テレビCMでオンライン行動を喚起 社会課題に向き合う、「アキサポ」のテレビCM戦略

デジタルからテレビをはじめとするマスメディア、さらにオフラインの店頭での行動までがデータでつながるようになった時代。メディア投資戦略にイノベーションを起こすような新たな取り組みが始まっています。本連載では企業側、メディア側、広告会社側それぞれの領域で新たな取り組みを始める方たちに取材。これからのマーケティング、マーケティング・コミュニケーションの方向性を探っていきます。1回目は空き家活用サービス「アキサポ」を展開するジェクトワン経営企画部長の金丸郁代氏、「アキサポ」のメディアプランニングをサポートする博報堂DYメディアパートナーズの大木菜生氏、八乙女ゆい氏に同サービスのメディア戦略について聞きます。

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(左から)ジェクトワン 経営企画部長 金丸郁代氏 博報堂DY メディアパートナーズ メディアプラナー 大木菜生氏 博報堂DY メディアパートナーズ メディアプラナー 八乙女ゆい氏

テレビCMでの認知を通じて「空き家」のパーセプションを変える

―「アキサポ」事業の概要についてお聞かせください。

金丸:私たちジェクトワンは首都圏と関西エリアで事業展開している不動産会社です。主力事業は不動産に関するソリューション事業とリノベーション事業、そして空き家活用サービス「アキサポ」の3つです。「アキサポ」を開始した2016年当時、空き家対策と言えば売却や解体など所有者が手放すか取り壊すかという解決策が一般的でした。そこで当社では第3の選択肢として空き家を活用するサービスを展開することに。定期借家で当社が空き家の所有者から物件を借り上げ、工事費を全額負担してリノベーション、利用者に貸すサービスです。

「アキサポ」のモデルなら、空き家の所有者は売却や解体、または管理にかかる手間や時間、金銭等の問題を解消できます。放置していた空き家を活用できることに加えて、定期借家契約なので、契約満了後は更新や売却も検討できる。「アキサポ」は空き家問題解消の一翼を担う社会問題解決型サービスだと自負しています。


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内村光良さん、西田尚美さんを夫婦役に起用した「アキサポ」初となるテレビCM「空き家会議(空き家だよ篇・どうもしない篇)」は、ゴールデンウイーク(GW)期を狙って出稿した。

取材対応のメディア露出でテレビの波及力を実感

―2023年4月から「アキサポ」で初となるテレビCMの出稿が開始に。どのようなマーケティング戦略があって、テレビの活用を決めたのでしょうか。

金丸:「アキサポ」は認知が広がることで、空き家問題で悩む所有者の方々からの問い合わせにつながるという確信があったためです。ある民放の番組でサービスが取り上げられた際、放映直後から非常に多くの問い合わせをいただきました。改めてテレビの影響力を実感し、テレビCMの出稿を決めたのです。

以前からデジタルマーケティングも展開していましたが、テレビでリーチできる層は、ネットで情報を検索するほどには、まだ空き家問題に対して能動的になっていない所有者の方。テレビというメディアを通じて、「アキサポ」の存在を知っていただくことで、無関心層への呼びかけ、ひいては問い合わせなどにつなげていきたいと考えました。

―「アキサポ」初のテレビCM施策には、博報堂DYメディアパートナーズもかかわったと聞きました。「アキサポ」チームの皆さんは、どのように課題に向き合ったのでしょうか。

八乙女:初めてのテレビCMということで、広告効果の可視化に挑戦しました。テレビCMから「アキサポ」を認知し、指名検索やサイト来訪などの実行動に移った人の数をデータで可視化することで、テレビCMを定量的に評価したいと考えました。

金丸:今回のCMでは内村光良さん、西田尚美さんを起用しましたが、このキャスティングも「空き家問題を抱えているけれど、これまで積極的に動いていなかった人たち」の行動をどう喚起するかを考える中で、出てきたアイデアでした。メディアプランニングだけでなく、キャスティングを含めたクリエイティブの部分まで、議論しながら一緒につくりあげていきました。

大木:「アキサポ」が空き家市場のリーディングブランドになるためには、サービス名の認知さえ獲得できれば良いというわけではありません。「アキサポ」だからこそ提供できる空き家サービスの価値をどのように伝えることができるか、広告に触れた後にどのような行動を喚起させたいかを博報堂DYグループのチーム一丸となってジェクトワンの皆さんと議論を重ねました。

家族・親族が集まるGW期に出稿問い合わせが通常の4倍に

―現時点で、今回のテレビCM施策の効果をどう評価していますか。

金丸:4月28日から約1カ月間、CMを放映し、問い合わせ件数が通常の約4倍になりました。内村光良さんのソフトなイメージにより、サービスの好感度も上がったのではないかと思います。社員にとっても自慢できるCMになったようで、モチベーションアップにもつながりました。

放映した時期も良かったと思います。家族や親族が集まるGW時期の広告露出が効果的ではないかという仮説に基づきGW期間にテレビCMを出稿、さらに連休明けには新聞広告も出しました。

出稿の効果検証のため導入したAaaS(Advertising as a Service)による分析データから、GW期間は特にテレビCMによる指名検索やサイト来訪が大きく伸びていたことや、より効果の高かったクリエイティブはどれかなどを知ることができ、次回出稿への示唆を得ることができました。

※AaaS:博報堂DYグループが提供する、統合的なメディアプランニングから、広告枠のバイイング、広告効果のモニタリングをワンストップで支援することでマーケティング戦略上最適な広告メディア活用を可能にするサービス。(AaaSは博報堂DYメディアパートナーズの登録商標)

―今後の展望についてお聞かせください。

金丸:「アキサポ」を通して、空き家に対する負のイメージを払拭することこそが、この事業の目的だと考えています。同時にスクラップ&ビルドだけではない、古いものを活用するという精神はSDGsにつながると思っています。今後も経験豊かな博報堂DYグループの皆さんに長期的に伴走していただきながらアドバイスをいただき、より最適な策を練っていきたいと思っています。

大木:ありがとうございます。今回はテレビCMがどのようにオンライン上の行動につながったか、効果を測定させていただきました。AaaSにより、最適な出稿時期やクリエイティブが分かったことが非常に良かったと思っています。

八乙女:当社としてもテレビCMを出稿して終わりではなく、今後も効果検証を重ね、継続的にデータを貯めていったり、テレビとデジタルを横断した分析を視野に入れたりすることによって、より良いマーケティングキャンペーンづくりのお手伝いをさせていただきたいです。

「編集協力:博報堂DYメディアパートナーズ」

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