを使ってもらうため
──肉やワインのサブスクリプションサービスを始めた狙いは。
「おもいのフライパン」は無塗装でほぼ壊れることはなく、一度買うと長く使ってもらうことが可能です。満足度も高いので、サイズ違いを追加で購入する人も多くいます。私たちは良いものを長く使ってもらうことを信念としています。そのためには使い続けてもらうことが大事だと思い、考えたのが「おもいのフライパン」を使ってもらうためのサブスクリプションサービスです。フライパンは何かを焼いたり、調理することで初めて価値を発揮できますよね。そこで思いついた観点のひとつがお肉でしたーー。
本記事の続きは、月刊『販促会議』10月号 連載企画『ヒットの仕掛人に聞く!』にてお読みいただけます。
続きはこちらから。
月刊『販促会議』10月号
- 【巻頭特集】
- 「その発想はなかった!」
- 悔しい、けど上手い。プロモーション・アイデア
- ユニクロ、サントリー、ファミリーマートなどの事例を掲載
- 【特集2】
- 【一挙公開!】
- EC責任者47人のリアル
- 今、注力すべき領域と課題
- 【特別企画】
- 第15回「販促コンペ」
- 協賛企業賞、ファイナリスト発表
- 購入はこちらのAmazonリンクから